「月子ねーね 星子ねーね」
ゴールデンウィーク特別企画!
「本棚のマンガ、紹介します」
マンガ、読みますか?
わたしは読みます。
「わたしマンガも読むよ」
というと、
「えー!意外!!」
と言われることがしばしば。
というのもわたし、印象が「真面目、堅い、おしとやか」と見られることが多くようなんですね。
そしてわざわざ会話の中で「あのマンガが……」と話題に出すこともないので、知り合いからそれなりに付き合いのある友人まで、わたしがマンガを読むことを知らない人は結構います。
本の話できる人以外とは、マンガの話もしないのでね…… 感想がマニアックになってくるから。
それにしても、わたしの周辺の世代ではマンガはまだまだ「ちゃらけた」「軽薄な」「娯楽」という印象なんでしょうか。
世の中「真面目な」「シリアスな」マンガもたくさんあるし、作品傾向と作品の質とは無関係だと思うんですがねぇ……
小説だろうと実用書だろうとマンガだろうと、いい作品もあれば雑な作品もあります。そしてたいていの作品は、読み手がどれだけのことを読み取れるか、という読者の力量にかかっています。
「この世に悪書なし」という言葉には、一定の真理があります。
マンガ談義はここまでにしておきましょう。
つまり、わたしがいかに真面目でお堅く見えようとも、わたしはマンガを読みますよってことです。
さて、今日の1冊はこちら。
長蔵ヒロコ著『煙と蜜』(KADOKAWA、2019年)
(1巻が見つからなかったので2巻です)
いつの時代も、「歳の差カップル」「許嫁」「軍人とお嬢様」にはロマンがあります。
大正5年の名古屋を舞台に、十二歳の姫子さんが、許嫁の文治様と心を通わせていく、大変かわいらしく甘酸っぱく幸せに満ちた作品です。
まだ3巻までですからね!
簡単に追いつけます、読んで。
マンガ紹介のタイトル、どうしようかと思いましたが、本と同じく「最初の文章」にしました。
これは姫子さんのセリフ。
文治様がもうすぐいらっしゃるので、お茶をお出ししたいと女中のお姉さん方に声をかけに行くシーンです。
ああ、姫子さんの可愛さよ。
大正のいいところのひとつは、お着物がかわいいということです。
姫子さんはまだまだ子供なので、肩も詰めておはしょりもたっぷりした着物を着ていますが、長着も帯も襦袢も、どれもこれもかわいくて惚れ惚れします。
いいなあ、大正ロマン。
襦袢の裄が長着よりも長くて、袖口からわりとがっつり見えるのがまた可愛いです。
可愛いしか言えない。
姫子さんは可愛い。
可愛いは正義。
文治様は三十歳の大人の男性で、軍人さんです。
しかも陸軍将校です。
こんな地位の高い人が、由緒あるらしいお家の娘とはいえ、なぜ歳の離れた姫子さんと婚約することになったのか、まだ物語では明かされていません。
が、文治様が誠意をもって姫子さんを慈しんでいる姿が、これまたたまりません。
どこかで見た感想ですが、
「姫子さんは文治様に恋をしていて、いずれ愛になる。文治様はいまは姫子さんを愛しているけれど、いずれ恋に落ちる瞬間がくる」
というようなことを言っている人がいてですね……
天才かと思いました。
いずれ、十八歳くらいになった姫子さんに、小さい子に対する愛情や愛着以外の感情を抱くようになる文治様、大変美味しゅうございます。
楽しみです。
そんなかわいらしい姫子さんを見守るのは、女中の龍子ねーね、月子ねーね、星子ねーね、こま子ちゃんです。
しっかり者の龍子ねーねは、姫子さまが大切すぎて文治様を敵視していたり、ミーハーな月子ねーねと星子ねーねは姫子さまとの恋バナできゃっきゃしているし、素朴なこま子ちゃんはそんなみんなを楽しそうに見ています。
こんな暖かい環境で、すくすくと、まっすぐに文治様と釣り合う女になるために努力する姫子さんは、本当にかわいらしいです。
ちょっと「かわいい」以外の表現が見当たらないんですが、かわいいです。
あんまりにもかわいくてのほほんと楽しんでしまう一方で、「大正」っていうとさ……
大正5年ですよこれ。
第一次世界大戦直前じゃないですか?
そのあと関東大震災くるじゃないですか?
大正って怖い。
のほほんとしていられない怖さがある。
どうか姫子さんと文治様が、幸せにかわいいままであれますようにと願ってやみません。
現時点では怖いことなんてひとっつもないので、とにかく可愛らしさでキュン死にしたい人にはおすすめです。
読んで。