ふしぎなパターンに魅せられて
お気に入りのブランドが閉店するとのことで、閉店セールに行ってきました。初日に行ったにもかかわらず、午後だったために商品はだいぶ減っていて、まあ仕方がないかと店内をぐるぐると5周くらいして、ようやくいくつか選び出しました。
ショートコートとセーター。
またしても冬物か、と思わなくはないのですが、とにかく買えてよかったです。
服を買うときのこだわりは、人それぞれあると思います。わたしは色とシルエット、素材のよさを重視しています。
それに加えて、特に惹かれてしまうのが、パターンのおもしろさです。
パターンの中でも、切り替えが不思議なものに惹かれます。
たとえば一見シンプルなAラインのスカートでも、ヒップラインの少し上から斜めに反対側の裾のほうまで切り替えが入っていて、切り替えた先がわずかにフレアになっていたりすると、もうそれだけでたまりません。黒とかグレーとかの無地のスカートが、その切り替えラインと、かすかに波打つ布の陰影で、おどろくほどに表情豊かになるのです。
それはまるで、生クリームにバニラエッセンスを一滴落としたときのような、全体の風味を増幅させてしまうような効果をもたらします。
そんなおもしろさに魅せられて、昔はよく洋服を作っていました。
「装苑」というファッション誌がありますが、その別冊に「Making」という雑誌がありまして、しばらく愛読していました。洋裁系の雑誌といえば、シンプル(言っちゃ悪いが垢抜けない)なデザインの服にS/M/Lの型紙がついているのが一般的な中で、このMakingは個性的なブランドの(おそらく)新作の型紙の引き方が載っていたのです。
洋服の型紙にはいくつか原型があるのですが、装苑は文化服装学院が大元にあるので、文化の原型(これは各個人の寸法から計算して作る必要があります)を使います。で、原型サイズが○の人はここを×センチ出す、ここを△センチ減らす、というふうにして、オートクチュールの型紙を作成するわけです。
とてつもなく手間がかかります。でもそうやって仕上げた服は、自分の体にピッタリあっていて、ダボつきもきついところもありません。その上、Makingのデザインは、例えばプリーツスカートのプリーツの幅が全部違ったり、ブラウスのシルエットが左右非対称だったりと、個性的でおもしろいものばかりでした。
そんなことを、中高時代はやっていました。
あの頃はなんであれだけ服を作れたのか、いまだに謎です。時間があって集中力があったんですねぇ。
大人になって、型紙から服を作る気力も時間もなくしてしまったわけですが、それでも不思議なシルエットの洋服をみかけると、ついつい手にとって切り替えのラインやダーツの取り方をながめてしまいます。
最近の流行りであるだぼっとしたシルエットも、ただ単に布が筒状になっているのと、裾のほうに向かって緩やかに細くなるシルエットでは、着用時におどろくほどの違いがあります。
つくづく、型紙を作成するパタンナーという仕事はすごいものだなぁと思います。いまは現場ではどうやってパターンを作るのか知りませんが、平面に描かれたデザインを立体に作り上げる、その土台を作っているのです。建物で言えば、設計図に当たる部分です。
今回買ったコートはですね、一見ダボっとしたシルエットなのに、羽織ってみると自然と体のラインに沿って、まったく着膨れ感がありません。ふわっとゆるっとしているのに、もたついた感じが全然しない。
すてきなパターンだなと思います。
そしてベルトの付き方がとてもふしぎです。
ふしぎなものは、とにかく人を魅了します。なんでだろう、どうなっているんだろう、とワクワクしてしまいます。
わたしの大好きなブランド、Antigraviteというのですが、これがなくなってしまうので当分どこで服を探せばいいのか、わからなくなってしまいました。
不思議でおもしろいパターンの服のブランド、ご存知でしたら教えてください。
ちなみにわたしは、パーソナルカラー:冬、骨格:ストレート(ナチュラル混)、顔タイプ:エレガントです。よろしくお願いします。