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「「おらおらおら。オレらが甘ェ顔してる間に、おとなしく出すもん出した方が身のためだぜ」」

スレイヤーズ風物詩、調子に乗っている盗賊の前口上です。
どうせこのあとぶっ飛ばされるのにな……
なんて思ったら、いつもと展開が違った。

神坂一著『クリムゾンの妄執』(富士見書房、2008年)

わたしの手元にあるのは新装版なので、元の出版年は1995年ですね。
スレイヤーズ本編て、「本筋から外れてないか……?」みたいな話が途中挟まるんですけど、これもそのうちの一つで、第二部のレギュラーメンバーである、ルークとミリーナは登場しません。
その代わり、依頼人で魔導士の卵(リナからすれば)のアリアと、ナンパな魔道剣士のディラールが旅のお供になります。
……リナと同行できているだけで、そりゃ普通より腕はあるんだろうけど、ゼルガディスやルークほどの腕前ではなくて、あくまで一般的に「腕がいい」程度なんですが。
よくリナの作戦とかについてきたよなぁ、と思います。
そしてディラールなんて、「アリアちゃんのことは守ってやるよ」みたいなほんとどうしようもない理由でついてくるわけで。

あ、でもあれか。
先のことがわからないのに「お前さんの保護者だから」って言ってついてきたガウリイと一緒か。
初めは若干の下心(連載開始時)があったところなんかも一緒か。
ガウリイの下心は一体どこへ消えてしまったのか。
もうあれだから。
ガウリイは下心とかじゃなくリナのことを最優先にする人生選んじゃってるから。

改めて『クリムゾン』のあらすじですが、とある地域の魔導士協会が反乱を起こして、街をひとつ武力制圧してしまった。
しかもやたらとデーモン(下級魔族)がいてどうしようもないので、各地の魔導士が招集されて鎮圧にかかっている。
で、アリアはその魔導士協会長に無理やり嫁がされた姉の心配をして、主力部隊とは別行動で姉を助け出したいと思っている。
それをたまたま通りかかったリナとガウリイ、ついでにディラールが手助けすることになった。
というもの。
リナとしては、この「デーモンの頻出」の理由を突き止めたい、という別の理由もある。
あまりにも不自然だし、以前の「ベゼルド」で起きた事件ににているから……

という感じです。
悲劇の姉、ひたむきな妹、という姉妹愛の話かと思ったらとんでもないですよ。
やっぱり、「人は大切なものを失った時に、どこまでしてしまうのか」という話なんですよね、これも。
で、それを手助けするのが、覇王将軍シェーラの持つ妖剣、ドゥールゴーファなので、きっりち「リナ案件」というか、結果リナが絡む案件になってしまったと。

第一部は魔竜王ガーヴの魔王叛逆計画をたまたまリナが潰して回っていた、という形で、第二部は覇王グラウ・シェラーの計画をたまたまリナが潰して回っていた、という形になるわけですが。
その点に関しては、この『クリムゾン』ではなくて、ガウリイのパワーアップに用意された『ソラリア』のほうが傍流の……
いやそうじゃないんだ。
この『ベゼルド』の流れと『ソラリア』の流れがまじでうまいこと合致するのが第二部の素晴らしいところなんだ。

話がそれましたね。
んで、アリアとディラールですよ。
これ、そのまんまリナとガウリイのifの姿だよなって思うわけです。
ガウリイは戦闘において前衛なので、先に倒れる率が高いわけですしね。
リナはそのあたりを、こう、別の人たちの姿を通してじわじわと実感していくんですよ。
その一部爆発したのが、第一部のラストであって、第二部のラストについても同じなんですよね……

あー、これだからスレイヤーズは考察のし甲斐がある!
この記事書き始めるまで、ディラールなんてランツの下位相関じゃんと思っていたけど違った。
ガウリイの下位相関だった。

そんなわけで、薄暗い姉妹愛の物語を読みたい方はおすすめです、『クリムゾン』。

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