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サイアノ和紙作家日記 vol.27 『西会津2月滞在記』

初日、出発が遅れて到着が夕方になる。
西会津国際芸術村に着くと
台湾からの来訪者たちとの
トークセッションの真っ最中。

芸術祭ディレクターの龔卓軍教授と建築家で様々な活動を行う陳冠華氏によるトークセッション


アタマのネジを締めなおして話に集中する。
曽文渓という台南市の母なる河と
その流域の文化、歴史などを
丹念にリサーチして開催された
大地の芸術祭について。

河とその流域に生きる森羅万象、
全てのものになったと仮定して行われる
『万物会議』は特におもしろかった。
そのほかでもアートを用いることで物事に
別の光の当て方ができるんだと
改めて参考になった。
その後の懇親会にもしれっと紛れ込み、
会津の郷土料理をたくさん頂く。
これが本当に美味しくてもう最高。

ちりめん山椒、お酒にもご飯にもなんでも合う。大好物❣️
会津の大根に台湾のカラスミ🇹🇼 美味くないワケがない
会津の郷土料理、こづゆ。汁物じゃなく煮物だと初めて知った。


あと通訳の方のスキルの高さに脱帽。
テクノロジーがどんなに進歩しても、
このレベルに到達することは
できないんじゃないかと感じた。
代替えが効かないレベルまで到達すれば、
AIに仕事を奪われることは
ないのかもしれない。

そのあとも芸術村で現在開催中の
『COMPASS - 釣り人は鳥を知らない』の
二人といっぱい飲んで話して
夜は更けて気づいたら朝になってた。
一昨年の年末にひょんなことから
二人のパフォーマンスを
撮影しながら見て感じたことも
西会津に通うようになった要因の一つ。
今回の展示もじぶんのなかの引き出しの
どこかにあるんだけど、
カギをまだみつけられない
想いをカタチにしてくれている。
「そう、コレだよね」って、
なんかうれしくなってくる。


1月の滞在ではポートレートを撮って
サイアノで出ヶ原和紙にプリントする
『西会津写真館』のプレイベントに向けた
テストが中心だった。
まだ完成ではないけれど、
方向性はつかむことができたと思う。

4×5カメラで撮影してネガをつくる
ネガと和紙を密着してプリント

今回は材料づくりから
体験している出ヶ原和紙と
光や雪、滴る水で描く
オール西会津な作品づくりに挑戦。
サイアノ感光液を塗布した出ヶ原和紙に
薄い出ヶ原和紙を重ねて雪の上で露光する。
この季節だと途中で雪も降ってくるから
均一な露光にはならないが、
一期一会感はあるし
重ねる和紙も個性があるから
再現不可能なユニークプリントの誕生予定。
いろいろ紆余曲折はあったけれど、
結果としては70%位の成功。

雪や光、水分に加えて、重ねる和紙の個性が出る
再現不可能な一枚ができた


出ヶ原和紙にネガ像を出力して露光、
プリントすることもうまくいった。
こちらはほぼ狙い通りのデキで、
滞在中にこの和紙ネガは
20枚以上つくることができた。

じぶんで漉いた出ヶ原和紙にネガ像をプリント
和紙ネガを密着して西会津の光で焼きつける

西会津に滞在するワケは、
6月に西会津国際芸術村で展示するから。
実験や制作だけではなく、
現地でどんな展示にするのかを
固めるためでもある。

ずっと思い描いていたのは
地元の人たちの手によって
昭和20年代に建てられた元中学校の
木造校舎だからこそできる展示。
その発想は今でもあるのだけれど、
違う方向性も芽生えてきた。
それにはいろいろな要因があって
悩ましくもあるのだけれど、
どれも必要なプロセスのようにも思える。
結論はまだ出てはいないが、
ただシンプルに、
やりたいようにやろうとは思っている。

校舎には木造ならでは温もりが感じられる

滞在中には出ヶ原和紙に
天然素材で加工を施して
つくられたテッシュケースや
日本一と評される
地元の素材を活かした
食材の撮影機会もあった。
福祉施設でのWSに同行して
スナップ写真も撮った。
滞在中には大盛況だった雪国まつりがあり、
会津地方伝統の歳の神や雪上での花火、
出ヶ原和紙ブースなども撮影した。

どんと焼きを会津では歳の神と呼ぶが、
ひと味違った神事だと感じた




撮るって被写体や事象に一歩踏み込むから
じぶんなりの理解度はより深まる。
ぼくはファインダーを通して
この町のことを学んでいるんだなと、
今回はとくに実感した。
ありがたい話だなと思った。

余所者だからこそ、当たり前が新鮮に写る。
それらをアウトプットできたら、
潜像のような価値を広く顕せないたろうか。
別に特別なことではないが、
そんな想いを持つことが
ボクのアイデンティティかもしれない。
そう感じられた8日間の滞在だった。















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