不幸よりもつらい幸福 ~CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)感想~
※本編を履修済みであることが前提の記事ですので、未プレイの方が読むことは御遠慮ください
……サマーセールの影響か、カオスチャイルドの新規プレイヤーがちょいちょい現れている今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
後方黒騎士面で新規プレイヤーを見守っていた私ですが、そのうち段々とロスが再発してきたので、久々に記事を書いてみることにしました。
【最もつらいと感じたEND】
さてここからが本題。
マルチエンドが採用されている本作ですが、クリア後に振り返ってみて皆さんが最もつらいと感じたのはいずれのENDだったでしょうか?
かく言う私が「つらい」と感じたのは冒頭画像のキャラ来栖乃々の個別であるReal Skyです
「Real Skyは個別の中では一番ハッピーエンド風なのにおかしなことを言うやつだ」
……そう思われる方もいらっしゃることかと思います。
しかし本作の場合、その「一見すると幸福なEND」であるということこそが「逆に」つらい。
単純に「悲惨」というならDark Skyなど、もっとそれらしいENDは他にあります。
……ですが本作はマルチエンディング。たとえ悲惨な結末に遭遇しても、
「やめやめ! いまのなし!」
と異なるルートを選び直すことができるわけです。もしかしたらこうなっていたかもしれないという悲惨な結末を選ばずに避けることができると考えれば、それは見方を変えれば「こうならなくて幸いだった」とも言えるでしょう。
その一方でReal Sky END。
こちらのENDは一見するとハッピーエンドです(世莉架が犠牲になるけど)
「もうこれでクリアってことでよくないか?」
と言いたいところですが、しかし実のところReal Skyでは「根本的な問題が何も解決していない」のですよね。
裏で暗躍している和久井は野放しのままだし、泉理たちを蝕むカオスチャイルド症候群は解消されていない。
Real Sky ENDの後で和久井が何もせずにおとなしくしているとは思えないし、仮に和久井が何もせずともカオスチャイルド症候群の老化現象があるかぎり、どのみち泉理たちは長くは生きられないでしょう。
様々なすれ違いやつらいことを乗り越えて「未来に向かって歩んでいこう」と決意を新たにしたところで、肝心の症候群の問題が未解決のままである以上は、あのままでは誰も助からないわけです。
……けっきょくのところ泉理たちを守るためには、拓留が真実に辿り着いてカオスチャイルド症候群の問題を解決するより他に道はない。
Real Skyによって泉理たち家族がかけがえのない存在であることが分かった。世莉架が拓留のことを第一に考えていることも分かった。
それが理解できたからこそ宮代拓留はハッピーエンドという幸福な夢に身を任せることはできない。そうでなければ誰も守ることができない。
Real Skyがもし悲惨な結末だったなら「こうならなくてよかった」と思えたことでしょう。しかし幸福な結末だったからこそ「こうなれたかもしれないのに」と思わずにはいられない。
そしてその結末が幸福なものであったからこそ、それを与えてくれた泉理たちを守るためには決してReal Skyを選ぶことはできない。
個別ENDはいわば「夢」のようなものです。それが悪夢であれば、目覚めたとき「夢でよかった」と安心できるでしょうが、幸福な夢であったからこそそれが「夢でしかない」という事実があまりにもつらい。
……ゆえに私はReal Skyが最もつらいと感じるわけです。