アラサー男性がモルカーと一緒に一人旅した話⑤
前回からだいぶ間が空いてしまいました。
すまねえ。この旅行記は通勤中のバス車内、わずか10分程度だけを使ってちまちま書いているのだ。分かってくれるね?
前回までのあらすじ(ドラゴンボールのあのBGM)
広島旅行を終えてフェリーで四国を目指す私、是倉いの。
たどり着いた松山観光港は灼熱地獄だった。
火曜日なのでお風呂に入りたい是倉いのは、道後温泉へ向かう。
テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ。
この記事は
の続きです。もし、以前の記事を未読でしたらリンクから飛んでいただけると幸いです。
この記事は、アラサー男性の平凡な旅を、濃いめに味付けた文章で書き記すものです。ふぉとじぇにっく的な過度な期待はしないでください。
旅程
8月6日⑦ 青と橙
■14:10
はるばる来たぜ松山。
待ってくれサブちゃんこの暑さは聞いてない。
だけど、サブちゃん、私行くよ。
どれだけ汗をかこうとも、今日の私は温泉に入るのだ。
港を出て、山を左手に反時計回りに進む。
駅までのシャトルバスもあるそうだが、出る場所を間違えたのか見当たらない。「じっとしてなさい」と言われ続けて四捨五入すること三十年。考える前に体が動く。車道に沿って駅を目指した。
ちなみに駅の名前は高浜駅。漱石ゆかりの街へ続くのが高浜駅とは、因果めいたものを感じるぞなもし。エモかよ。
すぐに前面に瀬戸内海が広がる。
誤解のないように申し上げますと、実際の景色は本当に綺麗に真っ青。これに比べると是倉さんの写真はカスや。
青が棲んでいるし、青は澄んでいるぞなもし。
モロッコのシャフシャウエンも真っ青になるほどの青ぞなもし。
ユーミンだって「目に映る全てのものは『青』!」って歌うと思う。
暑さとか全部どうでも良くなる景色。シャトルバスに乗らないのが正解だった。
たどり着いた高浜駅はレトロな感じでたまらない。今回の旅行で唯一交通系ICが使えなかったのも込み込みで魅力になる。なんか旅行の「手間」って体験になるから、むしろお得感あるよね。
ポンジュースの鉄砲水かと思った。愛媛のまじめなジュース私鉄です。在りし日の中央線もかくやといった、最初から最後までオレンジ色たっぷりの車体。なんなら切符までオレンジ色である。
ははあ。かんきつ類が特産品だから、それに合わせてのことだな?とか、呑気してる私はまだ知らない。
伊予鉄のお膝元である松山市内は、タイガースファンが立ち入ったら卒倒しそうなくらいにオレンジ色だらけであることを。
8月6日⑧ ぞなもし
松山市駅から路面電車に乗って大街道のホテルへ。
選ばれたのはダイワロイネットホテルでした。
多分今後も旅先にあるなら使う。バラの雫に子猫のひげ、ピカピカのケトルにダイワロイネットホテル。These are a few of my favorite thingsぞなもし。マリア先生も多分そう言う。
荷解きもそこそこに、最低限の荷物だけを持って再び炎天下へ。路面電車に乗って僕らは目指したShangri-la。浴槽への欲望は抑えきれない。
広島の路面電車と比べるとかなりスピードがあるように感じる。カーブでかかる遠心力が心地よい。
■15:40
前月(7月)に改装工事を終えたばかりの、堂々たるその姿があった。
惜しくらむは、私が赤い手ぬぐいを肩にかけていないこと。
ふふっ、この私がただ手ぶらで来たとでも思っているのか?アメニティは全て借りられるのだ!世の中金よ!(言ってみたいセリフ)
道後温泉は入口で入るお風呂と滞在時間、休憩する部屋を選ぶ。今回は一番スタンダードな「神の湯二階席」のコースを選んだ。
突き当たりの階段を上がると、畳の敷かれた広間が広がる。ここで、入浴の流れの説明を聞き、浴衣を持っていざ、浴場へ。
お風呂自体はホームページにもあるように「銭湯感覚」では入れる下々の者である我々に優しいデザイン。改修で小さくなった湯坪に「ちょっと通りますよ…」のAAみたいな感じで入る人々。
なんだけど、何故だろう。みんなニッコニコ。あら不思議、鏡の中の私もニッコニコ。楽園があったよ!でかした!!
ピーク時じゃない夕方前を狙ったけど湯壺は芋の子を洗うような大盛況。それでもやっぱり、温泉っていいよね。ババンバ バンバンバン。
風呂を上がって広間に戻ると、お茶とお菓子を出してもらえる。何だこのサービス。貴族になった覚えはないぞ。苦しゅうない。じゃんじゃん持ってこーい。
上階には漱石がくつろいだという坊ちゃんの間がある。宿舎で寛ぐ坊っちゃんの様に大の字に寝てみたくもあったけれど、さすがに辞めておくのが吉ぞなもし。
8月6日⑨ じゃこカツが無くてよかった
■17:30
まだギリギリ日の高いうちから湯上りビールをキメるダメなオトナの姿が、そこにはあった。 京都に行けばにしんそばを食い、金沢に行けばのどぐろを食べる食にミーハーな私は、愛媛と言えば鯛めしだろう!と、東京人の私も知ってる「かどや」を訪れた。
夕食には少し早い時間だからか、店内には私と外国人のお兄さんだけが客席にいる。そしてお兄さんは唐揚げの山をすごい勢いで減らしていく。
……あれ?お店間違えた?
鯛めしセットの小鉢が来てようやく一安心。よかったここはアメリカンダイナーじゃなかったんだね。
ところでフカ(サメ)って食べたことありますか?湯通しした淡白でほろほろした身に麦の辛子味噌を付けて食べます。コリコリと軟骨のような歯ごたえもあって結構面白い。似てる食べ物なんだろう……。
道後ビールを片手にメニューを眺めていると、小鉢で来たじゃこ天をカツにした「じゃこカツ」なるものを見つける。
じゃこカツ!そういうのもあるのか。
じゃこ天の身に玉ねぎと人参をすり混ぜたものを揚げたのがじゃこカツ。
ひと口かじると……んん??こ、この味は!?
な、なにーっ!!今まで食べていたじゃこカツは!?
確かに私はじゃこカツを食べたはず……。なのにどうしてだ……こいつはまるで……メンチカツじゃないか!
バッカモーン!そいつがじゃこカツだ!食え!
……茶番は置いておいて、本当にジューシー。
魚肉と野菜だけなのに牛肉かと思うくらいの食べ応え。甘みと旨味を足してくれる玉ねぎが小日向文世ばりの名バイプレイヤー。さてはジューシーなのも、文世おじさんのおかげだな?
食べたそばから、もうひと皿注文する。
うまい、うますぎる。故棟方志功もバクバク食べるに違いない。
急いで取り出したスマホによれば、東京で食べるのはどうにも難易度が高そう。
「残念」の感情がフェイントをかけるモグラ叩きの様にチラと持ち上がり、そして瞬時に消える。
こいつは身近にあってはならない。
日常的に食べられる程度にレアリティを下げてみろ。「ある」のがいけない!と叫びながら、これしか食べなくなるぞ。
二皿目に手をつけて確信する。やはりこいつの能力は王にも届き得た!!食べられるのが愛媛だけでよかった……!
東京に、じゃこカツが無くてよかった。
主役は遅れてやってくるもの。
愛媛の鯛めしはご飯に乗せた鯛のお刺身に、卵を溶いたタレをかけて食べる。
鯛といえばこりこりした食感、と思っていたけど、めっちゃぷりぷり。
主役の美味さは語るに及ばず。
……じゃこカツ美味かったなあ……。
8月6日⑩ おやすみプイプイ
■21:10
故郷離れて3日目。思えば遠くへ来たもんだ。
この先どこへゆくのかをまとめるために、ホテルの一階にあるサルバトーレ・クオモへ。
なんとここが四国で唯一のサルバトーレとのこと。普段見かけるチェーン店のレアリティが上がってる時、ワクワクする。あると思います。
明日はいよいよ最終日。思えば遠くへ来たもんだ。
この夜の私はまだ知らない。
おのれの計画性のなさに振り回され続ける明日のことを。
雑記 路面電車あれこれ
今回旅行した広島、松山、岡山にはそれぞれ路面電車が走っている。
それぞれちょっとずつ違って、みんないい。
なので、私の独断と偏見と、すでに朧気になりつつある記憶を元に、それぞれの紹介をしませう。
不確かなことや間違っていることもあるかもしれないけど、それはご愛嬌。是倉いのは調べない。NHKあたりでのドラマ化待ってます。主演は高橋一生と飯豊まりえで。
■広島電鉄(広電)
乗っている感じはバスが近いのかも。
ガンガン速度が出るわけではなく、車にも追い抜かれることがある。
機体によっても違うけど、発車する時に勢いを付けるためにぐいっと動くのが、車体の重さを感じて好き。自転車のひと漕ぎ目みたいな。
全国の交通系ICカードも対応しててえらい。
乗降、支払いについて色分けして分かりやすくしてるのもえらい。
■市内電車
松山市を走る全身をオレンジ色で染め上げたオシャレさん。
漱石が今『坊っちゃん』を書いたらごりごりにあだ名付けそう。
広電に比べて速く、同日に両方乗るとちょっとカルチャーショックがある。遊園地のコースターみたいな「乗ってる」感じが強くて好き。
2023年に全国の交通系ICカードに対応しているので安心。
■市内電車(おかでん)
車の中を走り抜けてく真っ赤な岡電。
ごく短い距離しか乗らなかったのであまり語ることもないのですが、広電みたいに車に追い抜かれる緩さが可愛くて良き。
乗降口が決まっているのも、観光客には分かりやすくてあらいぐまタスカル。
岡電には「ちゃぎんとん」なる特別列車があるらしい。調べてみると外国の鉄道アニメらしい。
てっきり「岡山銘菓 茶金団」みたいな和菓子があるのかと思っていた。
ほうじ茶風味の金団とか、美味しそうじゃない?
■ ■ ■
今回もここまで読んでくださりありがとうございます。
東京はもうだいぶ涼しくなってきましたが、もう少しだけ恨めしくも愛おしい、金属製蒸し器の中のように暑かった日々への懐古にお付き合いください。
……斜に構えても無駄である。愛おしくなんかない、めっちゃ暑かった夏よ。思い出の中でじっとしていてくれ。マジで。