タレントに学ぶシニア起業
先日ある歌謡ショーを見に行った。昭和から紅白歌合戦に出ているような歌手が勢ぞろいするもので、演歌歌手が多く観客は高齢者ばかりだ。カラオケスナックで耳にする演歌の歌い手もいれば、元アイドル歌手もいた。
作曲家の家に住み込みで修業したような人が多いので、みんな歌は抜群にうまいのだが、トリや後半の出番を務める歌手は何十年も芸能界で活躍しテレビに出続けていて、芸名がそのまま職業になっているような人たちだ。
抜群に歌のうまいプロが何人も唄ったあとに聴く彼らの歌は、技術というよりは存在感で聴いてしまう別物だった。そんな人たちは「歌手」としての専門性で仕事を成立させているというよりは、個性・タレント性で成立させている。
経済のインフレ傾向と賃金アップの圧力は、ますます中高年サラリーマンにシワ寄せされている。再雇用制度は政府の方針があるので渋々やっているのが本音で、できれば早期退職制度等で早く出て行ってほしいと思っている。中高年の新規採用を行う企業はごく少ないのをみてもよくわかる。
そんななか、白物家電の枯れた技術を持つエンジニア採用を行うアイリスオーヤマのような事例は救いだ。しかしエンジニアとしての専門性を持つシニアはごく一部で、大半は文系ジェネラリストシニアだ。
そうなると再就職はあきらめて起業という方向性もあるが、こちらはもっと厳しい。自分が従事する中小企業診断士界隈でも、中高年の受験者・合格者が増えているが、合格後に途方に暮れている人も多い。
大企業で専門性を身に着けている人も多いのだが、高度な専門性は中小企業のニーズが少ない。例えばメーカーで特許分野を専門にしていた人は割と多い。しかし中小企業にそのニーズは少なく、あっても弁理士に頼めば事足りてしまう。中小企業診断士の有資格者でもそうなのだから、徒手空拳の状態ではさらに厳しい。
個性・タレント性で生き残ったのは歌手たちだけでなく、衰退した映画業界からテレビバラエティに活躍の場を見出して生涯現役を続けた「おじさん」「おばさん」もいる。松方弘樹、梅宮辰夫、中尾彬、デビ夫人といった面々だ。
彼らは銀幕スターではあったが一番手には石原裕次郎、高倉健、菅原文太といった存在がいて、専門性においては二番手だったといえる。だが生涯トータルの職業生活の満足度は一番手より高かったのではないだろうか。
かれらのように大手メディアで活躍できるわけではない。しかし最近はSNSやZOOM、ポコチャ等のオンラインメディアも豊富だ。
自分はシニア教師をオンライン家庭教師として起業支援して成功させたことがある。あまりITは得意な方ではなく、専門性がある分自説にこだわり紆余曲折があったが、折り合いをつけてよい着地点にたどり着いた。
AIをはじめとするハイテク技術は一定の職業分野を駆逐するといわれているが、個性・タレント性と融合させることで新しい仕事が産まれると感じている。