【六寸刻文皿】の道行#7「祈りと光」
こんにちは。上出惠悟です。
”焼物”とは文字通り”焼かれた物”で、人がどんなに手ずから粘土を捏ねて成形し、何日掛けて絵付を施そうが、最後は窯の火で焼かねばなりません。窯で焼くことで粘土が石質になります。これを”焼成”と言います。磁器の焼成温度はおよそ1300度。焼いている最中の窯をご覧になったことがある方はご存知かも知れませんが、高温になると火は赤ではなく白くて眩しい光のようになります。ウイルスはもちろん、どんな生物も燃えてしまう光の洗礼を浴びて、見違える姿で窯から出てくるのです。
窯は多くの窯元にとって創造の中心にあるものです。古来より陶工達はこの不思議な火の力に祈りを捧げて来ました。目に見えない、手の届かない窯の内側に経験と感覚を張り巡らせながら、上手く焼けるように火の神様に祈るのです。しかし、上出長右衛門窯に私が入った2006年、窯に祈る者は誰もいませんでした。
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上出長右衛門窯の道行
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