【直営店】の道行#2「古い仕組みからの脱却」
こんにちは。上出惠悟です。
東京で大学生をしていた2001年から2006年頃、街行く人たちは九谷焼のことなど誰も知らないのではないかと感じていました。その当時は北欧のデザインが流行、船橋に大きなIKEAがオープンし、「Ku:nel」や「天然生活」といったナチュラル系と呼ばれる雑誌が創刊、ロハスやスローライフなどのライフスタイルが謳われた時代です。「暮らし」というものが少しづつ見直され、人々が少し立ち止まってゆったりとした時間や本当の豊かさについて考え始めたという印象を持っています。
器などの生活道具も見直され、柳宗悦が提唱した民藝や気鋭の器作家などの特集が誌面を飾っていましたが、それらはシンプルなものばかりで華やかで高級なイメージのある九谷焼が注目されることはなく、和食器やテーブルセッティングなどが好きな方以外の目に触れることは殆どなかったのです。雑貨店やインテリアショップに行くのが好きだった大学生の私はそんな状況をもどかしく感じていました。
私が実家に戻ってからは、九谷焼に興味がない方や若者の足を止める作品をつくりたいと思い、異業種とのコラボレーションや、九谷焼を身近に感じられる取り組みを積極的に行いました。現在は主にEN TEAとして活躍する丸若屋の丸若裕俊さんと共にPUMAの自転車を九谷焼でカスタマイズしたり(2007年)、髑髏のお菓子壺をつくったり(2008年)、転写のブランドKUTANI SEALを立ち上げ様々な場所でワークショップを行ったり(2009年)、ねずみの陶工ちゅう右衛門翁(2009年)、スパイラルガーデンでの個展KUTANI CONNEXION(2010年)、スペイン人デザイナーJAIME HAYONとの協働(2010年)などを展開しました。それらの過程、道行についても一つ一つ挙げてお話したいですが、それはまたいつか。
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上出長右衛門窯の道行
現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイ…
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