試し読み公開中【干支水滴 寅】の道行1「スケッチ初め」
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こんにちは。上出惠悟です。
道行(みちゆき)の最初は干支水滴です。干支水滴は2017年より製作している干支にちなんだ製品で、これまで戌年、亥年、子年、丑年の4種類を発売して来ました。
最新作の丑年の水滴は下記よりご覧ください。
水滴とは硯(すずり)で墨を擦る時に水を差す為の書道用具(文房具)ですが、古くより趣向を凝らした様々な形のものがあり、水滴として使うというより蒐集されている方も多いです。あまり馴染みのない方もいらっしゃると思いますので、用途について水滴が自ら説明している動画をご覧ください(笑)。
干支水滴の新作(翌年の干支)は毎年、春過ぎ頃から作り始め、夏が終わる頃には完成させます。来年は寅年ということで、窯まつりが終わった頃から寅の水滴のアイディアを練り始めました。先ずは絵を描いてイメージを膨らませます。
それでは一番最初の案をお見せします。
共感して頂けるかわかりませんが、虎の顔をじっと観察すると太鼓(タンバリン)のように丸くて平らに見えて来るのです。また、このイメージは子年(ネズミ)の時と同様に尻尾が把手になっていて持ちやすいのが特徴です。これまで発売した4つの水滴は全て動物の口に穴を開け、注ぎ口にしていたのですが、この案では顔が横を向いていますので、思い切って耳から水を出すか、もしくは、把手を持った手を前ではなく左に倒して水を出すか、などと考えていました。
干支水滴の造形には大切にしているテーマがあります。それは「動物」+「道具」です。その動物の特徴を捉えつつも、その在り方、佇まいはあくまで道具であるということです。なので白狗の貯金箱のような造形にはなり得ません。動物感と道具感、そのどちらも前に出過ぎず、程よいバランスを目指しています。
さて、次の案はこちらです。
これは戌年タイプの顔。ポーズは動物園などでもよく見かけるトラの姿、スフィンクスのように腕を前に出し躰をくねらせたポーズは、ネコ科であることを感じさせます。今のところ最初にお見せしたものより良さそうです。さて、このイメージには秘密があるのですが、その前に干支水滴の初回であったイヌについて少しお話したいと思います。実は戌の水滴には明確な3つのモデルがありました。次の投稿で1つずつご紹介したいと思います。
それでは、第一回目の道行にご同行頂きありがとうございました。
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上出長右衛門窯の道行
現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイ…
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