
【KUTANI SEAL】の道行#6「県外という言葉について」
こんにちは。上出惠悟です。
年が明けると毎年、阪急うめだ本店で開催される「旨し、美し。金沢・加賀・能登展」に出店するために大阪へ行きます。私自身も短い時間ではありましたが在店し、直接お客様とお会いできる機会を得ました。お越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。
大阪には、私が作家として定期的に作品を発表しているギャラリーYoshimi Artsがある他、様々なイベントなどで訪れることが多く、親しみがあります。今年は住吉大社の初詣の暖簾や看板、ポスターなどを上出瓷藝で原画を描かせていただきましたので、大阪という土地とのご縁がさらに深くなったようで、大変喜ばしく光栄に感じています。

ポスターの絵も描かせていただいていますので、
大阪へ行かれた際には住吉大社へ
是非訪れてみてください。
阪急に在店していた夜、大阪の知人と食事をしながらお話ししていて、驚いたことがありました。それは「県外」という言葉についてです。言うまでもなく「その県の外」という意味ですが、何かの話題で私が「県外」と発した後で「ここは大阪府だから『府外』と言うべきなのでは?」とふと気がつきました。そこで知人に訊いてみると「府外という言葉はないのだけど、県外という言葉も使わない」と言うのです。では「県外」のことを何と言うのかと尋ねたところ、驚いたことに「大阪にはそのような表現はない、言わない」と言うのです。

私達石川県民は(恐らく地方にお住まいの方も)「県外」という言葉を比較的頻繁に使います。「県外からのお客さんが増えている」や「息子が今度、県外の大学に行くことになった」など、日常的に耳にします。表現がないというのは概念そのものがないということなのでしょうか。まるで異国に来てしまったかのような文化的戸惑いがありました。大阪は京阪神との結びつきが強く、「外」という意識が薄いため「県外」とは表現せず、「奈良」であれば「奈良」と、その県を直接名指しするのだそうです。

かつて東京に住んでいた私も、「都外」という言葉は確かに聞いたことがありませんでした(「都内」という言葉は頻繁に聞くけど、、、)。兵庫の人が大阪で働くように、東京でも周辺の県との関わりが密接なので、日常的な移動や生活において県境が意識されることはあまりないのかもしれません。大都市では「関東圏」や「関西圏」のようなより広い単位で空間を捉えていることがわかりました。とはいえ、東京の人が埼玉を「ださいたま」と呼んだり、大阪の人が尼崎を「あま」と呼んだり、大阪と京都の間に感じる大きな隔たりなど、地域ごとの微妙な距離感は興味深いものです。取り留めのない話となり恐縮ですが、全国の皆様は如何でしょうか?
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上出長右衛門窯の道行
現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイ…
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