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貧者のコーヒー

コーヒーくらいしか楽しみがない。というとなんだか寂しいが、嗜好品の類に関してはそのとおりだと思う。数年前に腎結石を破砕して、あまりの痛さに「石が大きくなるので、あまり良くないですよ。」と言われたコーヒーを絶っていたが、ここ最近また飲み始めた。

もとより、あらゆる事柄に対して「一定以上の差」が理解できない雑な性格なので、道具に拘る気もない。フィルターも100円ショップので十分だし、豆も「キリマンジャロ」であればお店にはこだわらない。挽いた粉を買わないのは、味が落ちるからという理由ではなく、手間をかけないと際限なく飲んでしまうからだ。

コーヒーが飲みたくなったら電気ポットのスイッチを入れ、一人用のコーヒーミルにザラッと適当な量の豆を入る。自分のおやつと勘違いして寄ってくる猫をあしらいながら、ゆっくりゴリゴリとハンドルを回していると、ほのかにコーヒーの香りがしてきて、心のイガイガした部分が削り取られていくような、満ち足りた気分になってくるから不思議だ。「様式が存在を作る」というのはこういう事なのかもしれない。

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