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国連と保護者、真逆の訴え。どっちがインクルーシブなのか?

文科省の通知撤廃を求める2つの動き。


先日、こんな記事を読んだ。

文科省の4月の通知に対して枚方市と大東市の保護者が撤廃の申立てをしたという。

この通知に対しては、9月に国連からも撤廃を要請されている。

どちらもインクルーシブ教育に反するという理由で撤廃を求めているが、実は内容は真逆である。

大阪の保護者は、今まで少ない時間、あるいはほとんど通常の学級にいても支援学級に在籍できていたのに、在籍してるなら半分以上は支援学級に行けというのは、インクルーシブに反するというものだ。
要するに、ほとんど利用が無くても在籍を認めろというもの。

国連は、支援学級に大量に在籍していること自体が分離教育で、通常の授業に参加していない子がこんなにいるのは問題だし、少しの問題ですぐに支援学級に措置していること自体がインクルーシブではないという理由で撤廃を求めている。

先日、LD学会の大会でもこの話があったが、文科省が時数を出してきたのは教育予算の問題が大きいという。
確かに、支援学級は1クラス最大8名なので、急増すると教員の数も急増することになり、教室も増やす必要がある。
そして、在籍児童には「支援教育修学奨励費」といって自治体にもよるが、給食費が半額になったり、修学旅行費が半額になったりする。その費用は国と自治体で折半して負担している。
そうなると、安易に在籍児童を増やすことによって、莫大な教育予算が必要となっている。
コロナの初期に1クラス30人学級の案が出た時、財務省の麻生さんが「子どもの数に対して、教師の数は十分に足りている。それが支援学級に大量に使われているので通常の学級にまわってきていないだけだ。」というような趣旨の発言があった。
これは、正直的を得ていると思った。

ダブルカウントの功罪


特に今回何かと話題になっている枚方市は、市の独自の施策として、支援学級に在籍する児童を通常の学級の人数としてもカウントするという「ダブルカウント」方式をとっている。
これは、どういうことかというと、通常は支援学級に在籍すると通常の学級の児童とはカウントされないので、通常の学級(交流学級)では、プラスの数となり、1学年が42人の学年で2人支援学級在籍だと、通常の学級は1クラスで実際に教室には42人いるという状態になる。
しかし、枚方市は支援学級在籍の児童も通常の学級でもカウントするので、同じケースでも2クラスとなり、21人ずつとなる。となりの寝屋川市などでは2クラスで44人と45人(支援学級在籍9人)という状態も起こったが、枚方市では、それはあり得ない。クラス環境として少ない方がいいが、それが枚方市の「安易な在籍」「架空在籍」「根拠のない在籍」の横行に繋がっていえる。その結果、支援学級在籍児童の異常な増加となり、莫大な教育財政が枚方市で垂れ流しになっているのは事実である。

枚方市は、国の基準で1クラスで市の基準で2クラスの場合は文科省の基準でいくと足りないはずの教師の数は市費講師で対応しているが、教室増や支援学級増に関しては国の予算から出ているので、独自の政策ではあるが、国と大阪府の予算を独自の解釈で多く使っているともいえる。

枚方市の異常なまでの支援学級の増加は、ダブルカウントによる安易な入級と、入級の決定は、保護者の訴えか教師の訴えだけでよく、何の根拠もなく簡単に入級できるシステムとなっている。市教委は「各校で適切に対応」という丸投げ状態なのと、指導主事に支援教育をよく理解し、経験している人がいないため、指導もちぐはぐである。

入級の基準がなく、教科指導の個別指導塾状態で、奨励費ももらえるとなれば、保護者とすればなんとか在籍させたいと思うのも無理はない。
そして、教師もどんどん発達障害などの少し手のかかる子が通常の授業を抜けて支援学級で算数や国語をやってくれれば、(実際には同じ授業ができるはずもなく、プリント2枚くらいであとは謎のリラックスタイムで学習空白となってしまっている子も多いが、、、。)教室の授業はやりやすい。

確かに、1クラスの学級数が少なくキープできてはいるが、支援学級の異常な増加をもう止められなくなってきている。

来年度からは通級でも学習の補習を実質してもよいという市教委からの話があり、クラスの半分くらいが通級または支援学級にいって教室がガラガラという冗談みたいな状態になるのもまんざら遠い日でもないような状態となっている。

しかし、この期に及んでもまだ、「人(教師)を増やす!」というために支援学級をさらに増やそうという管理職がいるのも事実である。

ほんとにインクルーシブ教育になってる?

インクルーシブ教育を障害者権利条約にあるように、
「可能な限り同じ場所で学ぶ」を目指すのであれば、枚方方式のダブルカウントで支援学級にちょっといくために在籍するのは、インクルーシブ教育といえるのだろうか。
全く逆のように思えるが、市教委はそれ「インクルーシブ教育」とよび、保護者も「枚方のインクルーシブ教育がよい」と訴えているのが不思議に思える。

この話が通じる同僚は本当に限られているが、文科省の手引きの基準を守って、入級児童を決めている(保護者が望めば)自治体って実際にあるのか興味がある。

私は、個人的に知的障害の療育手帳がAやB1の子どもたちも地域でともに学んで欲しいし、その指導をしたいと思っているので、そういう子にしっかりと教育できる「支援学級」なら存在価値があるのではないかと思っている。

文科省もいつまで国連の要請を無視できるのかもわからないし、今後も注目していきたい。


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