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統率者というゲームデザイン、カジュアルの美学


はじめに


皆さんはカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』の「統率者」というゲームをご存じだろうか?
カードゲーム知らない人は「マジック?ああギャザね。」と分かる人もいるだろうし、カードゲーム知ってる人は「マジックか、あの金がかかるカードゲームね。」と思うかもしれない。
マジック:ザ・ギャザリングは1993年から発売されている、トレーディングカードゲームの最古参である。マジックはカードゲームの中でもカードゲーム以前のアナログゲームの要素を持つ珍しいカードゲームで、「ゲームブックの代わりとしてカードセットがあり、そのストーリーやメカニズムに沿ってカードが開発される」という特徴を持っている。
日本では今、数多くの専門店を持つカードゲームで、人気は後塵を拝しているが、有名どころの一つとして数えられている。

統率者はプレイヤーが開発したゲームであるため、公式のゲームではない。であるにもかかわらず海外では人気のゲームであり、開発企業のウィザーズ・オブ・ザ・コースト社も毎回最新セットが出るたび統率者セットを作っている。

本記事は統率者のゲームデザインの素晴らしさ、またカジュアルとしてゲームに向き合うとは何かをまとめようと思う。

統率者とは?

統率者のルールは簡単。まあ詳しくは調べてもらって、ここではどうやって統率者デッキを構築するかだけにとどめよう。

ルール1:
1枚の統率者カードと残り99枚のカードで100枚のデッキを作る

ルール2:
99枚のカードは「デッキに何枚もいれていいカード」を除き、1枚1枚が別のカードである。

ルール3:
統率者と同じ属性のカードと無色のカードのみ入れてよい

ルール4:
4人対戦である。

統率者はこの4つのルールがゲームとしての個性を形作っている。

それぞれの解説とゲームとしての普遍性

ルール1
要するに統率者とは「推し」である。推しを残り99枚で最大限輝かせよう。

ルール2
1枚挿しであることは意外なカードに出番があるかもしれない。そっくりさんや意外な安いカード、推しにぴったりはまるカードにも出番がある。

ルール3
マジックは呪文を唱えるためにはコストを払う必要がある。
(※マジックは大魔術師が魔道書を使い決闘をするという世界観でゲームをしている。つまりカードにある、生き物を召喚したり結界を貼ったり呪いを付けたりプレイヤーに直接攻撃したり相手の精神に干渉して手札を抜いたり記憶を抜いたりする行為は全て呪文である。)
そしてマジックには5色の属性があり、その色のコストはその属性で払わなければならない。

マジックには白青黒赤緑の5色の属性がある。それぞれに性格が違う。

つまり統率者を唱えたり統率者の持つ能力を存分に使うために必要な色だけを使うということにより、推しをさらに際立たせることができるのだ。

ルール4
戦いは勝つか負けるかで決まる。だが対戦相手が増えるということは一時的共闘も一時的対立もある。その駆け引きもまたゲームである。

ここまで書いたように、統率者とは「推しを輝かす」というゲームデザインとなっており、かつ「これまでなかった可能性に挑む」という非常にカジュアルよりのゲームである。競技性だレアリティだと話題に絶えないカードゲーム業界においてもこのゲームデザインは見習うべきものがある。

カジュアルの美学

話を変えよう。カジュアルと競技的の意識差はこの統率者戦においても大きく話になっている。「統率者は楽しむための、社交的ゲームである」という大前提をゲーム開発において掲げているようだが、これには疑問符がある。

思うに曰く、「カジュアル」と「エンジョイ」はまったくもって意味が違う。同梱してはならない。楽しければ成績は無視できるわけでもないし、勝ったからといって楽しいかは別である。

カジュアルの反対は「コンペティティブ(競技的)」だけでない。「フォーマル(形式的)」もまたカジュアルの反対である。それを考えるとカジュアルは「形式ばった、もしくは環境に適したものに対し自分のやりたいことを追求すること」である。

まずカードゲームとは勝ち負けが存在するし、勝った負けたでゲームが決まる。すなわち勝つこと以外にプレイヤーの目的は存在しない。悪目立ちも勧誘も特定のプレイヤーへの嫌がらせも、ゲームの目的に値しない。勝つことだけがゲームの目的なのだ。
だがそのための手段までは問うていない。自分なりに手段を積みかさねていくか、もしくは勝てる手段をそっくり借りるかは自由だ。そこにコンペティティブとカジュアルの違いがあるのだろう。

話を戻すが、現在膨大な数の統率者カードが存在しており、それぞれに合ったカードが何か模索されている。これはコンペティティブ思想に反する人には非常にありがたい仕様になっている。カードゲームもこの最適化不可能な世界を目指すことが一つの目標とならないだろうか?私はそう思い、「カードゲームをデザインするなら一度は統率者戦をやるとよい」と考えたのだ。

まとめ

マジック:ザ・ギャザリングの統率者戦は推しを意識した、かつカジュアルな勝ち方を目指すようデザインされたゲームである。ゲームについて学ぼうと思ったら一度は経験してはどうだろうか?また、ほかのカードゲームに飽きた人も一度は統率者戦の門を叩いてみてはいいかがだろうか?お近くのマジック専門店は皆さんの来店を楽しみに待っております。


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