一般TCG理論 そのデッキにマニフェストはあるか、アジェンダはあるか


自己紹介

私はカードゲームMagic: the gatheringで独自にデッキを作成、調整しているプレイヤーである。ちなみにデッキ掲載は一回しかしたことがないが、デッキ構築やプレイングにおける自らのコツを一般論に近づけて話すことはできる。

用語解説

マニフェスト
マニフェストとは政治家の用語で「政権公約」を意味するが、もっと具体的に言うと「具体的な政治目標」を意味する。

アジェンダ
アジェンダとはこれも政治家の用語で、「行動計画」を意味する。マニフェストを補完するために用いられるものとして考えてよい。

このような経験はないか

・シナジーはまとまっているが勝てない
・強いカードを使っているはずが勝てない
・なぜあの人はこのカードをうまく使っているのか

これらはデッキの体裁をなしてはいてもマニフェストとアジェンダがないため、「その場の手札の勢いだけで回そうとする」結果、勝ちにつなげることができないことが最近自分の中で判明した。
本記事は、ちょっとカードゲームが分かってきた人向けに「プレイングはどうすればいいか」や「どうすれば勝てるか」の言語化の、さらなる言語化として「マニフェスト」と「アジェンダ」という2つの軸を持って解説していく。なお、一般TCGでありながらマジックが例に挙がるのは了承してもらいたい。

デッキにおけるマニフェスト

一人回しでもなければ「勝つという公約」は当然である。その「勝つ」に対して「このデッキはいかにして勝つか」を明確にしなければデッキを理解することはできない。マニフェストを考えるうえでデッキには2種類存在している。

① 構築段階からマニフェストが存在するデッキ
② プレイングによりマニフェストを構築するデッキ

①のデッキは比較的速いデッキやコンボのような「尖ったデッキ」によく見られ、②のデッキはミッドレンジやコントロールのような「丸いデッキ」によく見られる。

もっと具体的に分かるようにあるデッキを例に考えてみよう。

これは構築段階からマニフェストが存在するデッキだ。そのマニフェストは
「4ターン目に《集合した中隊》もしくはマナを産み出せるクリーチャーを経由して《イモデーンの徴募兵》を用いてゲームを終わらせる」
である。

一方で、プレイングによりマニフェストを構築するデッキは以下のようになる。

このデッキのマニフェストは「3ターン目や4ターン目に5色体制を完成させ、《白日の元に》や各種ドローエンジン、直接場に出す効果で有効牌を引き寄せ、《空を放浪するもの、ヨーリオン》で誘発型能力を連鎖させて勝つ」である。

デッキにおけるアジェンダ

マニフェストを可能にするためにどのカードを何枚選定するか、ゲーム開始前のマリガンの判断、何を場に出すか、それがカードゲームにおけるアジェンダである。それらは独立して考えることはできないため、プレイを通して随時修正していくことが要求される。

構築アジェンダ

①を例に挙げて説明する。①のマニフェストを実行するため、相手のライフを計算基準とし、それに合った役割を遂行可能なクリーチャーを選定していく。

1マナ:最終的に基準以上のサイズでダメージを与えられるクリーチャー
2マナ:最終的に基準以上のサイズでダメージを与えられるクリーチャー
&出たターンに《イモデーンの徴募兵》を唱えるためのマナを供給できるクリーチャー(これらは別個のものとする)
3マナ:主力攻撃要員、3ターン目に削りを入れる必要があるので速攻パワー3以上、その他効果持ち。
&《イモデーンの徴募兵》
4マナ以上:《集合した中隊》の対象でない、ならびにため、不採用

この採用計画をもとに(今回は具体的な説明は省略するが)、クリーチャーの種類並びに数を決定する。

マリガンアジェンダ

Magicの初期手札は7枚である。つまり約3回ドローすれば手札の半分は入れ替わっていることを意味する。
それまでにこの手札を回すことができるか、を考慮して、「7枚だけで3回ドローまでのプレイングアジェンダを作成する」ことで、それで構築段階で想定したアジェンダが達成不可能ならマリガン、達成可能ならキープとする。
あまりにもマリガンが多い場合は、構築アジェンダの採用計画を見直し、枚数を調整する。

プレイングアジェンダ

構築アジェンダやマリガンアジェンダは一人でも行うことができる。しかしプレイングアジェンダはゲームを通して試行ならびに調整を求められる、高度な技術になる。

特にプレイングアジェンダを重視するデッキは相手のプランを通さずに自分のプランを通す「反・社交ゲーム」である。そのため、相手のマニフェストを理解し、そのアジェンダで軸となるものをさせないことが必要である。

②を例に挙げて説明する。キーカード《白日の下に》は支払ったマナの色の種類を参照とする5マナのサーチカードである。①のような速いデッキが相手なら、勝利ターンである4ターン目までに《白日の下に》を間に合わせるか、全体除去やライフ回復等で遅延させることができるかを要求させられる。
これも最新の対戦相手のデッキ事情を鑑みつつ、アジェンダの遂行が難しい場合は構築アジェンダを見直し、選定を調整、さらにはマニフェスト自体の見直しも視野に入れる必要がある。

まとめ

本解説におけるマニフェスト-アジェンダ構築は以下のようにまとめられる。

  1. デッキにおけるマニフェストを明確にすること

  2. マニフェストを達成するためのアジェンダを構築し、経験を通して修正していく

本解説で具体的なカードを挙げてマニフェストを作成した理由は、ほかでもなくそのカードがマニフェストの中心だからである。シナジーを重視して柔軟に運行することでも、ただ強いカードを並べていくことで強引に運行することでもなく、マニフェストを遂行することで勝ちを作っていくことこそカードゲームの真髄であることを私は信じている。

2023年12月6日
Choconaak

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?