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【フリーランスの働き方】異業種との兼業で「好き、得意」を仕事に。若手チョコレートアーティストのこれまでとこれから

「好きなものに囲まれて働きたい」「自分の得意を活かして仕事がしたい」。
そんな想いを持って、自分がどんな仕事がしたいかを考える人はたくさんいるでしょう。その想いを叶えられた人もいれば、本当にやりたいことを胸の内にしまって、毎日懸命に働いている人もいるでしょう。

今回は自分の「好き、得意」を仕事にしたチョコレートアーティスト、ちょこまるさんへインタビュー。
フリーランスとして活動をスタートされるまでの挑戦や、これからの展望を詳しくお聞きしました。

▲ちょこまるさん(26歳)(https://www.instagram.com/chocomaru_art/ )学生時代にアルバイトで数多くのバースデープレート作成を経験する。大学卒業後は教育業界の会社へ営業職として入社。当初は趣味としてチョコレートアートを制作していたが、1件のリクエストをきっかけに2022年からチョコレートアーティストとして活動をスタートする。現在は、プレート制作に限らず、イベントブース出店やワークショップの開催など、幅広く活躍中。

ーーー2022年からフリーランスのチョコレートアーティストとして活動をされているちょこまるさんですが、現在の活動について教えてください。

今は、定期的にワークショップを開いたり、介護福祉施設などから依頼を受けてのレクリエーションを行っています。また、音楽イベントのブース出店の依頼を受けて、参加者の方へ体験型イベントを行ったりもしています。
また、SNSのフォロワーさんからリクエストをいただいて、バースデープレートやウエディングプレートの制作も行っています。

ーーー一般の方向けに、幅広く活動をされているんですね!どのようなスケジュールで活動されているのでしょうか。

今は兼業、という形で、チョコレートアートの仕事と教育業界の会社で営業職もしているので、日中はそちらの仕事もしています。
基本的に出勤が11時なので、朝に家を出るのが10時前後。退勤が20時〜21時くらいなので、帰宅は22時前後ですね。チョコレートアートは、それ以外の時間で活動しています。
と言っても、私めちゃくちゃ朝が弱いので(笑)。基本的に朝は何か活動していると言うことはありません。ただ、イベントが近づいてくると、移動中にワークショップの企画や準備をしています。ワーク用の資料を作ったり、材料は何が必要で、予算がどのくらいかかって...みたいな計算をしていますね。
作品の制作は、帰宅後の夜の時間と休日にがっつり取り組んでいます。

ーーー営業職との両立は大変そうです。繁忙期などに、チョコレートアートの活動ができなくなってしまう時もありますか?

そうですね〜、営業の仕事が溜まってしまうこともあります(笑)。でも仕事を家に持って帰って、制作の時間を削ってやることはないですね。
自分の中で、仕事は「やらないといけないこと」、チョコレートアートは「伸ばしたいもの」なので、自分にとって一番大事なものを優先するように動いています。
どうしても仕事が終わらない時は残業しちゃったりもするんですが...(笑)

ーーーこれまでの活動の中で、一番大変だったことはありますか?

これまでで言うと、音楽イベントのPRムービーの作成ですね!
2024年の10月中旬に、『僕たちの大熱波』という音楽イベントのイベントブースを出店する依頼をもらったんです。それと同時に、そのイベントのPRムービーとして、パラパラ漫画のようなムービー作成の依頼をいただきました。脚本家さんがストーリーを提示してくださって、それを元に私がラフ案を描いてと、修正を重ねていくうちに,最初は10枚くらいの予定だったんですが、最終的には88枚のチョコレートアートを描くことになってしまって(笑)。

ーーー88枚ですか !?制作時間はどのくらいあったんでしょうか。

脚本家さんとのミーティングがまとまって、本番のチョコレートアートの制作をスタートできたのが、2024年の9月に入ってからでした。期間的には約1ヶ月、1日3枚くらいのペースですね。
ただ、パラパラ漫画のようなイラストを描くとなると、チョコレートってとても難しいんです。デジタルイラストだと、絵のパーツごとに描いて、そのパーツだけ消して少しずらして描くことができたりするんですが、チョコレートは消そうとすると伸びたり滲んだりするので、そうはいかなくて。ミスをすると修正が大変なので、集中力と体力をめちゃくちゃ使いました(笑)。
仕事が休みの日だけではとても間に合わないので、仕事終わりも体力が尽きるまで毎日描いていました。

ーーーあれ、確かイベントブースの出店も依頼されていましたよね。

そうですね(笑)。3日間のイベントだったので、どういう内容で出店するか。そのために何が必要か。スクリーンが使えないので資料はどうするのか。いつ買い出しに行くのか...。とても不器用で、忙しい日々に充実感を見出せたりするタイプではないので、正直パンク寸前でした。

ーーーなぜやり切ることができたのでしょうか。

信用と使命感でしたね。やると言ったからにはやらないと、次の仕事がいただけない。だからやるしかない。
「これだけの量をこの期間で製作しました。」と「これだけの量があったから、制作が間に合いませんでした」だったら、絶対にできたほうがいいと思いました。

原点は『友チョコ文化』で出会ったアイシングクッキー


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ーーーこれまでたくさんのチョコレートアートを製作してこられたちょこまるさんですが、昔から絵を描くことはお好きだったんですか?

いえ、実は絵を描いていたというよりも、学生の頃はお菓子を作ることが好きだったんです。
中学校の頃は『友チョコ』文化が私の学校にもありまして。(笑)私も何か作ろうと、百均に買い出しに行った時に、アイシングクッキーと出会いました。
最初はシンプルなハート型にアラザンをまぶしただけのものを作っていったんですが、友達がとっても喜んでくれたのが嬉しくて、お菓子作りにハマっていきました。

▲中学生のちょこまるさんが初めて作ったアイシングクッキー

ーーーアイシングクッキーを作っていて、特に楽しかった思い出はありますか?

特にこれが楽しかった、というよりは、同じ型でも無限にデザインができるのが楽しくてしかたなかったです(笑)。「お菓子の上に絵が描けるんだ!」と、感動していました。

もちろん、友達から「すごい!」って言ってもらえることも嬉しかったですが、せっかくなので喜んでもらえるものを渡したい。そのためには、見た目のインパクトとか、印象に残るものが大事かな、と思って、毎回作っていました。

あとは、大量にできたクッキーたちを「かわいい〜!」って眺めるのも好きでしたね。(笑)

ーーーこれほどアイシングクッキー作りがお好きだったら、お菓子作りやイラストが学べる学校に進学する選択肢もあったのでしょうか。

進路に関しては、というか元が超現実思考だったので、中学生の頃は「県内の国立大学に行くこと」が目標でした。「安定したいな。だからいい大学に行かないと。理科が好きだから理科の先生になろうかな」という感じで(笑)。

そのために県内トップクラスの進学校を受験したのですが、そこは落ちて、県外の私立の学校に通うことになったんです。その学校がかなり自由な校風で、女子高生として自分が好きなように過ごせたことで、現実的なだけの自分に、挑戦する、という選択肢ができました。

高校生の頃はアニメが好きで、声優の専門学校へ進学してみたいと思ったんですが、家庭の金銭面の事情から親に反対されてしまって。一人暮らしするお金も私立の大学に行くお金もなかったので、結局は家から通える国立大学に頑張って進学しました。

お客様が教えてくれた、人を喜ばせることのやりがい


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ーーーSNSでも大学時代のアルバイトでチョコレートアートに出会ったと発信されていますが、お仕事を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

選んだ理由は本当に単純で、「変わったバイトがしたい!」という気持ちだけでした。アルバイトを探している中でそのお店を見つけて、「スペインバル?めっちゃオシャレやん!」と思って応募しましたね(笑)。
これは後で聞いたのですが、採用されるのが結構難しいお店だったみたいです。面接の時に提出する書類に「特技:アイシングクッキー」と書いたのですが、「バースデープレートもできそうだね!」ということで採用していただけました(笑)。これまでやってきた得意なことと、これからやってみたいことの点と点が線になった感じでしたね。

ーーーお店では、ちょこまるさんはどのような役割でしたか?

基本的には通常のバルのホール業務と同じですね。簡単な料理やドリンクの提供が主です。営業時間外は料理紹介のポップを作ったり、店舗の窓に季節やイベントに合わせた絵を描いたりも任されていました。
それに加えて、バースデープレートの依頼を受けると、その日に作成していましたね。

▲ちょこまるさんが担当したバースデープレートの1枚。営業中に制作するため、1枚10分前後での作成が求められていた。

ーーーお店にとっては不可欠な人材ですね。

いやいや(笑)。実はバルのホールスタッフなのに、お客さんとのトークの方が本当にダメで、当時は接客が本当に苦手でした(笑)。
初対面のお客さんにいきなり「クリスマスの予定ってどんな感じですか?」とか聞いちゃうような人でしたね...。

あとは、学生あるあるかもしれないですがスケジュールもキツキツでした。お店から家までが遠くて、終電が21時すぎだったので、17時〜21時まで働いて、急いでまかないを食べて走って帰るのが通常。たまにラストまで入る時は夜中の3時まで働いて、早朝6時ごろの電車まで店で待って帰ったりとか。

だから精神的にはすごくしんどかったです(笑)。

ーーー確かに、忙しい大学生も多いとはいえ大変なスケジュールです。仕事を続けられたのは、バースデープレート作りが楽しかったことが大きいですか?

そうですね。常連さんや社員さんが本当にいい人たちだったのと、仕事が楽しかったことが続けられた理由でした。
なかなか自分の仕事で、目の前で喜んでもらえることって少ないと思うんです。
突然電気が落ちる。歌が流れる。自分で書いたプレートを自分でお客さんのところへ持っていく。電気がついて、お客さんの驚いた顔と、嬉しそうな顔を見る。その時間が本当に楽しかったですね。

ーーー担当したバースデープレートの中で、一番印象に残っているものはありますか?

ある日、仲良くしてくださっていた常連さんがこっそりお店に来て、「彼女が、ディズニープリンセスが好きで、そのプレートを描いてくれない?」と依頼されたことがあったんです。そこからちょっと作戦会議をして、サプライズの準備をしました。
ただプレートを作るだけじゃなくて、「お客さんと一緒に何かを仕掛ける」ことにとてもワクワクしたんです。
当日、サプライズが無事成功して、

ちょこまるさん:「実は事前にお店に来てくださって...(ニヤリ)」
常連さん   :「そうそう(ニヤリ)」
彼女さん   :「え、そうなの!?全然気づかなかった!!」

みたいなやり取りが、とってもかわいくて(笑)
プレートをもらった人は、相手からの愛を感じられるし、送った人は相手の喜ぶ顔を見て幸せな気持ちになれる。そんな瞬間を見れたことが、すごく嬉しかったです。

チョコレートアーティストちょこまる、始動。


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ーーー大学を卒業後、飲食業界ではなく教育業界の営業職を選ばれたのには、何か理由があったのでしょうか?

元々、「卒業してからは安定したい」と考えていたので、公務員試験を受けていたんです。でも、それに落ちてしまって、そこから就職活動を始めました。正直、「教育学部だから教育業界にいこう」くらいの気持ちでしたね。営業職も進んでやりたいと思っていたわけではなく、人事の方のお話を聞いて、「なんか面白そう!自分に合ってそう!」くらいの気持ちでした。
だから、営業職を選んだことに大きな理由はないですね。(笑)

ーーーフリーランスで活動を始める前は、転職をされたり副業をされたり、と他のお仕事は何かされていたんでしょうか?

実は、転職を考えたこともあるんですが...。本音を言うと、転職活動がうまくいかなくて、結局今の仕事をここまで続けてきている、というのが本音です。(笑)
それ以外にも、「とにかく会社を辞めたい」と思ってWEBデザインの勉強をしていたり、コンテンツ販売をしてみようと思って婚活支援ビジネスを立ち上げてみよう、と思ったりしたんですが、やっていて全然楽しくなかったんです。「楽しくない。でも会社を辞めて自分でやっていくにはこれしか手段がない」と思ってやっていました。

ーーーそこからどうしてチョコレートアーティストになろうと?

当時は、仕事の息抜き程度で、チョコレートアートを作ってインスタに上げたりしていたんです。これを仕事にしようとかは全然考えていなくて、いいねがもらえたらいいな〜、くらいに考えてあげていました。

でもある日、一人の女性からDMでチョコレートアートを作って欲しい、とリクエストをいただいたんです。人のために自分がチョコレートアートを作るのは、アルバイトを除けばこれが初めてでした。この時も、売って利益を出そうとかは考えていなくて、材料費だけいただいて制作しました。
これがきっかけで、チョコレートアートが自分自身の特技なんだと気づくことができた。自分では自信がなかったのですが、自分が続けてきたことを周りの人に認めてもらえることで認識することができたんです。
そこから紹介がつながって、それぞれの得意を活かしてフリーランスで活動している人たちと知り合って、自分の特技を考えた時に、やっぱりチョコレートアートだ、と思うことができたんです。

自分の特技を発信していたことや、チャンスに挑戦してみたこと。安定思考の自分が発揮したあの時のハングリー精神がきっかけになりました。
学生時代から、承認欲求が強かっただけかもしれないですけどね(笑)

▲当時、息抜きで制作し、投稿していたという作品の1枚。

目指すのは、人の想いを繋げる「魔法使い」


ーーーこれまで精力的に活動をされてきたちょこまるさんですが、これからどのようなチョコレートアーティストになっていきたいと考えておられますか?

ぶっ飛んだ表現をすると、「魔法使い」になりたいと思っています(笑)

具体的な想いで言えば、「人と人との思いを繋げるチョコレートアーティスト」になりたいです。
チョコレートアートそれ自体は「ギフト」だけど、そこにメッセージが加わると「手紙」になると思っています。アルバイト時代にバースデープレート作りで学んだことですが、ギフトを送る側は、相手に送りたい愛情がある。贈られた人は愛情を受け取って嬉しい気持ちがあって、そこに幸せを感じて、生きる糧にもなる。 そんな想いのつながりを生み出せる一つの手段としてチョコレートアートがあって欲しい。そう思っています。

あと、これは私がワークショップやレクリエーションをしている理由でもあるのですが、参加者の方々に、チョコレートアートの楽しさを知って欲しいと思っています。
チョコレートアートの楽しさを知った人が、子供の誕生日、パートナーの誕生日に「やってみよう!」と思って挑戦してみてくれる。そんなふうに、誰かを喜ばせる手段としてチョコレートアートが連鎖していく。そんなことが起こせればいいなとも思っています。

ーーーチョコレートアーティストとして、これから仕掛けていきたいことがあれば教えてください

これからやってみたいことはたくさんあるのですが、空間づくりとチョコレートアートを掛け合わせたような取り組みをしてみたいと思っています。
冠婚葬祭の場面や、音楽とのコラボレーションなどはチョコレートが本来持っているセピア調のテイストととてもマッチすると思います。
他にも、親子向けや地方創生のためのイベントには、チョコレートアートはぴったりだと思うので、挑戦してみようと考えています。

私が憧れている、noricoさん(https://www.instagram.com/norico0807/)というチョコレートアーティストがいらっしゃいます。世界的なイベントにも作品を出店されたり、日本に限らず世界のプロに技術の提供もされている著名な方です。
私も、noricoさんの作品から感じられるような温かみを作品で出すことを目指しながら、「チョコレートアートを一般の方も楽しむことができるようにする」ということをモットーに自分の活動を広げていこうと考えています。

ーーーこれからのご活躍、私も楽しみにしております!!

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