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カウンセラーさんからの卒業
2年前から、通院している心療内科でカウンセリングを受け始めた。
カウンセリングなんて初めての経験だったので、受ける前は「何を話せば良いんだろう」「カウンセラーさんってどんな人だろう」と、正直不安の方が大きかった。
そして迎えた、初カウンセリング当日。
緊張していた私を迎えてくれたのは、優しくて可愛らしくて、とても話しやすいカウンセラーさんだった。
その方が、最初にかけてくれた言葉が私は未だに強く印象に残っている。
私の考えるカウンセリングは、絡まってぐちゃぐちゃになってしまった毛糸の玉を、少しずつほどいていくようなものです。最初はどこが絡まっているのかすらわからなくても、手前の糸を引っ張ってみたり、それが駄目なら奥の糸を引っ張ってみたり。完全にはほどけなくても、どこに結び目があるのか、どうすればほどけそうか。それらを少しずつ見つけるお手伝いをするのが、私の役目です。
私にとって、これはとてもイメージが湧きやすい言葉だった。
「この人なら」と、直感的に思った。こういう自分の直感を、私は素直に信じることにしている。
それから2年。私はそのカウンセラーさんに、沢山話を聞いてもらった。
私の通院する心療内科では、カウンセリングは2週間に1回と決まっているのだが、私はいつもカウンセリングの日が楽しみだった。
嬉しかったこと、悲しかったこと、出来たこと、失敗したこと、ハマっていること、悩んでいること。
カウンセラーさんは、私のどんな話にも耳を傾けてくれ、そこから更に新しい引き出しを提示してくれる。
先週はこんなことがあってモヤモヤした、と私が自分の気持ちを整理出来ず、「モヤモヤ」なんて曖昧な言い方をしても、「そのモヤモヤは初めて感じるものですか? それとも、過去にも似た感覚はありましたか?」と問いかけてくれる。
そこで私は自分の記憶を辿り、そういえば子供の頃に似た経験があったな…と気づくことが出来る。
そうすると、今度は「モヤモヤ」の原因の共通点が見えてきて、それが『毛糸の結び目』の一つであることがわかるのだ。
何より重要なポイントは、カウンセラーさんは家族でも友人でも知人でもない。カウンセリングの1時間だけ、話を共有する以外、何のしがらみもない存在であること。これは、本音を話すということにおいて、非常に重要だと私は思った。
そんなカウンセラーさんとの日々が、終わるときが来てしまった。この3月末で、退職されることになったのだ。
正直、ショックもあったけれど、それ以上に寂しい気持ちの方が強かった。
私は他のカウンセラーさんのカウンセリングは受けたことがないけれど、私を担当してくれていた方に関しては、とても相性が良かったと私個人は感じていたから。
3月に入り、残すカウンセリングもあと3回となったあたりから、私はカウンセリングを受け始めた頃から現在まで、カウンセラーさんから見てどのような変化があったかを、聞かせてもらった。
「まったく違いますよ。表情も、話し方も」
懐かしむように、ほんの少し目を潤ませて、彼女は即答してくれた。
カウンセラーさん曰く、最初の頃の私は「モヤモヤ」「苛立ち」「不安」これらの感情がとても強く、その感情に振り回されている印象だったそう。
けれど今は、「こういうことが出来るようになりたい」「これを解決するにはどうしたら良いか」という話題が増え、冷静に自身の気持ちと向き合っている気がします、と言って頂いた。
この2年間。
人間関係でも様々な出会いがあり、中には私の人生観を大きく変えてくれるようなものもあった。カウンセラーさんとの出会いも、勿論その中の一つだ。
沢山の人や出来事が、私を変えてくれたことは間違いない。そんな私に関わってくれた人たちには、感謝してもしきれない。
最後のカウンセリングの日。
私はどうしても報告したいことがあった。
私は当初から、「パニック発作の為避けていた電車に、乗れるようになりたい」という目標を掲げていた。
それが、先日達成出来たのだ。
視野の広い友人達に刺激を受け、コロナ騒動の中無事志望校に合格した息子に勇気づけられ、何より最後のカウンセリングで、少しでも前にも進めた自分を見せたかった。
「それは本当にすごいこと。私も新しい発見を沢山頂きました」と我がことのように喜んでくれたカウンセラーさんは、最後まで私の背中を押してくれた。
もう一つ、カウンセラーさんとお話させて頂きながら、気づいたことがある。
それは、尊敬出来る相手も、決して100点満点ではないということ。
つまり、自分の過ちを認めることは大切だけれど、納得出来ないことや腑に落ちないことは、それで良いんだということ。
『私』自身の価値を、自ら落としてしまわないこと。
最近YouTubeで見た某氏の講演が、非常に興味深かった。
今の自分と、なりたい自分にギャップがあるから、人は成長できる。鴨頭嘉人氏の言葉だ。
私は、とても我儘で貪欲なので、一生理想の自分にはなれない。
書きたい話は山ほどあるし、触ってみたい楽器も沢山あるし、読みたい本も山ほどあれば、プレイしたいゲーム、作ってみたいゲームもある。
興味のあること、やりたいことが山積みなので、到底死ぬまでに消化出来るとは思えない。
だからこそ、私はずっと理想の自分を追っていられる。
この「先へ進みたい」という気持ちへの気づきは、2年間のカウンセリングの中で、発見できたものだ。
もうお話が出来ないのは寂しいけれど、これまでの2年間を無駄にしないよう、私はこれからも少しずつながら、前に進める自分でありたいと思う。