カーナバル・ド・ニース2008(フランスのお祭り手帳)
リヨンから、電車に揺られて4時間半――。
車窓を流れる緑を見ていると、これから出会う海の『青』が一層待ち遠しくなる。
私はついに、ニースへやって来た。
当時働いていた職場のショコラトリーで、カーナバル・ド・ニース(ニースのカーニバル)を見に行きたいと話すと、休みをくれたのだ。
…
3月、リヨンはまだ寒かった。
冬服でニースに登場した私は、現地のほんのり日に焼けた半袖の人とあまりに違いすぎて、まるで”よそから来ました”風。(よそから来たのだが)
抜けるような青空、太陽のエネルギーをたっぷり吸収して空高くグンっと伸びた木々や、アロエみたいな植物…まさにNICE(ニース)はNICE(ナイス)だ。
こんな格好で来てしまった私ではあったが、これでも前日にネットで天気予報を確認していた。最高気温17度、最低気温7度…丁度その頃はリヨンでも16度の日もあり、『まぁ、大して変わらないか!』と甘く見ていたが…日差しが違ったのだ。しかも街に表示されていた最高気温…21度!こういう時に限って、私はすっぴんだった。日焼け止めクリームなんて、考えていなかった。まだ冬の感覚だったのだ。
海沿いを散歩していると、いい匂いが…
思わず購入。ナッツの香ばしい匂いがたまらない!
ポリポリとつまみながら、海を眺める。
青いパラソルは、空と海と同じ色をしていた。
こんなところで、のんびり外を眺めているだけで幸せ…。
ミモザの花があちらこちらで咲いており、道行く人もミモザのブーケを持っていた。黄色いポンポンのついたミモザは、青い空がよく似合う…まるで太陽のような花だ。
浜辺を散歩していると、トップレスの女性達が日焼けに励んでいた。
あまりにも馴染んでいたので、近くを通る時に初めて気付き、ビックリしながら2度見してしまった。流石フランスだ。
カーナバル・ド・ニースは、フランスで一番大きなお祭りだと聞いた。
これを見ずに、日本に帰れるか!と気合十分で、チケットをネットで購入した。15日前までに予約をしないと、家までチケットを届けてくれないとのことで、私は観光案内所にチケットを取りに行ったのだった。
海沿いにずらっと並んだ観客席…今はまだ誰も座っていないけれど、ここが数時間後には人で溢れ返るのか…。
何やら人だかり。気になる…
ニースの名物、ソッカだった。(そっか~)
荒く刻んだひよこ豆とオリーブオイル使用の、香ばしく焼き上げたガレット。とにかく、豆感がすごい。ウィキペディアによると、8000年も前、トルコ・シリア・レバノン等近東諸国、メソポタミア、エジプトの農家さんが作り出したものらしい。ニースだけではなく、マントンや、モナコの名物でもあるらしい。(そっかそっか)
通りには、この他グミ等の屋台もあり、子供連れの家族もいっぱいだった。
仮装している人も結構いた。
カーニバルは、今回で124回目。結構な歴史があるらしい。
少し早めに席に着いた私は、胸の高鳴りを押さえながら、愛用していたNikonの一眼レフを取り出した。周りにいるフランス人達も、NikonやCanon等、見慣れたメーカーのカメラを持っている人を多く見かけた。
ただ、カメラを首からぶら下げて通りを歩いていた時、ニースの住民らしきマダムに「カメラ盗られちゃうから、しまった方がいいよ」とご指摘を頂いた。素晴らしい景色に気を取られていると、痛い目を見るのかもしれない。
ほどなくして、カーニバルは始まった。
BGMは、ノリノリの今どきな音楽が掛かり、それに合わせて行進。
毎年テーマがあるらしいが、今回はネズミ年ということもあり、ネズミがテーマだそうだ。中国や日本を参考にしたと聞いた。
ネズミときたら、猫。
た、食べられてる…?
ミモザを投げて皆に配ったり…春の訪れを感じさせる。
ずっと来てみたかったお祭り…来れて良かった。
夜は、海で花火を打ち上げるというので、一旦宿泊先だったオーベルジュ・ド・ジュネス(ユースホステル)に戻り、また海辺までやってきた。
最終日にしか花火は上がらない為、早めに出掛けて場所を取った。
空から自分に降りかかるのではないかという距離で見上げる花火。海と空の境がわからない程の暗闇の中、花火が打ちあがる度に、炎の光で透き通った薄いブルーが浮き上がるように照らされる。BGMは昼間と打って変わり、クラシックだった。
隣に座ったムッシュとも会話が弾み、楽しいひと時。
花火が終わった後、一杯どうかと言われたが、それはさっくり断った。
嫌な顔せず、「楽しいひと時が過ごせて良かった。元気でね!」とニコニコ去っていった。
翌朝、早めに出発し、海辺を散歩。
昨日のお祭りが、もう遠い夢のようだ。
朝の海は清々しい。
海沿いを散歩していたら、そこで日本人のお嫁さんがいるという、ムッシュに出会った。携帯の待ち受けに子供の写真が入っていた。名古屋に住んでいるらしい。
「いつ帰るの?俺明後日!」とシャキシャキの日本語で話していた。
一期一会とは、こういうことなのか。
高台が見えたので、登ってみた。
高所恐怖症の私ではあるが、登らずにはいられなかった。
綺麗な景色を一目見たくて。
朝陽は、どうしてこんなにも神々しいのか…。
こんなところに椅子が…。これはもう、座ってしばし眺めるしかない。
そして下界に戻ってきた。下界といってよいかわからないが、それくらい、先程の高台が印象的だった。
蚤の市を散策。太陽の光に照らされたガラスが煌めく。
これはガレットデロワに入る、フェーブだと思う。凄い量…
フェノッチオというアイス屋さんは、大好きな小林かなえさんの本で紹介されていたが、散策中に偶然見つけた。
80種類くらいあったので、迷っていると、爽やか店員のお兄さんが
「僕は~、コンフィチュール・デュ・レ(ミルクジャム)ですね~。それか、キャラメル!」
とお勧めしてくれたので、そのまんまミルクジャムにした。
美味しかった!
余談だが、この辺りにはラテン系(イタリア系ともいう?)の人が多い気がする。赤いポロシャツに短パン・サングラスで、いかにも夏です!みたいなイケメンが沢山いた。地方でこんなにも違うのが、新鮮だった。
その後、ショコラトリー見学。
もちろん買った。
もはや、ZARDの世界…。
お家散策も。至る所にミモザが咲き乱れ、こんなところに住みたい…とうっとり。
最後は、訪れた街で必ず行くところ、第2位の、美術館へ。
マティス美術館・シャガール美術館・マッセナ美術館巡り。
マッセナ美術館はこの日は無料だった。
バスやトラムも、4ユーロで乗り放題。マティス美術館へ行く時、バス停で待っていたムッシュが
「もしかしてマティス美術館に行くの?何番のバスか、来たら教えてあげるね。」と親切に声を掛けてくれた。
こちらの人は皆親切だった。何気ないことでも感じた。道を聞いた時の反応や、途中まで一緒に行ってくれたマダム…カメラの忠告をしてくれた人…。
青い海がよく似あう作品。シャガールは、色合いの美しさに感動した。
マティス美術館は撮影禁止だったが、ポストカード等を沢山購入した。
ラ・ダンスという絵が気に入った。タヒチに行った時のこと等を題材にしているらしい。木が良かった。丸みのある優しい、温かい感じの彫刻だった。
やはり、ニースは、ナイスだった。
またいつかきっとここに戻ってきたい。
大好きな街の一つとなったのだった。
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