『蛇の言葉を話した男』読書感想文
読書の秋ですね…。
今年も#読書の秋2021 読書感想文に応募してみました。
課題図書
『蛇の言葉を話した男』
アンドルス・キウィラフク著
関口涼子 訳
河出書房新社
こちらの本は書店に並んだ時から気になっていて、課題図書にするならこれ!とすぐ決めました。
エストニアの小説家アンドルス・キウィラフクさんが2007年に発表し、エストニアで歴代TOP10に入ったベストセラー作品です。
エストニアの位置がピンとこなかったので地図で確認すると、バルト海を挟んだフィンランドの対岸の国でした。真冬は極寒の地ですね~。
タイトルの『蛇の言葉』で真っ先にイメージしたのは、アヌンナキの神様たちでした。
人に自立を促そうと知恵を与えるエンキ(爬虫類)と、人を飼い慣らし利用しようとするエンリル(猛禽類)の兄弟神です。
アダムとイブに知恵の実を食べるよう薦めた蛇はエンキ、実を食べることを禁じた神はエンリルがモデルで、旧約聖書において蛇は邪悪な存在として中世に浸透してゆきます。
この物語の中でも村人たちの神への依存ともとれる過度な信仰心を描き、人々を飼い慣らし利用するエンリル側のイメージをエンキ側の視点で描いているように感じました。
以前伊勢神宮の神楽殿でご祈祷したときに、直径1mくらいの太くて長いものが大広間の天井をぐるんぐるん回っている気配を感じたので、伊勢神宮にいる神様は蛇系かなぁと個人的に思っています。
✳
主人公『レーメット』はどちらかといえば争うことを好まない穏やかで好奇心旺盛な男の子でした。
蛇の言葉を話すことが出来るのも特別な能力を持っているからではなく、学んで話せるようになったから。
彼はキリストが本当に人々を救うとは思っていなかったし、森人が崇拝する精霊への生け贄は、全く意味がないことだと思っていました。
私も神様が存在することは信じていますが、神様が人々の願いを叶うために存在しているとは思っていません。
村人たちは彼を邪悪な力を使う悪魔として捉え忌み嫌い、森人たちも精霊への儀式に賛同しない彼を攻撃します。
人は時として、違う世界観を持つ人に罵詈雑言を浴びせ、全力で排除、淘汰しようとします。
これは現代でもある話で、例えば自粛警察やSNS炎上だったり、家族間だって価値観の相違でケンカになったりする。
違うパーソナリティを持っていれば意見が対立し揉めることはあります。命に関わる事でなければ、どんどん意見を交わして理解を深めればいいと思っているけど、礼節を持たないでするケンカのほとんどは理解に至らず、気持ちの悪さだけが残ることの方が多い。
物語の方も状況は良くなることなく、穏やかだった主人公『レーメット』は怒りの化身へと変貌し、孤独になってゆきます。
彼は孤独を表現するのに『死の臭いを纏う』という言葉をよく使いました。
『孤独』とは森の中にたったひとりで暮らしていても、大人数がいるキラキラする世界にいても本人が『孤独』だと思えば、もうそれは『孤独』で、逆に人を幸せな気持ちにする『共感・共鳴・承認』の中いると、人は『孤独』であることを思い出したりしないんじゃないかなとも思いました。
自分で『孤独』と決めてしまえば生きながら死んでいるも同然だよレーメットォォーと、主人公に突っ込みを入れるくらい、いつの間にかお話に没入していました。
もしも彼が『孤独』を選んでなかったら、日本の天皇のように神様の使者として今世紀まで続く王家となっただろうか…。
サルマンドルと共に…。
✳
この物語は最初ファンタジーだと思って読んでいましたが、もうゴリゴリの寓話でした。
あなたはこの世界で
どう生きているの?
読了後
そんな言葉がよぎります。
長編小説上下2段の355頁には、たくさんの濃いキャラクターたちと主人公とのたくさんのエピソードがあり、自分はどのキャラに近い感覚を持っているかなと考察するのも面白かったです。
子どもたちに読んでほしいけど女好きのエロイ熊とか出てくるからベッドサイドストーリーとしてはちょっと向かないかな。
最後の一文に失望しましたが、最初の一文に戻り少し救われ気がしました。
何度も読みたい寓話です。
ご興味のあるかたは
ぜひ読んでみてください。
おまけ
聴きたくなってしまった
You raise me up
いつも読んでくださり
ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
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