精神科病院の受付から見た日常

またまたご無沙汰していました。
「何が忙しい」というものがある訳ではないのですが、今月はバタバタとする日々が続いていて、気が付けば前回から3週間ほど空いてしまいました。書こうと思っているものはいくつかあるのですが、何となく気乗りしないところもあって、この1週間ほどはnoteにログインすらしていませんでした…。

そんな慌ただしい(と思っているのは自分だけかもしれませんが)日々の中で、最近「自分の当たり前は、他人にとっては当たり前ではない」という内容の文章を目にしました。今回が初めてではないのですが何となく心に残っていて、ここ数日ふとした時に思い出していました。

「そういえば精神科病院って、あまり当たり前の感じってないよな…」と思い、今回は受付周辺で見られる光景の中で、しばしばみられる「当事者にとっては当たり前だけど、外から見たらそうではない」事柄について書いてみました。ただし、あくまでも当院での話なので「ウチはそんなことは無い!」といった苦情は勘弁してください。

・思ったよりも平穏な光景

以前の記事「精神科は『受診するまで』が難しい」でも少し触れましたが、理由も無く「精神科病院って怖い」というイメージを持っている人は一定数います。確かに、過去の歴史やメディアの影響、統合失調症のような見た目に激しい疾患で状態のよくない患者などを見ると、その理由は分からなくもないのですが、現実は身体科病院と大差無いです。というより、外来患者数は身体科病院よりも少ない(当院だけと言われそうですが…)ので、むしろ静かに感じるかと思います。

当たり前と言えば当たり前ですが、普段の待合で、大声で叫ぶ人はいません(たまにいます)し、激しく暴れまわる人もいません(たまにいます)し、ベロベロに酔っ払って受診に来る人もいません(たまにいます)。

あえて違う所を挙げるとするならば、話し声のボリュームが大きめの人がいたり、同じ所をずっとウロウロしている人がいたり、誰かと会話しているかのようにブツブツ独り言を言う人がいたり…。焦点を絞れば見慣れない光景なのかもしれませんが、俯瞰すればどこの病院でもある見たことのある光景だと思います。でもよくよく考えたら、私自身が慣れてしまっててそう感じているだけかもしれませんね。もしそうだったらごめんなさい。

・受付対応も平穏

これも先入観があるせいだと思いますが、会計や診断書の依頼など、身体科の病院で見られる光景と大差無いと思います。言い方は悪いかもしれませんが、精神疾患があるからといって、日常生活まで支障をきたしている方は多くありません。ですから、その辺のお店などで見られるものと、さほど変わりないように思います。

確かに、会話に難のある方や意思疎通がうまくできない方もいらっしゃるし、他の所よりは頻度は高いかもしれませんが、それが「大変だ」ということにはならないと思っています。むしろ、そこをどうスムーズに難なく対応出来るかが、本来の「仕事」ではないでしょうか。

・無茶を言う人がいる

とはいっても、中にはその平穏を打ち破る方もいます。これはどこの病院でもあることなのかもしれません。ですが、常識的に考えて「なぜ?」と思ってしまうことが時々あります。個人的な考えですが、精神疾患の有無は関係無く、あくまでも個人の思考や個性の問題だと思っています。

お金が無いのに受診に来る
飲食店で言うなら「無銭飲食」です。食い逃げと違うのは、堂々と「お金持っていません」と言い切ってしまう所でしょうか。お金が無いと受診できないことを知っていて、それでも普通に受診して、会計時に「持っていない」と言います。確信犯です。
入院費の支払時でもあることで、当院では事前に概算を連絡するのですが、連絡した時は「ハイハイ」と言っておきながら、退院時に勝手に「来月払うつもり」などと言って支払いしないこともあります。これも確信犯です。

禁止されていることを「させろ」と言う、もしくは勝手にする
これは患者だけでなく、家族等でもあります。最近の話で言えば、コロナウイルスの影響で面会ができないのに「面会させろ」とか、敷地内禁煙なのに喫煙して注意したら逆ギレするとか、時間にならないと正面入口は開かないのに「早く開けろ」とか…。
事例を挙げればキリがありません。事あるごとに対応するのですが、聞き入れてくれなかったり怒られたり無視されたりすることは割と多い印象です。

治療にケチをつける
別に「当院の治療は完璧だ!」なんていうつもりは毛頭ありません。医療に関わる人であれば、効果の大小は患者との相性が影響することが多いし、本人の努力も必要とすることも多いです。
しかし、病状にあまり変化が見られない時や、患者や家族が思っている通りにならない時に、全てを病院のせいにして「お前のところでは病気は治らない」と藪医者扱いされることがあります。
当院は曲がりなりにも半世紀以上の歴史がある病院であり、回復されたり社会復帰されたり、疾患を抱えつつも平穏に日常を送られている患者もたくさんいます。藪かどうかは私たちが判断することではないですが、謂れのない理由で非難されることに、腹立たしく感じることもあります。

先にも書きましたが、「精神科病院どうこうではなく、その辺のお店などと変わらない」という事を分かってもらえれば、今回は十分役に立ったと言えると考えています。
上手く言えませんが、普通である事を「普通です」と表現するのはとても難しいんですよね。事例を積み上げたところで、それが全てではないからですね…。それでも、何か感じて貰えたのであれば、私としては嬉しく思います。

コロナウイルスによる第2波が懸念されていて、私が住んでいる地域でも多少なりとも感染者数は出ているようですが、当院での影響は徐々に減って来ているように感じています。とはいえ、まだまだ感染予防対策が緩和されている訳でもなく、いつ大きな波が発生するかなんて、だれも予測はつきません。そんな中で豪雨被害に遭われた方や亡くなられた方もたくさんいらっしゃり、今もなお大変な状況であると思われます。心からお見舞い・お悔み申し上げます。

身の回りが落ち着かない時は、気持ちも落ち着かないものです。災害による精神疾患の発症は東日本大震災の時にも言われていたことですし、コロナ禍においても同じ状況であると言えると思います。気になるところがあるのであれば、誰かに相談するなり、医療機関に受診するなり、迷うよりも先に行動することをお勧めします。無理に我慢するよりも、自身が楽になれるように勇気を出して一歩を踏み出して、少しでも穏やかに過ごせるようにしてくださいね。

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精神科病院の事務員(元医事課員)
ありがとうございますm(_ _)m精神科の風評向上のために使わせていただきます。