瑞垣くんと海音寺くんと3
「俺さ、特に理由はないけどこの人のこと好きだ!って思うことがあって」
「…ふぅん」
「学校の先生とか、よく行くコンビニの店員さんとか、なんかすげえ好きって思ったら、案の定良い人だったってことが多いんだ」
「へー、そんなに誰でも彼でも好きになるんや」
「ちげえよ、ほんまに極小数の人だけ。でな、瑞垣のことも、はじめからなんか好きじゃなって思ったんだ。そしたらやっぱり、おまえは良いやつじゃったから、直感を信じて良かったし、一緒に試合を作れたのが瑞垣で良かったって思っとる」
「はいはい、いちいち言い回しが暑苦しいやつやな、おまえさんは」
そんな好きならいっそいらないと言えない自分に嫌気がさす
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バチェロレッテ シーズン1を見て号泣する海音寺を見て好きだなあと思う瑞垣
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海音寺に何かを食べさせるのが趣味なので、無言でポッキーを差し出す瑞垣と、とりあえず口にくわえる海音寺
もぐもぐと咀嚼しているところを見るのも好きだし、あーんって素直にするのも好きなのは内緒
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酔っ払う度に瑞垣からちょっかいを出されセックスをする関係の瑞海。
(こいつ、こういうことしてくるクセに俺に告白してこないんだよなぁ。むかつくから俺からは告白してやらない。それに、こんなことしとる間にも女の子と付き合っては別れを繰り返しとるし。もしかしたら、一生言ってこないのかもな…なんて)
そこまで考えて、いっそアクションを起こしてやろうかと思う海音寺。
事を終えたあと
「瑞垣って、俺のこと好きなん?」
「はぁ!?」
何か言いだしそうなのを遮り
「もしそうなら、ちゃんと付き合った方がええと思っとる」
「え…」
「でも好きじゃないなら、もう瑞垣とこういうことは二度としない。今までになったこともないけど、普通の友達になろう」
「普通の友達って?」
「俺たちって、いろんな関係になってきたよな。最初は敵。まぁ、ライバルみたいなもんかな。それから共犯者になって、付き合っとるんかよくわからん微妙な時期が続いて、いまは…セフレ?」
「なんで、どんどん下がっていくんだよ。敵から共犯者でぐんと親密度が上がっとるのに、セフレからの友達は一気に下がっとる」
「そうか?」
「世の中に関係性ってたくさんあるけど、おまえにとってどれくらい特別なの?恋人って」
「んー…一番かな」
「え、一番?」
「恋人と夫婦は俺にとって一番特別じゃな。友達も、共犯者も、ライバルも、セフレも、一人とは限らんじゃろ?でも、恋人も夫婦も、この世に一人しかおらんから」
「……じゃあ、なる」
「え?」
「おまえの恋人になる」
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怪盗俊二×警察一希
衣装は片目を覆う仮面と良さげなマント、帽子も欲しい
一希ちゃんのハートも貞操も奪っていく俊二(笑うところ)
何度か体の関係を重ねて一希にはまっていく
「ええなあ、ほんまに良い。欲しいなあ…」
譫言のように呟くと、涙目になりながら「おまえが盗むのを辞めたらなってやる」って言われてただ黙って微笑む
電車に乗ってるとき痴漢(男)に遭う一希
うわ、こういうとき声が出ないもんなんだ、怖いどうしよう、それに周りにバレたら恥ずかしい…と思っていたら「おっさん、そんなことして大丈夫っすか?」って横から声をかけられる
ぱっと声のした方向を見ると、スマホで動画を撮っている若い男がいた
痴漢がえ、いや、何撮って、とかたじろいでる内に一希の腕を引いて離してくれる
助けてくれてありがとうって言いたかったけど、周りの人にバレて見られている恥ずかしさが勝って(しかも自分が警察だし…)って顔を上げられずにいたら「ごめんな」って声をかけられる(他の助け方もあったろうけど、ごめんねって意味で)
「え…」
「この子、俺の連れやしちょっかい出さんといてくれますぅ?」
おじさんにそう声をかけたかと思うと肩を抱かれ、そのまま他の車両へ連れて行かれる
「おれ、俺が対処せんと、あいつ痴漢なのに」
「あー、解決にはならんやろうけどとりあえず動画もあるし、あいつの財布も一応ここに」
「………えっ」
「ま、とりあえず降りようや。話しづらいやろ、ここじゃ」
電車が止まったと思うとグイッと引かれて降りる予定のなかった駅で降りる。そこでようやく顔を見て、えっもしかしてと気づく
「おまえ…」
「あー、バレた?」
「ば、バレたって…!」
バツの悪そうな顔をしている俊二に、衝撃で恥ずかしさも吹っ飛ぶけど言葉が出ない
「なんでっ、ここに…なん…おまえ、つけてきたんか…!?」
「人聞きが悪いな、たまたま…ではないけど、別にいつもじゃ…でもそのおかげで痴漢から助かったんやん?」
「そ、れは…そうじゃな、ありがとう…あっ!財布スったじゃろ!」
「あ、そうやった。身分証入っとるかなって…お、ビンゴ〜」
「ビンゴじゃない…!」
「この財布は、後でおまえが届けるなり何なりしといてや。痴漢されたときにあの人が落としたのを拾いましたーって」
「そ、そんな無茶な…」
「はは…つか、さ。素顔まで見せたんですけど、ご感想は?」
「おまえが隠しとったの、片目だけじゃもん。…ま、かっこいいとは思うぞ」
「えー?それだけ?一希ちゃん、割とおれの顔好きやと思っとったんやけどなあ」
ニヤニヤしながら話され、むっとする
「もう何も隠しとらん。だから、おれのものになってくれん?」
「っ、おまえの名前すら知らん!それに、おまえが怪盗を辞めたらって、そう言ったじゃろ!?」
「辞めるよ。つか、辞めた」
「えっ…い、いつの間に」
「おまえを助けたときに。それから、名前は瑞垣俊二」
むっとした顔のままじとーっと見つめられる
「…なんやねん、その顔」
「信用できん」
「ふぅん。じゃあ、はい」
と言って自分の免許証を渡す
「そこ、写真も名前も住所も生年月日も乗っとるやろ」
「…これ、偽造じゃないよな?」
「あほ。おまえに見せるのにそんなもん渡すか」
「信用が…」
「それはおれが悪いけど。信じてくれとしか言えれんな」
「…おれと同い年なんだ」
「ああ、うん。そっか、おまえは知らんよな」
逆に何でおまえは知ってるんだ…と思いながら住所を確認する
「…今から来る?」
「え…おまえの家に?」
「うん。それなら少しは信用できるんやない?」
一瞬不安が過ぎるが、知りたい気持ちが勝ってついていくことに。
「へえ…ほんまに、ちゃんと住んどる感じじゃな。ここ、ほんまにおまえの部屋か?」
「だから、ほかに誰がおるんや」
「第2の家とか。おまえを養う謎の男とか女とかの」
「誰やねんそいつらは…」
ある程度家の中を見て、他愛のない話もして、そろそろ帰ると扉を開けようとしたら「残念」と後ろから声をかけられる
「このまま帰すわけないやん」
「なっ…」
「素顔も見せた、名前も住所も何もかも晒した、盗みも辞める。だから、約束守ってな」
「それは…そのう…」
目を逸らす一希に今度は俊二がむっとする
「信用できない?」
「うん」
「即答かよ。一希ちゃんって、おれのことどう思ってんの?」
「それはむしろおれが聞きたいんじゃけど。おまえ…を、なんて呼んでええかもわからんけど、なんでおれのこと…どういうつもりで?コレクションの一部とか?」
「え、おれへのイメージ悪すぎん?好きだからに決まっとるやん」
「な、なんで?いつそんなふうに思う要素があったんだよ」
「それを聞かれると困るな。気づいたらそうやった…っていうのも嘘くせえやろうけど、一希ちゃんが必死になってくれた姿とか、そういうとこ見てええなって思ってセックスするようになって」
「あーー、そこはええから、粒立てんで」
「大事なとこやん。それでどんどん、おまえにハマって、欲しくなった。まじでクサイセリフやけど、最後に盗むなら一希ちゃんって決めとったもん」
うふっとわざとらしく笑う俊二に頭を抱える一希
「………瑞垣」
「えー、苗字で呼ぶん?」
「うるさい。…まあ、盗みを辞めたらいいって言ったのは、おれじゃしな…」
「うん、言った」
「信用できん」
「えっ」
「辞めたって信用できん」
「お、おまえなあ…」
「証明してくれるか?これから」
「どうやって証明しろって言うんや」
「うーん、これから一緒に過ごしていけばわかるんじゃねえかな」
「え、じゃあそれって、おれのものになってくれるってこと?」
「うん。ちなみにおまえのものになるって、付き合うってこと、でええんか?」
「もちろん」
「一応聞くけど、おまえ別に既婚者とかじゃないよな?他に何人も彼女だの彼氏だのがおったり、パトロンとかパパとかママとかセフレとかペットという名の人間を飼ってたりしないよな?」
「だからおれへのイメージ悪すぎん?誰もおるわけないやろ!」
「それならええんじゃけど…おれ、普通の恋愛しかしたことないから、ちゃんと付き合うことしかできんからな」
「おれもそれでええって…別に性癖は普通やから…」
「男と付き合うのも初めてじゃし」
「おれも初めてや」
「…ふうん。瑞垣のこと信用できるまで、当分いろいろ聞くし、たぶん調べたりもするけど。大丈夫か?」
「ええって。おまえの職業柄、そうせんといけんのもわかるしな」
「そっか。じゃあ、改めてよろしくお願い、します」
「はい、お願いします。じゃ、部屋戻ろっか」
「え?なんで?」
「晴れてお付き合いして1日目、ようやく素の俺とおまえが出会って、このまま何もせず帰るって、それはあんまりやん」
「ああー…そういう…えっと、ははっ、ええ…改めてってなると、照れるな…」
「仮面も制服もなしでって、初めてやもんな」
「…よ、よろしくお願いします…」
「こちらこそ?」
「あ、なあ…一個、聞いてもええか」
「なに?」
「瑞垣って、怪盗以外で何の仕事しとん」
「おれ?おれは…」
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瑞垣に浮気(と海音寺は思っている)をされるたび、「瑞垣の浮気性!別れる!」ってヒステリックを起こす海音寺と、自分のせいだけどすぐ癇癪を起こす海音寺にうんざりする瑞垣
そもそも海音寺がちょっとしたことですぐ別れるって言い出すようになったのは瑞垣のせいなので、海音寺も相当疲弊している
女の子と仲良いのもだけど、やっぱり門脇、原田、永倉にちょっかいを出される(瑞垣は出してるつもない)と余計に腹が立つ
「今日こそは、絶対別れるって思っとったのに…」
「だから、海音寺には俺しか無理やって」
「おまえの俺に対する執着って何なんじゃ…」
一瞬考えて
「…さあ。タイプだからやない?」
ちょっと笑いながら答えてみる
それを聞いた海音寺はわなわなと震えてる
「嘘つき」
「えっ」
「おまえのタイプぐらい知っとる!それで誤魔化せるとでも思ったんかよ。なんで、こんなときまでテキトーなこと言うんじゃ!」
「いや違」
そしてまたキレられる
で、仲直りして安定した関係が一年続いたところで瑞垣から「秀吾がうるせえからタバコ吸うの辞めた」って言われて、自分が何回言っても聞かなかったのに???ってボロボロ泣き出して静かに「別れる……」って海音寺が言い出して、ぎょっとする瑞垣
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「さよな〜らだ〜けでは〜寂し〜すぎ〜るから〜♪」ってそこそこの声量で歌いながら部屋の掃除をしてる海音寺を見て可愛いなあと思う瑞垣
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「瑞垣って、好きなものは独り占めしたいタイプ?」
「そうやな。人に言おうとは思わん」
特に秀吾には、と心の中で付け加える
「そっかあ。俺、瑞垣の好きなもの知りてえけどなあ」
んーと悩んでから
「共有しとるやん、おまえには」
「…えっいつ?」
「ずっと」
「ずっと…?あ、美人の泣き顔が好きっていうのとパンにマヨネーズかけるってやつか?」
「それもそうやけど、ちがうな」
「じゃあ、原田と永倉がお気に入りってこととか?」
「はあ?何言うてんねん、あんなやつらのどこを気に入るっつーんだよ。ぜんっぜん可愛くねえし」
「いや気に入っとるじゃろ…つか、一応俺の後輩じゃからな。えーとあとは、レッチェの唐揚げが美味しいってこととか」
「唐揚げは好きやけど、ちがいますぅ」
「他に何かあったっけ…俺が知っとる瑞垣の好きなものじゃろ?」
「そう。おまえにしか言っとらんやつ」
「ええー?そんなのあるかあ…?」
「海音寺だって、ほかの誰にも言っとらんけど俺にだけ言っとるのがあるやろ」
「俺も?うーん…瑞垣にしか話しとらんことっていっぱいあるしなー…」
それを聞くなりがばっと海音寺の肩を組んで
「一希ちゃん、おれのこと大好きやもんなー」
「そうじゃけど、なんだよ急に」
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与えるのは得意なくせに与えられるのは苦手な瑞垣が愛しいと思う海音寺
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「瑞垣は、俺と瑞垣さえ良ければいいっていう考え方ができんから、しんどいんじゃろうな」
「…それはおまえもなんじゃねえの?」
「さあ、どうじゃろうか」
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瑞垣の自己肯定感の低さに気づく海音寺
瑞垣から感じていた自信はチームに対する誇りであって、瑞垣自身のことではなかった
瑞垣は俺の前では門脇のことを悪くしか言わないけど、それでも信じていたんだろう
「門脇がおらんくなった瑞垣は、何を信じるんじゃろう?」
「野球の神様とか?」
「おまえ、そんなもん信じとったんか」
「まあな、実際会ったし」
「まじ!?ど、どんな感じ?どこで会ったん?」
「まじまじ。グラウンドで、泣きそうになりながら握手求めてきた」
「ええ…?おばあちゃんだけじゃなくて、神様のことまで泣かせたんか」
「あー、そうそう」
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「マイバラード」なら機嫌よく歌ってくれる海音寺
「心燃える歌が 歌が きっと君のもとへ」の部分がお気に入りなんだなーと思ってる瑞垣(たまにハモってくれる)
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「俺の海音寺はそんなこと言わない」
「おまえの中の海音寺像、もうちょいどうにかならんか?」
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カラオケには滅多に行ってくれないし、鼻歌も懐歌とか卒業ソングばっかり歌う海音寺だけど、そこに対して何か言ったらもう歌ってくれなさそうだから何も言わずただ聴いてる瑞垣
たまに「パフ」とか「グリーングリーン」みたいな重い歌詞の童謡について議論に花を咲かせる
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横手メン(瑞垣、門脇、池辺、唐木あたり)と海音寺の飲み会
みんなベロベロに酔っ払ってるのと、海音寺と交流するのが珍しいから池辺たちから海音寺へ質問攻め中
海音寺って嫌いなもんとか、嫌いな人とかいんの?→あんまないかな→じゃあ何が好き?→うーん?→〇〇は?→好き→××は?→好き→じゃあ俺は〜?門脇は〜?→すきすき〜って話をしていく
「じゃあ、おミズは?」
「なっ…おい」
「だいすき」
ニコニコ笑顔で答える海音寺
「へぇ!大好きか〜」
「いちばん、すき」
「…んん〜?」
首を傾げたりニヤニヤしたりするみんなと、小さく目を見開く瑞垣
「おミズよかったなあ、大好きやって」
「あー…」
適当にあしらいながら、瑞垣は小さな声で「あほやなぁ…」とつぶやく
その独り言が聞こえているのは門脇だけ
「海音寺。おまえ、酔いすぎや」
「大丈夫、酔っとらん」
「嘘つけ…明日ぜったい、公開告白したこと後悔するぞ」
「こくはく?」
告白なんてした気すらない海音寺と、ため息をつく瑞垣
「海音寺、酔って記憶なくすタイプじゃないやん」
「へー、そうなんや。そんなことまで、把握しとるんや〜」
「うるっさい」
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海音寺にジブリソングを歌ってほしいから、片っ端からジブリを見せる瑞垣
ジブリパークにも一緒に行く
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「俺、瑞垣のこと好きになってから、怖いものがちょっと減った。それ以上に怖いものが増えた」
「なんやそれ。なぞなぞか?」
いつか必ず失うことが怖い。その日がいつか必ずくることが何よりも怖い。毎日、毎日過ごす度、そこに近づいていっているのが怖い。できることなら、一生、死んでも、失いたくない。
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浮気を疑って走って海音寺の所まで行ったら全然浮気現場じゃなくて、汗だくになってる瑞垣に「なにやってんの?」って声をかける海音寺