瑞垣くんと海音寺くんと

「瑞垣って、野球が好きなおれが好きなんだろ?」

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海音寺と展西
「いつになるかは分からんけど…おれが野球を辞める日は、多分展西のことを思い出すよ。おまえはどんな気持ちだったんだろうって」

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「びっくりして標準語になったじゃろうが」

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「俺たちさ、ちゃんと両思いになるまでも長かったし、その後は特に大きな問題もなく順風満帆に付き合ってきたと思っとったけど、本当はもっと話さんといけんことがいっぱいあったんじゃな…」
「でも、これはおれとおまえの問題じゃない。おまえがどういうふうに感じて考えるか、やろ」
「そうじゃけど、相手に強く心が乱される人がおるって、やっぱり悲しいっていうか、寂しくないか?もう、おれだけの問題じゃなかったんだよ」

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「瑞垣は、おれと話したくない?門脇のことも、展西のことも」

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海音寺
「いつまで何にも言わずに察し続けなきゃならないんだ」

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瑞垣
「拒みはしないけど受け入れもしないって、面白い」

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「おれ、いつかこうなる気がしてた」
「ふーん。じゃ、おまえの思い通りやな」
「ちがう。瑞垣の、思い通りじゃろ」
「んー…いや、おれはきっと、おまえの掌で踊らされとるだけなんや」
「それってどういう…」
「何でもかんでも教えてもらおうとするな。おれは、おまえのおかんか?一から十まで言わんとわからんなんて、ゆとりすぎ」
「そういえば、ゆとり世代なんてもうすっかり聞かんよな」
「おまえはおれの話を聞かんよな」
「はは、すまんすまん…だって、瑞垣が意味深な言い方をするから。つい聞き返してしまうんじゃ」
「はぁ…だからな、ぜんぷおまえの望んだタイミングで運ばれとるってことだよ。ほら、今だって結局、おまえの思い通りに話してしもうたやろ」
「それはつまり、瑞垣がおれに甘いってことか?」
「ちがう、全然、ちがう」
「あまちゃん」
「それは!意味が!全然ちがうやろ!!」
「あはは、ごめん、怒んなって」
「おまえと話すと無駄に疲れるわ…」
「でも好きなくせに」
「調子に乗るなよ」
「おれもすき」
「………調子に乗らせるなよ…」

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「…お」
「お?」
「おれに盛るな……」
「何それ」
「へ?」
「何かエロ!」
「な、なにがだよ!」

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「海音寺って、俺のことそんなに好きじゃないよな」
「好きだよ。他のやつよりはな」

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同棲っていいよなという話から
「えー…そうか?一緒に住んだら余計な喧嘩をすることも多いぞ、掃除とか洗濯とかちょっとした生活態度のことで…そもそも生まれてからずっと一緒におる家族とすら喧嘩するんじゃし。タオルひとつとっても、洗う頻度とか畳み方だって全然違ったりするしさあ…だから、隣に住むとか、良くないか?そうしたらいつでも会えるし、風呂とかトイレとかご飯とか自分の好きなタイミングでいけるし。ていうかそもそも、結婚したらなんで一緒に住む必要があるんだ?なんで好きになったら一緒に住みたくなるんだよ」
「斜め上の理論を展開されている…っつーか、必要性なんか知るかよ…!知るかよ!!」
(瑞垣が珍しく取り乱してる…)
「その悩みはな、お互い好き同士だからって何で付き合うんだ?何で結婚するんだ?って類のと一緒なんだよ、明確な理由なんてねえの!強いて言うなら安心材料が一つ増えるだけや!」
「お隣さん、結構画期的じゃと思うけどなあ…お互い鍵渡しあっとけばいいし…そりゃ同じ家の中で何個もトイレとか風呂があって、それぞれ自分専用で使えれば問題も少しは減るじゃろうけど、現実的じゃないじゃろ?」
「それはおまえが超個人主義だからじゃねえか…?」
「瑞垣は違うんか」
「いや、ちょっとええと思ったわ、お隣さん…ドライな関係な気もするけどな」
「やっぱり特別感って大事じゃないか?俺は別におまえと家族になりたいわけじゃねえし」
「えっ……えっ」
「ずっと好きでいて欲しいけど、瑞垣から欲しいのは家族愛じゃないんだよな。俺だけの恋も愛も欲しい。一緒にいていちばん安心できる存在でいたいけど、ちゃんと性欲も感じててほしいっつーか。欲張りかな?夫婦になってもいつまでも仲良しで、お互い枯れるまではセックスレスじゃない人達っておるじゃろ?ああいうのが理想」
「はぁ…つまり、お前は俺のことが大好きってこと?」
「うん、まぁ、それはそうなんじゃけど」
「俺のことが大好きだし愛してるから、いつまでも一緒にいたいと」
「うん……うん?うん…」
「マンネリ防止のために、近所のエッチなお姉さん的な存在になると」
「エッチなお姉さん…???」
「いや、そういうことやろ?毎日一緒に過ごしとる家族とセックスしたいなんて思わんけど、近所のエッチなお姉さんとはしたいやん」
「…そういう人が近所におるってことか?」
「ちっっっげぇよ、おまえのことだよ!!厳密に言うと、隣に住むエッチな恋人やな」
「エッチではあるのか」
「えっちじゃない恋人ってなんだよ」
「おるじゃろ、エッチじゃない恋人も…」
「ふん。ま、少なくとも一希くんはエッチやろ?」
「おい、語弊がある、それは!」
「あーあ、でもおれちょっとショックなんですけど。家族になるつもりないって。俺だって別に、おまえと香夏とするようなやりとりしたいわけじゃねえけどさぁ」
「ちなみにおれ、結婚って制度には賛成しとるぞ。便利カードだよな」
「…じゃあもし、日本でおれと出来たらしとった?結婚」
「うん。瑞垣が良いなら、しとった」

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「…海音寺、おまえ何考えるとかわからんって言われたことないか」
「ある、1度だけ。…あ、2度か。おれが考えとること、わからんのじゃろ?」
「うん。ただ、おれはそれでええと思っとる」
「なんで?」
「わからんからわかりたいって、ずっと思ってたいやろ?おまえだって、おれの全部がわかってしまったら、きっと飽きるよ」
「そんなこと……そうなんかな」
「さぁな。それだって、わからん。だけど、おまえがおれと話して面白いって思うのは、自分とちがった考えを持ってて、しかもそれが予想のつかないものだから、やろ。だから、瑞垣なら何て言うだろうって考えるようになった。それが、何て言うか予想がつくようになれば、話したいと思わんくなるさ。夫婦仲が冷める原因の一つがそれやないか?あいつならこう言うかな?がだんだん、あいつならこう言うにちがいない、あいつならこう言うだろうから話すのも無駄だ…なんてな」
「じゃあ、仲の良い夫婦は?何十年も一緒に居れば、考え方のクセとか、わかるようになるじゃろ。それこそ仲が良ければ、会話だって多いじゃろうし」
「さぁなー、適度な距離感とか干渉しすぎないのが大事とか言うけど…」
「あいつならこう言うだろう、の、言う内容というか…その考えが好きかどうか、なんかな。その人の価値観が愛せるかどうか」
「はぁ〜、寒いこと言うやん?」
「うるせ」
「でも、一希ちゃんにしては珍しく、良いこと言ったんやない」
「珍しくて悪かったな…だっておれ、瑞垣の考え方、けっこう好きなんだ」
「は?」
「突拍子もないことを言うから面白い、だけじゃねえよ。その突拍子もない考えが、おれにとっては大事なんだ。同意できるかどうかは置いといてさ。それに、そういう考えにある基はなんなのかって考えたら、余計」
「基ってなんや」
「ないしょ。わからん方が面白いじゃろ?」
「そこは教えろよ」
「まぁ、何にしてもな、おれが瑞垣のことが好きだっていうベースがあるから、全部の言動に。とりあえずそれだけ知っとってくれたらええよ」
「…そうですか…」
「…瑞垣は、わかりやすいな」

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「俺に対して瑞垣より根気よくて、瑞垣よりしつこくて、瑞垣より重いやつなんてそうおらんじゃろ?」
「…おまえは俺をそういうふうに思ってたんか…」

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「瑞垣の奇妙な性癖は、門脇によって生み出されたんじゃな…」
「おまえ…人のトラウマを性癖呼ばわりするなよ…」

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高校一年生の頃。瑞垣と、門脇の間に流れる空気感が、少し柔らかなものになったことには、何となく気づいていた。
ただ、幼い頃から抱えてきたトラウマ…もはや長年培った習慣のような…ヒナの刷り込みのようなものは、簡単にぬぐい去れるものではないらしい。
瑞垣の、「門脇に奪われるかもしれない」という、一種の強迫観念は、確実に彼の中に存在していた。何でか瑞垣には、門脇が興味を持って、本気になりさえすれば、すべてはいとも簡単に門脇の物になり得ると、そう信じてやまない節があるのだ。
…原田も永倉も、そうはならなかったじゃないか。原田に至っては、門脇という存在を、バッターを、もっと意識する必要があると言ったぐらいじゃぞ。
と言ったところで、「それはアイツらが例外だから」とか、「秀吾もアイツら自身を欲しがったわけじゃない」とか、言い出すのだろうかと、そう考えると言葉にすることははばかられた。
チームメイトも、友達も、同級生も、女の子達も、先生も、ご近所さんも、見知らぬ人達も、もしかすると家族だって、「門脇秀吾はすごい」と思っていて、どこかで一番近くにいる瑞垣と、比較していたのかもしれない。直接言葉や態度に出されたこともあるだろう。中には「皆は門脇がすごいって言うけど、瑞垣のすごさもわかってる」なんて知ったような口調で近づく人もいたりして。すべては想像の域を出ないが、瑞垣の恐怖をうっすらと感じる度に、これまで過ごしてきた彼の長い時間に思いを馳せてしまうのだ。もしその頃に出会っていたら、何と声をかけていたのだろうと、妄想までしてしまう。
だから俺は、門脇きっかけで瑞垣の感情が揺さぶられると、とびきり甘やかすことにしている。むしろ普段はそう優しくないと自覚もある分、思いつく限りの言葉を並べる。

「俺のことを好きなのはおまえだけじゃし、俺に触れたいと思うのも、俺に触れられて嬉しいと思うのも、おまえだけじゃ。ていうか、瑞垣だけでいいんだ。だって俺は、そう思ってくれるのが瑞垣で、嬉しいから」
「瑞垣を好きで良かったって、瑞垣が俺のことを好きでよかったって、ほんまに思う。俺の恋人が瑞垣で良かった」

とまぁ、こういった具合に伝えると、瑞垣は少し嬉しそうな表情になる。わかりやすくニヤついたりデレたりはしてこないのだが、目を少し細めて、ほんのりと口角を上げる。こちらとしても本心なので、喜んでもらえるに越したことはない。こうして俺は、遠回しに「門脇に興味はありませんよ」と伝えている。門脇も俺に興味は無いだろう。ここで重要なのは、門脇が何を考えているか、ではない。

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「おまえずっとうっすら、俺に対して失礼やねん」

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「瑞垣は、面倒見良いっつーか、心配性っつーか………過保護?」
「いや、それはお前にだけやし」
「えっ、なんで?」
「……海音寺がアホでアホでアホすぎるからや」

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「だって、海音寺のこと構いたくてしょーがないって感じやったし」

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「別に、おまえが誰と付き合ってもええけど。おまえは、結局おれのところに戻ってくるよ。
おまえみたいにクセのあるやつ、おれしか無理や」
「それ瑞垣が言うのか…」
「海音寺の相手ができるのは、絶対におれだけ」
………そうかもしれない、と思ったし、だからこそ、腹が立った。
「ほんまに、むかつく」
「へぇ」
「瑞垣なんかきらいだ」
「おれは好き」
「………おれも、おまえの言う通りじゃと思う。瑞垣ぐらいクセのあるやつじゃないと、な」

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「おまえは、口を開けば秀吾秀吾って、うるせえやつやな」
「そうか?」
「そうですぅ。そんなに秀吾の話がしたいなら、本人とすればええ」
「おれは門脇と話したいんじゃなくて、瑞垣と門脇のことを話したいんだ」
「なんで」
「なんでって言われると、困るんじゃけど」

「おまえと話したくて」
ポカンとする海音寺
電話を切ったあとすぐ瑞垣へ電話をする
「おかけになった番号は〜」
「おれ、まえ瑞垣と話したかったって言ったじゃろ」
「最後まで聞けよ。何年前の話しとんや」
「今年の話だよ。あれ、予想外の人に言われたらびっくりするな。ごめんな、おれ、全然知らんかった」
「で?女の子に言われたって自慢話なら受け付けておりませんが。それともまさか、かなに言われたんやなかろうな」
「門脇に言われた」
「秀吾?」
「うん。すげえ、びっくりした。瑞垣から、おれが心配しとるって聞いてから、話したかったんだって」
「はあ…」
「結局、原田の話になったんじゃけどな。そんなに原田のことが気になるなら、原田と話せばええのにって思って、瑞垣はこんな気持ちだったんかって」
「はあ」
「でもおれは、瑞垣と話したいし。門脇は、おれと話したいって言うし。なんか、上手くいかんなあと思うて」
「おい、そこにおれを入れるな。おとこさんにんで何言うとんねん」
「厳密に言うと四人じゃな」

「また電話するって言うとった」
「ほーん」
「じゃけえ、今度3人で話そう」
「はっ?」
「そしたらみんな話したい人と話せるじゃろ」
「おれはどっちとも話したくなんかねえよ」
「またまた、愉快なことを言いなさる」

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隣の部屋に住んでるやつ
なんかもう毎日海音寺の部屋に帰ってくる瑞垣に今日も「ただいまぁ」って抱きつかれる(付き合ってない)
「瑞垣って、絶対おれのとこに帰ってくんの?」
酔ってるので「うん」と素直に答える瑞垣
「そっか。じゃあ、おれも瑞垣のところに帰るようにする」

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腹が立つぐらいいつも好きだ

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よく考えたら、身の回りのものが瑞垣からもらったり、瑞垣に選んでもらったりしたものばかりになってる海音寺

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「俺はおまえがいればいい」
「瑞垣って…たまに、すげえこと言うよな…」
「たまにはな」
「え?」
「釣った魚には餌を与えろよってアピールしてんの」
「なるほど、?」

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瑞垣
「浮気と不倫はドラマだけで十分なんだよ!」

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「古事記読んだことあるか。
あのイザナギとイザナミですら、セックスをする時の過程を大切にしとる、むしろそれが正しい手順なんやって。
女からリードするんじゃなくて、男がリードしろって」

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「ありがとう。落ちてきてくれて、嬉しい」

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「ほら、やっぱり。海音寺は俺を選ぶしかない」

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「好きなタイプは案外ガキな人で、嫌いなタイプはカラオケで踊る人です」
「もうほんとにやめて!」

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「瑞垣に甘えてばっかじゃだめだって、わかっとるんじゃけどな」
「ふーん。じゃ、おれやなくて他のやつに甘えんの?」
「え…」
「甘えてばっかっていうけど、おれは全然そんなふうに思ったことないし、そうやって我慢させたり、他の誰かのところに行かれたりするよりよっぽどマシや」

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「へえ。本人がそう思っとるなら、それでも十分かな」
「またそういう、含みのあることを言う。おまえの悪いクセじゃぞ」
「全部わかったらつまらんやろ?一希くんに飽きられてポイされたら堪らんもん、ボク死んじゃう」
「飽きません、ポイしません、死にません。全部わかるなんてこと、あるわけない」

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「もうええやん、秀吾のことなんか」
「門脇のことが気になっとるというか、
瑞垣のことが気になっとる」
「おれ?」
「ほら、門脇になにかあると、おまえにも影響が出るじゃろ。そうなると、おれにも影響がでる
おまえたち幼馴染みはセットっていうか、そういうところ影響しあっとるなと」
「…ちなみにやけど、おまえに何かあるとおれに影響が及ぶって考えはあるか?」
「えっ?ああ…あんまり考えたことなかったな」
「おれたちって、付き合っとるんやないっけ」
「うん。…あ、そうか、だから瑞垣にも影響出るってことか」
「おまえってやつは…」
「いや、はは…正直、実感なくてな。付き合う前と今とで変わったことなんて、ほとんどないじゃろ。強いて言うなら、キスしたりエッチしたりするようになったぐらいか?それ以外は…連絡とる頻度も話す内容も、会う回数もそんなに変わっとらんなって。じゃから、好かれとる気があんませんっつーか」

「もうこの際じゃから、瑞垣がもっとキレそうなこと言ってええか」
「瑞垣より展西の方が、おれのこと特別に大事に思ってくれとるんじゃねえかなって、思っとった」

「香夏のことだって、ありがたいと思うとるし。おまえと話した日は、夢を見ずに済んだ。
つーか、付き合っとる時点でおまえのこと特別に思っとるって、わかるやろ」
「だって、そんなの、知らねえもん。瑞垣がそんなふうに考えとったなんて、一度も聞いたことない。なかなか会えんのに、態度で察するなんて無理じゃろう」
うるせー、正論言ってくるんじゃねえ。ひとりごちる。

「海音寺って、自己評価低いって言われん?」
「それ、中学の頃の監督に言われたことある。おれはそんなことないと思うんじゃけどな」
「あー、あのやたらおまえのこと信頼しとった監督な」
「そうでもねえよ」
「嫌味や。海音寺もあの監督のこと、苦手って言うとったけど、おれも嫌い」
「まあ、おれの話聞いて好きになることはないじゃろうな」
「ちがう。あの監督も展西ってやつも、おまえのこと特別みたいやから」
「はあ?」
「話したこともねえし、展西にいたっては会ったこともないのに、考えるだけでむかつく。磯部くんだっておまえと、やけに仲良いみたいやし?秀吾なんか、原田のことだけ考えてりゃいいものを、おまえと遠いうっすい繋がりがあるって、初めて会ってそんなことがわかるぐらい語ったし気が合ったって、今更余計なこと話してくるし。おまえもやたら秀吾のこと話題にしてくるし、まあおれへの嫌がらせなら二人ともカンペキやな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、情報過多で追いつかんから…とりあえず、嫌がらせしたつもりはないぞ。…瑞垣のことが知りたくて、つい」
「ふぅん」
「えっと…瑞垣と、門脇は」
「あ?」
「怒るなよ。二人は、ちょっと仲良くなったんかなって、思うとったんじゃ。最初の頃は、門脇のこと嫌いな感じがあったけど、それだけじゃなくて…ほんまはむしろお互いに、大事に思うとるんじゃろうなって…
でも、瑞垣は…やっぱり、門脇が、トラウマなのか?さっきから、門脇に過剰反応しとる気がする」
「もはやおまえがトラウマやわ…」
「えっなんで?」
秀吾や野球自身に散々悩まされて振り回されていたのが、やっとのことで少しずつ落ち着いてきたというのに、そうなった理由の一つに海音寺がいるのに、今度はその海音寺に、こんなにも悩まされている。
「一希ちゃんの浮気者」
「ど、どこが」
「もっと可愛くヤキモチ妬いたって言えれんの?そんな遠回しに攻撃するんやなくて、素直に怒ってくれた方がマシや。ほかのやつに浮気する前に、おれに必死になれよ」
「おまえにだけは言われとうない…!瑞垣だって、ヤキモチ妬いとったくせに、全然…!いっつも、おれから連絡しとるし、おれが連絡せんくなったら、どうせ自然消滅するに決まっとる」
「とことん信用がないのはわかったわ」

「あんまり秀吾だの磯部だの、ほかのやつの話ばっかりされると、おれの中では浮気やから」
「縛りがキツすぎる‎…し、散々してきた気がする…というかおまえだって、原田と永倉のこと話してくるじゃねえか」
「頻度がちがうやろうが、頻度が。」

「瑞垣にちゃんと好きって言われたこともないし、付き合おうって話だってしとらんじゃろ。なんかそういうのをダサイって、古くて子供っぽいって言う人もおるみたいじゃけど、おれはちゃんと言葉にしてくれんと不安じゃし、おれもちゃんと言葉にしたい。好きな人にいつでも好きだって言っていい関係になりたい。瑞垣とはそれができんから、嫌だ」
「嫌って言うなよ。もうおれとは一緒にいたくないってこと?」
「そんなわけないじゃろ、あほ!」

「好きって言ったら、信じんの?」
「…信じられるって、思っとった。でもそんなふうに聞かれたら、もう無理じゃろうな」
「なんやねん、またおれのせいか?」
「言えばいいって思うとるような言い方じゃった」
「めんどくせえな」

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「一希ちゃん、可愛いかっこしてどうしたん?誰とデート?」
後ろから抱きしめて
「可愛い…?昨日言ったじゃろ、友達と会うって」
「あー、あれな。てっきり冗談かと」
「なんでだよ」

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ただ蝉は鳴くばかり

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「なんで瑞垣のこと好きなの?」
「なんで?さあ…好きにならずにおれんかったんじゃないかな」

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体調が悪く、薬を飲まそうとするとイヤイヤする海音寺を見て赤ちゃんみたいだなあと思う瑞垣

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「洋楽な、短い間にしゃべらんといけんこと多すぎやろ。詰め込みすぎや」
「歌うって言ってくれ」

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「かわいいからセックスしよう」
「どうかしとる」

「あーーーかわいい、セックスしたい」
「ばっっかじゃねえの」

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「かずきちゃん、わかりやすくおれのこと好きやから」

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