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異文化の食卓

(※この記事は、2020年に別の場所で
投稿したものを再編集したものです。)


ピカピカいわし。

いつも行く産直で、
たまに魚の対面販売をしていて、
ピカピカのイワシと目が合った。

小さめだけど、これ全部で200円。

近くにいたおばちゃんと

「これで、何作るの〜?やっぱり佃煮?」

なんて他愛無い会話を楽しんで。


小さめイワシはいつも圧力鍋で
佃煮にすることが多くて、そのつもりだった。

家に帰ってイワシレシピを見ていたら、

"つみれ"

に目が止まった。しかし…
捌くのが下手すぎて、
これで身が残るか…?と思いながら作業。

つみれって、後で全部混ぜちゃうから、
原型を留める必要がないのは、
意外に気楽だったりする。

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つみれの思い出…

小学生の頃、

友達の家に泊まりに行った時の
夕飯のメニューが、つみれ汁だった。

てか。

そんな事を細かく覚えている自分に、
ちょっとビックリしているんだけど。

つみれを作りながら恐ろしいくらい、
記憶が蘇ってきた。

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友達のお母さん、
病弱なんだけど結構毒舌という
変わったキャラ。

友達は、双子ちゃんで、4人兄姉という
賑やかな家庭でした。

お母さんが身体が弱いからなんだろうね。

家族みんなが、お母さんをいたわり、
お手伝いもとても自然にしていた。
みんなが手慣れた様子で分担もきっちりで。

"自分がしたい時だけ手伝ってあげる"

って言うスタンスだった私。

軽くカルチャーショックみたいなものを
を受けていた私にも、ちゃんと役割を
与えてくれた。皆んなのお箸を並べた記憶。


"イワシのつみれ"

という小学生の私にとって未知の食べ物…
骨も皮も尻尾も全てミキサーにかけるという未知の料理法で…
(ミキサーは、野菜や果物のジュースにしか
使わないと信じていた)

お手伝いしながら、

"魚の骨ごと食べるなんて、無理かも…"

とか密かに思っていた。


出来上がったつみれ汁は、
それは美味しくて、
魚の小骨を少しだけ、克服した。

こんな食べ物、食べ方、料理法、
器具の使い方、
内心、ずっと驚いていた。

でも、一番ビックリしたのは、

家族みんなで食卓を囲んで、

「美味しい〜」

「今日の魚は前より脂乗ってないね」

などと、
料理について色々と意見や感想を言いながら
家族団欒していた風景だ。

思ったこと、感想を澱みなく言い合える
家族を初めて目の当たりにして、
私の目は、きっと丸くなっていたと思う。

無口な兄と、問題有りの父、
殺伐とした食卓しか知らない私は、
友人宅のホームドラマみたいな食卓風景に、
心底驚いた。


他人の食卓って、【異文化の宝庫】だ。


あれから、35年位が過ぎて、
初めてつみれを作ったのだが、

家族みんなに大大大好評。


旦那さんは酒が入ったせいか
ダシを語りだすし、
美味しい〜温まる〜、
明日の弁当の分ある!?


と予想以上の反響。


あの時、友達の家で体験した異文化とは、
少し違うかもしれないけど、
我が家の食卓にも、我が家なりの文化が
出来ているのかも知れないと、

何だか嬉しく感じた。


家庭を持つって小さな文化を築いていく

ことなのかも知れない。


その友達とは今は交流は無い。
私につみれを振る舞った事なんてきっと
覚えてないだろうなぁ〜と、思いながら
今日もウォーキングで友達の家の前を
通り過ぎた。

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