ねえみんな大好きだよ
津野米咲が死んだ。
昼過ぎに起きてベッドから手を伸ばす。
iPhoneを開いて見た第一報はそれだった。
気づいたらぼくは、
フジファブリックを聴いていた。
違う。いまはこれじゃなかったな。
「バウムクーヘン」を数分間聴きながら、一通りのニュースを見て状況を把握する。
そしてミュージックアプリを開いた。
赤い公園のアルバム「THE PARK」の8曲目
「夜の公園」をApple Musicから選び直した。
公園ばっかりだ。
ちょうど昼夜逆転の生活をしてたから、すでに午後3時を過ぎていた。窓から差し込む光が嘘みたいに明るい気がした。
2020年10月18日だった。
この日、赤い公園のギタリスト津野米咲が29歳で亡くなったのだ。
赤い公園というバンドは、ボーカルに石野理子ちゃんが加わって、新体制になってからものすごく良くなっていた。
分かりやすく言うと去年からめちゃくちゃハマっていたのだ。
ものすごい虚無感があった。
こういう時にみんな、換気扇の下でタバコを吸ったりするんだろうな。と、タバコを全く吸えないぼくは思ったりした。
赤い公園の「THE PARK」というアルバムは間違いなく名盤だった。
ぼくには「CHRONICLE」という名盤を作ってから死んだフジファブリック志村正彦の影がちらついてしかたなかったのだ。
津野米咲も志村正彦も享年29歳だった。
先日ぼくはテレビを見ていた。
まあ、いつも見てるんだけど。
ゲストにプレゼントを選んで、誰が1番良かったか対決する企画。よく見るバラエティだ。
プレゼントの候補として箸を選ぶ。
「心と心の架け橋」で「2つで1つ」だから、
ぼくはよく人に箸をプレゼントするんです。
そんな話を聞いて、なんかいいなと思った。
これはEXITの兼近大樹くんが言っていた。
ちなみに兼近大樹くんも29歳。
チャラくてかっこいい箸の話だった。
いいなと思ったけど、ぼくには箸をあげたくなる人が想像つかなかった。
プレゼントはその人にとって必要なものをあげたいなと、なんとなく思っている。
受験勉強を頑張ってたら文房具を。
カードケースを無くしたひとならカードケースをあげるかな。
大切な人ならバッグをあげるかもしれない。
そんな感じだ。
「2つで1つだから」なんて言っていつか箸をあげられる人ができるかな。
そのときは笑っちゃうのかもしれないけど。
自分に必要なものはなんだろう。
プレゼントなんてなんでもめちゃくちゃ嬉しいけど。自分に必要なものなんて分からないものだ。
自分になにが必要か。
それが分かっていたら、
死にたくならなくてすむのだろうか。
それとも
分かった瞬間につまらなくなるのかな。
死にたくなるほどに。
やっぱりいまはそんなの分からないなあ、
なんて考えながら
今も赤い公園とフジファブリックを聴いている。
ぼくにはなんだか、
これが必要なものに思えてきたのだった。