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本好きが集まるバーをはじめた話③ 思い出話&場所決定編

①はこちら。


②はこちらです〜

私の家から一番近いエデンは、横浜の店舗だった。お店の最寄り駅まで電車で30分ほどあれば行けるので気楽に足を運べるところにある。

それにしても、1人でバーに足を運ぶのは大学生の時以来だ。

当時山口大学に通っていた私は、湯田温泉街のとあるホテルでフロントスタッフとして働いていた。チェックインの受付担当だったので、上がりが0時過ぎになることもあり、また、ヒールを履いて髪を固めて愛想を振りまき接客するので疲労もたまる。そんなバイト上がり、そのホテルの支配人が「今日は飲みたい気分だから付き合ってくれないか」と、飲みに連れて行ってくれることがあった。

温泉街だったおかげで、バイト先の近くに飲食店や飲み屋はわりとあるものの、やはり0時から美味しいお酒が飲めるところは限られてくる。それで結局、バーに連れられることが多かった。支配人は私のことをかなり可愛がってくれていて、私も優しくて頼もしい支配人と色々な話をするのが好きだったので、飲みに誘ってくれるのも毎回嬉しかった。
そんなふうに定期的に仕事終わりに開催される飲み会の何度目かに訪ねたバーが支配人お気に入りとなり、それからそこは私たちの行きつけのお店になった。

そのバーは湯田温泉のガストの入った建物の2階の奥にあり、ちょっとひっそりとした佇まいだった。

まだそのお店はあるのだろうか……。
もう気軽に行ける距離ではないので確かめようがないけれど。

そこのバーテンのお兄さんの作るカクテルが、それはそれは美味しくて、そして支配人とお兄さんと私で真夜中にわいわいおしゃべりするのもとっても楽しくて、私もそのバーがお気に入りになった。
通い続けていると色んなことがあるもので、そのバーテンのお兄さんに子どもが産まれた、といういい話を聞くこともあったけれど、支配人が他の店舗に異動になってしまう、という残念な話も聞いた。

そうして支配人が居なくなってしまってから、そのバーには以前よりは行かなくなってしまったのだが、それでもあの時の楽しかった思い出を取り戻すかのように、私は卒業するまでそのバーに通っていた。

私にとってはその思い出のバーが、バーと言う場所のイメージであり、理想でもあった。

だから、そんなふうにお客さんと楽しく過ごせる素敵な空間であることを期待して、エデン横浜のドアを開けた。

私がエデンを訪ねたときは、すでにお客さんが5人ほどいて、その日の一日店長さんと楽しくおしゃべりをしていたけれど、私が入店したのに気づいて笑顔で歓迎してくれた。
ここに来たのははじめてだという話をしたので、プレッシャーにならないようにか、スタッフさんは端の席に通してくれた。

その日はお客さん同士の交流がメインの日だったので、私は隣になった人と話をしたり、スタッフさんとの会話を楽しんだ。
エデンは全く怪しい場所ではなく、むしろどんな人でも歓迎してくれるような優しい場所だということがわかり、私もここで、今日みたいに楽しく一日店長をやってみたい!と思い始めた。

そのことをスタッフさんに打ち明けるととっても喜んでくれて、バーの仕組みのことや、どんな人がどんなイベントをこれまでやっていたかを色々と聞かせてくれた。他のお客さんにも「実はイベントをやりたくて…」と話すと「私もイベントやったことあるよ!」と体験談を話してくれて、話し込んでいるうちに2時間以上経っていたのでびっくり。

思い切ってエデンに行ってみたことで、行く前に抱いていた疑問や不安は払拭されて、「なんだかやれるかも、というか絶対やりたい!」という気持ちを持ち帰ることができた。


そしてその日の夜、私は『1ヶ月後に一日店長をやりたいです!』という旨のメッセージをエデンのオーナーさんに送っていた。


つづく



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