見えない時間を見せるデザイン その2
前回の記事では「期限」および「記憶」の時間の見せ方について述べた。
今回は「所要時間」について考えてみようと思う。
例えば、GoogleMap
GoogleMapでは、出発(到着)時刻or終電を設定すると、距離・運賃・時間を合わせて、ルートをいくつか提案される。
人はなぜ所要時間を知りたいのだろうか
それは以下を知りたいためだ。
- 自分が何時に家を出ればいいか
- そのためには、あと何分で手持ちのタスクを片付ければいいのか
- それが達成できなかったとき、どういう結果になるか
- 達成するために最も安く早く楽で楽しい方法は何か
この、「最も安く早く楽で楽しいその日の最適解」さえ分かれば「所要時間」はそれほど重要ではなくなる。
ユーザーがルートを決める要素
では、私たちはその最適解をどのように決めるだろうか。
以下に簡単にその要素を分解してみた。
「安い」について
交通費が安い
「楽で」について
早く着く / 満員電車に乗らずに済む / 座れる / 歩く距離が空くない / 上り坂が少ない / バリアフリーである / 乗り換えが少ない / 乗り換えがわかりやすい / 定刻通りに来る / 乗り損ねても代替案が多い / 支払い方法が選べる / 支払い方法が明確である / 支払いがすぐできる / 手持ちのタスクが出発前に終わる / 酔わない / 寒くない、暑くない / 乗客のマナーが良い / すでに使った経験がある
「楽しい」について
圏外にならない / 車窓から地上の景色が見られる / 乗り換え駅で欲しいものが買える / 乗り換え駅で寄りたい場所に寄れる / 嫌な思い出のある駅を通らなくて済む / いつもと少し違うルートである
「その日の」について
風邪だ / 二日酔いだ / 雨だ / 寒い / 暑い / くさくさしている / 給料日前だ / 寝坊した / 午前休だ / 季節の花が咲いている / イベントがある
私たちは無意識に高速で計算している
上記のように、簡単に書き出しただけで、GoogleMapの設定項目以外でも、私たちは毎日、無意識にこれだけの要素を加味してルートを決めている。
おそらく私たちの脳内には、それぞれの要素に対する快適指数を計算する仕組みが入っている。でも、そんなの、システムに任せたっていい。こんなに労働人口が減っていく世の中で、あなたが考えるべき有意義なことはもっと他にある。
これからのビッグデータとAIの時代には、さらに個人の趣向をシステム側が記録し、幸せになれるレコメンドを実装できるようにして行きたい。それが更に適切な購買に繋がり、経済もうまく回っていくかもしれない。
そう、桜の季節には、満開の目黒川を車窓から見て、会社に行ったっていいじゃないか。少しぐらい時間がかかったって。
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