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消化管の働き②胃の働きについて
前回は、消化管の働きの概要と口腔の機能について紹介しました。消化管は全体としての働きが非常に重要です。腸だけが良ければよいというわけではなく、腸が良い調子になることは、消化管全体が正常に機能していることを示します。
消化管は、食物が口から入り、肛門から排泄されるまでの通り道です。口に入った食物は口腔で物理的・化学的に消化され、次の目的地である「胃」に向かいます。
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胃の働きの3要素
胃の働きを大きく分けると、以下の3つです。
貯蔵
消化(前半)
運搬
1. 貯蔵
胃は食べ物を一時的に貯めておく機能を持っています。空腹時は平らですが、食物が入ると最大2.5リットル程度まで膨らむことがあります。このおかげで、食事をとった後すぐに便意を感じなくて済むのです。また、胃は病原菌を殺菌し、冷たい飲み物の温度を調整する役割も果たします。
2. 消化
胃では食物の前半から中盤までの消化が行われます。消化の初期ステップは口腔内での物理的、化学的なものです。胃に運搬された後は、大量に分泌され(1日1.5〜2.5リットル)胃液が食物と混ざり合うことで「おかゆ」のような状態になります。
胃には、食物を消化する胃液(pH1.0-2.0の強酸性)が分泌される胃粘膜があり、同時に胃を守る粘液も分泌されています。胃酸はタンパク質を分解するペプシンの働きや、病原菌を殺菌する役割を持っています。
胃液は常に分泌されているわけではなく、視覚や嗅覚、実際に食物が入ることで分泌が刺激されます。食事を楽しむことが消化管の働きにとって重要だというのは、このシステムに関連しています。
胃は内側も自分で守らなければならず、そのための粘液を分泌します。胃粘膜は再生能力が高く、健康な血流があればすぐに回復しますが、年齢とともにその能力は低下します。
自分で攻めも守りも絶妙なバランスを保っているということですよね。考えれば考えるほど不思議ですね。
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もし攻めと守りのバランスが崩れると、胃腸にトラブルが起こる可能性があります。
特に注意が必要なのは、アルコールと喫煙です。
アルコールは胃粘膜に直接影響を与え、胃酸の生成を抑制または活発にすることがあります。過剰なアルコール摂取は消化不良を引き起こし、食べたものが身体に残ってしまうことがあります。
喫煙も悪影響を与える要因です。血流の悪化により、粘液の分泌が減少し、胃の防御機能が弱まります。これにより、胃酸の攻撃に対して脆弱になります。
3. 運搬
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胃の出口は「噴門」と呼ばれ、食物が逆流しないように機能します。出口は「幽門」と呼ばれ、少しずつ十二指腸に食物を送る役割を持っています。胃全体は蠕動運動を行い、食物を前に押し進めながら消化を進めます。
蠕動運動にも自律神経が関与しており、交感神経が優位な場合は抑制され、副交感神経が優位な場合は活発になります。食事の際の心身の状態によって、その後の胃の働きも変わってきますので、「食事を楽しむ」ことが消化管の健康的な働きの基本です。