解説!脳-腸‐微生物相関について
このnoteを見てくださる方にとっては、頻繁に目にするワードだと思いますが、腸脳相関という言葉があります。
腸は第二の脳と呼ばれており、独自の神経ネットワークを持っていて、脳からの指示がなくても独立して活動することができます。
実際に、腸には、脳に次いで約1億個の神経細胞が存在しており、筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)と粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)という2つの神経叢が存在します。2つの神経叢は、それぞれ自律神経の副交感神経とつながっており、その中には、腸管神経系という独自の指示系統があり、脳からの指令がなくても腸を動かすことができます。
腸独自の活動の一つとして、腸内には、ビタミンB群やビタミンKなどのビタミン(第四の栄養素)を生成する腸内細菌が存在します。
腸内細菌がビタミンを生成することで、食事からしか摂取できないと思われていたビタミンも体内で合成できるようになります。
特に、ビフィズス菌などの善玉菌はビタミンB群やビタミンK、葉酸などを生成する働きが大きく、所要量の約2、3割前後を占めていると言われています。
腸内細菌がビタミンを生成するには、食事の内容やサプリメントなどで補う栄養素とは別に、野菜やキノコ、海藻などに含まれる水溶性食物繊維やオリゴ糖が必要です。また、セルロースなどの細菌のエサを添加することで、ビタミンB群の合成が大幅に増強されるという研究もあります。
このように腸には独自の活動があり、腸の活動は細菌(微生物)と密接に関係していることから、脳-腸-微生物相関という言葉が注目を集めています。
無菌マウスでの実験で腸内細菌の活動が明らかに
無菌マウスを用いた実験で、腸内細菌を持つマウスと無菌マウスとで比較をすると、腸内細菌を持つマウスに比べて、無菌マウスはストレスに対して過敏であることがわかったという報告がされています。
これは、腸という器官の有無のみならず、その中にある細菌が身体へ影響を及ぼしていることの証拠の一つでもあります。
脳と腸は密接に連携し、腸は細菌と強い関係性を持っていると言えます。
過敏性腸症候群での発見
近年増加傾向にある過敏性腸症候群。
これは、大腸や小腸に器質的異常がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常、腹痛、腹部膨満感などの症状が現れる疾患です。
ストレスに関係がある文明病とされており、社会の複雑化やストレスの増加に伴い、その症状で悩む人が多くいます。
ストレスという目には見えないものが強く関わっており、なぜストレスによってこの病気が悪化するのか、長い間原因が分かっていませんでしたが、IBS患者では、脳が不安やストレスを感じると、その信号が伝わりやすく、腸が過剰に反応し、痛みを敏感に感じ取りやすい(知覚過敏)こと、そして、その刺激が脳に伝わり、苦痛や不安感が増すことが確認され、IBSは脳腸相関の悪循環によって起こっていることが分かってきたのです3)。さらに、この脳腸相関の悪循環を生み出す要因として、感染性の腸炎をきっかけにIBSの発症が見られるように、腸内細菌が大きく関与している可能性も示されるようになってきました。
こうした内容のように、脳と腸と細菌(フローラ)は相互に関係しており、様々な病気の解明や、治療の研究にも活用されています。
ストレスなどは、明日からゼロにしようと思ってもできるものではなく、また食生活もいきなり180度変えるということは難しいものです。
それでも、腸の調子を良くすることが、自分の人生の調子につながっており、健康な生活を送ることが、QOL向上につながっていきます。
参考となる研究は以下から確認いただけます。