別府で湯治旅2024年12月
昨年2023年梅雨になる前に別府の鉄輪温泉で数日滞在し、蒸したり風呂に入って楽しく過ごしつつ、仕事をした。勝手ワーケーションってやつだ。
その時、鉄輪温泉での地獄釜の自炊旅というものがすっかり気に入ってしまった。湯もいい。寒くもない時期で湯治というほどではなかったけれど、仕事終わって5分で温泉、これは素晴らしいものがあった。
ということで今年も全然休めなくて発狂寸前、休みを取ってとりあえずどこかに行かないとマジで何かを恨んで憤死しそうな確信があった(その時は本気と書いてマジ)。諸事情で海外は無理なので色々な感情を封じ込めて諦め、となればここは別府湯治しかないと判断。12月の代休日に思い切って案外高い大分行きの航空券に往年蓄積したエアラインマイルを片道は放出、帰りは安い昼の航空券を押さえた。休みを取るために休みを使うというのはどうなのかと思いながら。休みで旅行をすると決めたら、すごく気持ちが解放されたのが久しぶりすぎて「お気持ち回復」と思った。
結局のところ、休みと言いながら平日はコワーキングスペースで仕事をしていたことは事実であるが、終われば5分で、休憩10分で温泉に入って気分転換できるというのは非常に良かった。俺は今温泉に入ってきたのだ無敵だ(謎なマウント)トラブルにも立ち向かえる。
そして魚がある午後早い時間にスーパーの鮮魚コーナーに走り、魚を物色して冷蔵庫にぶち込んでおく。瀬戸内育ちの自分としては、近海魚の多い大分は非常に相性が良く、刺身の鮮度も、魚の種類も性に合うのが好きな理由の一つだと思われる。
こういった湯治宿には共同炊事場というものがある。窯の数は宿により差があるので確認したほうがいい。蒸し風呂や温泉でポカポカしている体で台所に向かい、火が通りにくい野菜から順番に地獄がまに入れていく。お豆腐も蒸してみる。(お米は1時間かかるので風呂に入る前に入れておく)
待っている間に刺身つまみ、小さいお盆で蒸しあがった野菜と惣菜を部屋を何往復もしながら運んでようやく夕食。この手間が膨大だが、それが楽しい。
夏に来た時はとうもろこしとズッキーニ、エビがうまかったが、今回の冬はかぼちゃや里芋が最高にうまかった。
蒸しあがった野菜、魚、肉はほんのり塩味が感じられ、オリーブオイルやほんのちょっとだけ塩や醤油をかけるだけで美味しく食べられる。毎日大量の野菜やご飯をぺろっと食べていた。刺身は鯛や太刀魚(鮮度命)。蒸した魚はカワハギ、肝付である。ご飯に乗せたらうまいことなんの。
この時点ではまだ酒は飲まない。
炊事場で皿や鍋を洗って片付けをしてからこの夜2度目の温泉にいそいそと入る。宿の風呂も温泉なのです。男女入れ替えの時間に注意しながら入浴。夜2度目なので浸かるだけであるが再度湯で温まる。
隙間風がある部屋に戻って缶ビールをプシューっと開けてようやく一息。釜で沸かしたお湯で焼酎お湯わりに地元大分のカボスを入れて飲む。ネットをしたり本を読んだりして、湯の流れる音を聞きながら静かに過ごした。ずっと水の流れる音がして心が安らぐ。私は家も愛しているし安らぐけれど、家を離れて日常の延長線のような旅には安らぎ効果があるなと。
朝は6時30分に近くの共同浴場、7時に宿の風呂が開く。早く起きて待てないときは共同浴場の方に行く。北風が冷たい日でも地熱のせいか、足元から湧き上がる蒸気は温かく不思議な外気だった。
別府鉄輪温泉の湯は全般的にナトリウムのしょっぱいお湯ですぐ温まる。10分も入れない。少し場所を離れると湯質が変わり、一言で別府といってもいろんなお湯がある。
朝すぐ温泉で体温を上がると非常に動きが良くなる。朝起きてから動きは悪くない方だが、湯の効果を感じる。炊事場で前の晩のご飯や野菜を蒸し直し、卵や蒸しパンや蒸しまんじゅうを蒸し、コーヒーを入れて地元ラジオを聴きつつモソモソと食べて皿を洗って片付ける。
部屋の空気を入れ替え、布団に空気を当て、掃除機をかける。
!!! 楽 し い !!!
単なる日常の家事じゃねえかよ、日常よりめんどくさそうと思われるかもだが、ところ変わって温泉・地獄釜という要素だけでこんなに楽しくなるとは。楽しいのだ。
こんな湯治宿は九州近県の客も多かったが、県内の人もいた。40年前この辺に住んでいて、という70代の県内在住のご婦人はかつてのご近所さんに会いにきていた。もうお互い歳だから自分で運転して来られるのは最後かもしれないと言っていて、昔のこの界隈の話を教えてくれた。歳のころ同じ世代の女性はご両親と来て家族で自炊を楽しんでいた。福岡の人は多い。一人は年に数回やってきて、蒸して蒸して食べまくって帰ると言っていた。ただ今年の夏は暑かったんで蒸しながら暑くて倒れるかと思ったと。ベテランは竹ざるを持ち込んでいたり、車の人は自炊装備が充実していた。
炊事場にはこういった謎な中年旅客が溢れ、情報交換が盛り上がることもあった。去る人から野菜や余ったものをもらったり、美味しい調理方法や他の温泉情報を教えてもらったり。そして何度か会った人とは炊事場で別れを惜しんだり。
この感覚、なんと久しぶりか。懐かしすぎる。
私は学生時代ヨーロッパのユースホステルで自炊旅をしたり(パスタ持ち歩き)、その後もタイなどの東南アジアや八重山などで安いゲストハウスの旅をしてきた経緯もあるが、最近はそんな宿も減り、スマホが主流になって情報交換の必要性もなくなり旅人と話すことなんてほとんどなくなっていた。でもン10年?ぶりにしかも国内・別府で、あの時と同じような経験をすると思わなかった。2度と会わない人たちとの名前も知らないサラッとした関係だが、しかしいつまでも覚えている時間だったりする。
蒸して食べて風呂入って寝るだけでも楽しい。願わくば仕事が全く入らなくて、読書なんかができたらもっと最高だったかもしれないが、とりあえず年内に別府湯治ができた、それだけでも上出来だと思う。
地獄蒸し自炊
持っていって良かったもの
3位 マイスプーンと箸(あると侘しくならない)
2位クレイジークリーク(持ち運べる座椅子みたいなやつ)
1位 延長コード 1.5m
他。ジプロック、タッパー類はいくつかあると野菜保管などに便利。
持っていけば良かったもの
米少量(炊くとうまい!でも買うと2キロになり重い)
サランラップ(おむすびできる)
買えば良かったかもだが無駄に荷物増えるからなあ。というためらいがあり買わなかった。
深皿で使いやすいサイズ(汁がこぼれない)
手頃なサイズの竹ざる(皿として)
マイカップ
地獄蒸しで美味しいもの
地獄蒸しは、別に塩を入れなくてもほんのり塩気を感じ、野菜はオリーブオイルかけたり、そのままでも十分美味しく食べられる。
今回、驚いたのは「米を炊くとうまい」。
部屋に羽釜が置いてあり、さらに炊事場で美味いと聞き、興味を抑えきれず近くの商店で500gの小分けを買って(小分けの商品がいろいろある便利なお店)、窯に入れて蒸しだきにした。蒸しているのでなんせ焦げないのがいいし、なぜか美味い。よくわからんがうまい。実生活の夕飯は米を食べないのだが、毎日米を食べてしまった。
野菜 根菜類ベスト
かぼちゃ
蓮根・ゴボウ
どれも水っぽくなく、期待値以上のうまさに蒸し上がる。これらのコツは大きく切りすぎないことだと思う。火が通るのに時間がかかる。
一方、サツマイモは丸ごとがおすすめ。
ジャガイモは普通だ。なんかわからんけど普通だった。
ブロッコリーは日通しの加減が難しい。割と時間がかかるが変色もしてしまうので難しいと思った。
キャベツ・白菜はかんたん。失敗なし。
葉物野菜、春菊は加減が難しかった。
魚
大分は地元のお魚が美味しいので肉より魚を食べていた
自分は大好物カワハギ、この辺ではハゲという(マルハゲがなくて、馬面ハゲだったり)肝がとにかく美味い。ご飯に乗せて食べるもよし。東京では肝付はなかなか手に入らないので魚コーナーにせっせと足を運んでいた。
スーパーの刺身も新鮮で美味、なんせ刺身の鮮度が違う。刺身にエッジが立っている。
タイの刺身(対岸の愛媛産。新鮮)
太刀魚の刺身
タイの皮(湯引きした皮)もうまい
夏に来たときは違う魚があったので、季節によって違う。時期ものを楽しみましょう。
肉類
カブ、鶏肉、椎茸を一緒に蒸してスープみたいにして食べた。これは家でもよくやるやつだが、釜で蒸してやるとまた味が違う。白ネギを入れれば良かったかもな。。。厚みのある豚肉やると美味しいのだが、今回胃袋に余裕なし(魚を優先)。
蒸し卵も美味しい。
人によっては、美味しそうなシュウマイを家から作って持ってきていたり、蒸し焼きそばを作っていたり、蒸し麻婆豆腐にしたり、カニを盛大にやっている人もいたり。蒸したらできるもんは大体なんでも美味しいし、実験的楽しさがあるので、なんでもやってみるのがおすすめ。