「獣の国」第1幕 第16場(廃工場)
廃工場
■ 錆び付き歪んだ鉄柵に囲まれた廃工場。
■ 明滅する1本の街灯のみが、薄ぼんやりと周辺を照らしている。
■ 建物正面の扉は太い鎖で固く閉ざされている。
■ 工場正門からやや離れた位置にある小屋の脇に立っているアロ、ドルジ、レベッカの3人。
■ ドルジに告げるアロ。
(アロ)私は右側を探ろう
(アロ)ドルジ お前は左だ
■ アロはレベッカに顔を向ける。
(アロ)レベッカ
(アロ)君はここから周囲を警戒していてくれ
■ フラッシュライトの光を当て、建物右側の壁を確認するアロ。
■ 出入口らしきものは見当たらず、平面の壁のみが続いている。
(アロ)右からは無理だ
■ 暗い通路の先に、フラッシュライトの光に照らされ扉が見える。
(ドルジ)通用口がある
(ドルジ)行けそうだ
■ 扉に身を寄せ、左手で静かにドアノブを回すドルジ。
■ 扉が開く。
■ 緊張した表情のレベッカの横顔、手にした無線機からドルジの声が聞こえる。
(ドルジの声)入ったぞ
(ドルジの声)レッドマン 来い
(ドルジの声)レベッカはまだそこに居ろ
■ 工場内に侵入したドルジとアロは、フラッシュライトを装着した拳銃を構える。
■ 廃工場の奥へと進む2人。
■ ライトに照らされた工場の内部、天井からはフックが幾つもぶら下がっている。
■ 中央にある長い作業台には防水布が被され、その下にある何かが防水布を緩やかに隆起させている。
■ ライトの光を作業台の上に向けるドルジ。
(ドルジ)食肉工場だったようだな
■ ドルジが防水布を取り去る。
■ 驚いた表情のドルジとアロ。
(ドルジ)…… 何だ…… これは?
■ アロが何かに気付く。
■ 右の壁一面に、無数の小さな赤い光点が浮かんでいる。
■ ライトを壁に向けるアロ。
■ 赤い光点、それは壁面の棚に蠢く膨大な数の鼠の目だった。
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