「獣の国」第1幕 第8場(勃発)
勃発
■ 無造作に立つイツァーク、無意識にイツァークに寄り添うレベッカ。
■ 開け放たれた扉を塞ぐかのように立ちはだかる迷彩服の男と痩身の男。
■ ゴーグルとフェイスマスクで、イツァークの表情は分からない。
■ 微かな嫌悪感と不安の表情が浮かんだレベッカ。
■ 無表情のアロ。
■ 嫌悪感を隠さないライラ。
■ ドルジが無表情で呟く。
(ドルジ)ど変態の糞ジャンキー野郎のお出ましか
■ 迷彩服の男はドルジをぎろりと睨む。
■ イツァークとレベッカに向かい、金属が軋むような声で吠える迷彩服の男。
(迷彩服の男)おいっ! 新兵っ!
(迷彩服の男)隣の女をこっちへ連れてこいっ!
■ 迷彩服の男は下卑た表情を浮かべている。
(迷彩服の男)女
(迷彩服の男)何事も最初が肝心だ
■ 手で卑猥なサインを作る迷彩服の男。
(迷彩服の男)この先良い仕事ができるよう 色々教え込んでやろう
■ 迷彩服の男を睨み付けるレベッカ。
■ イツァークがレベッカに話し掛ける。
(イツァーク)あんたも一通り説明を受けなければならんのだろう?
(イツァーク)さっさと部屋に入ったらどうだ
■ 心配そうにイツァークを見つめるレベッカ。
■ 話を続けるイツァーク。
(イツァーク)あの男…… まずは俺に用があるようだ
(イツァーク)少し話をするだけだ
(イツァーク)問題はない
■ 不安な表情でイツァークを見つめた後、レベッカは通信室の扉を開ける。
■ 通信室の扉が閉まる。
■ 大声を上げる迷彩服の男。
(迷彩服の男)おいっ! うすのろっ!
(迷彩服の男)俺の言ったことが聞こえねぇのかっ!
(迷彩服の男)俺はここに連れてこいって言ったんだっ!
■ 荷物を床に置き、閉まった通信室の扉を背にして立つイツァーク。
(イツァーク)この部屋の中にカードリーダーがある
(イツァーク)あのslitが お前に似合いだと思うが
(イツァーク)お行儀良く順番を待ったらどうだ
■ 巨躯を揺らし、迷彩服の男はイツァークに詰め寄る。
(迷彩服の男)…… 糞ったれの二等兵が…… てめぇが口にできンのは たった一つ……
(迷彩服の男)Sir Yes Sir!
■ 恐ろしい速さで繰り出された迷彩服の男の右拳がイツァークの顔に飛ぶ。
■ 間一髪避けるイツァーク。
■ ボクシングヘビー級チャンピオンのように、その体躯からは想像もできないほど敏捷な動きで、次々と拳を繰り出す迷彩服の男。
■ ギリギリの間合いで避けるものの、イツァークは通信室の扉から徐々に引き離される。
■ 骨ばった長い指がパチリとシースの留め金を外す。
■ 痩身の男が薄笑いを浮かべながら、刃渡りの長いナイフを手に通信室の扉へ向かう。
■ 痩身の男の動きに一瞬気を取られるイツァーク。
■ 迷彩服の男の左拳がイツァークのこめかみを捉える。
■ 壁に吹っ飛び、そのまま崩れ落ちるイツァーク。
■ イツァークに伸びる迷彩服の男の巨大な両手。
■ イツァークの首を両手で掴み、吊るし上げる迷彩服の男。
(迷彩服の男)ちょこまか逃げやがって この阿呆が
■ イツァークの口から微かな苦悶の呻きが漏れる。
(イツァーク)…… う……
■ 興奮して目を剥き、迷彩服の男はイツァークに顔を近づける。
(迷彩服の男)初日に上へ逆戻りか
(迷彩服の男)だが てめぇの足で歩いて帰れるわけじゃねぇぞ……