「マトリックス リローデッド」
前作よりもおもしろい。
第1作のほうが単純だったが、それをベースに世界を広げていくやりかたは巧いと感じた。
まず、アクションシーンは前作よりもかっこよくなっている。デジタルな戦闘で、いわゆるカンフー映画のような生身のアクションが好きな人には嫌がられるかもしれないが、小生はこういう洗練された舞踏のようなアクションは好きだ。
個人的に本作で一番かっこよかったアクションシーンの映像をリンクしておく。ワイヤーアクションやらスローモーション満載で、かっこよさだけを追求したようなシーンだ。ここまでいくと、アクションと呼んでいいのか疑わしくなってくるが。とにかく、ザック・スナイダーの「300」もマトリックスから影響を受けているのではないかなと感じた。
前作ではアンチウイルスソフトの役割をつとめていたエージェント・スミスは、ネオとの戦いに敗れたあとで、エージェントではなくなっていた。本来なら削除されるはずなのだが、それを拒み、生きている。コンピュータで言えばバグなのだろう。
他に、預言者が再び登場し、自分はシステムなのだと告げる。
最後に登場する設計者の説明によれば、預言者はバグではなく、設計者によって設計されたプログラムのようだ。設計者は神なのだろうか。
設計者は、なにを設計したのか。おそらくザイオンという土台を設計し、そこに人間を住まわせたのだろう。
マトリックスはコンピュータが作り上げて、人間は水槽みたいなところで眠っている。つまり、設計者というのはもともとは人間で、マトリックスに対抗するためにザイオンを作ったのだろうか。それとも、設計者は最初から神で、ザイオンを作って人間を住まわせていたのだろうか。そして、そのあとで人間がコンピュータを使うようになって、コンピュータがマトリックスを作ったのだろうか。
キーメイカーというキャラクターも登場する。彼は自分の役割を、その生涯の終わりまで理解していた。こういう運命論者のような人々が多く登場する。途中まで、運命に従う話なのかと思っていたら、それでも戦わなくてはならない、という展開になった。
俳優の話をすると、モニカ・ベルッチが出演していたのがやっぱりうれしい。一番きれいだった頃かもしれない。
マトリックスの出演者たちは良くも悪くも洗練されたモデルのような俳優たちで、それがコンピュータの世界で描かれる戦いという舞台にマッチしている。キャスティングがうまいのだろう。
マトリックスは、もともとブラッド・ピットやショーン・コネリーにもオファーがあったというが、結果的にはキアヌ・リーヴスとローレンス・フィッシュバーンでよかったと思う。キアヌ・リーヴスは当時もスター俳優ではあったが、低迷期だった。ローレンス・フィッシュバーンは地獄の黙示録に出演した実力派ではあるが、マトリックス以前はそれほど有名でもなかっただろう。キャリー=アン・モスはマトリックス以外の映画はまったく話題にならない。ヒューゴ・ウィーヴィングはマトリックスのあとでロード・オブ・ザ・リングに出演したことで、人気が出てきたが、当時はさほど有名ではなっただろう。こういうところを見ていると、スター・ウォーズにも似た印象を受ける。無名ではないにしても、オールスター映画ではない。しかし映画としては、圧倒的な知名度を誇る。
B級になりそうな作品を、ここまでのクオリティにおしあげたのは、やはり映像のかっこよさだろう。ひとつひとつの画面の構図がかっちりと決まっている。全身が映るショットが印象的なのは、個人的にはキューブリックの影響があるからだと思う。そして、古い電話が鳴るショットや、階段のショットなどはヒッチコックだと思う。さらにつけくわえると、カットバックはペキンパーから学んだのかもしれない。設計者の部屋で壁一面にテレビがあるのは、ブライアン・デ・パルマだろう。
もちろん、カンフー映画からの影響は言うまでもない。インタビューで、「なぜカンフーを取り入れたのですか」と聞かれて、兄弟のひとりが「かっこいいからさ!」と答えていたのを思い出した。そのあとで兄弟の片割れが「陰と陽の関係が…」などと真面目に答えていたが、そこは忘れてしまった。
こうして考えていくと、当時最先端だった本作は、実は過去の偉大な映画監督の影響を詰め込んだ、意外と真面目な映画オタクの作品であることがわかる。
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