すれ違い(2015年)
なんとなく見たのだが、とても面白い。
イタリア映画。
ある避暑地を訪れていた初老の夫婦。妻のスザンナはいつも道端で見かける売春婦を助けたい、と夫アルフレッドに相談する。最初は渋っていたアルフレッドだが、スザンナの熱意におされて彼女を救うことにする。
半ば誘拐するようにして連れてきた売春婦は、ナディアといい、ウクライナからきたという。
化粧を落としたナディアはかわいらしくておとなしい女性だった。
平穏な日々。しかし、息子のジュリアが恋人のフラミニアとともにあらわれてから、事態が狂っていった。
フラミニアと一緒に別荘から帰っていったはずのジュリアは、途中でフラミニアと喧嘩して、ひとりで別荘に帰ってきた。
ジュリアはナディアにひかれていった。それはスザンナにとってはおもしろくないことだった。
といった物語。
おもしろいのは、イタリアというと奔放な恋というイメージだが、そこに売春婦という職業がからむと、そうではなくなっていくというところ。
スザンナはナディアが売春婦であることを知っていて助けた。しかし、ナディアが家族に絡んでくると、それは話が別なのだ。
売春婦という職業は穢れている、というイメージがイタリアにはあるのだろう。そして、その風潮がかならずしも良いものではないと考えている人々もいる、ということなのだろう。
善意というもは、自分に被害が及ばない前提で発揮される。しかし、本作のスザンナは心の小さい女性なのかというと、そうではなくて、むしろ心は広いと思う。道端にいる売春婦を助けるなどということを、普通の女性はしないだろう。問題なのは、売春婦という職業の社会的なイメージの悪さだ。そのイメージゆえに本作のような誤解が発生する。
職業に貴賤はない、という言葉は美しいが、世の中はそうなっていない。ハイレベルな仕事もあるし、底辺の仕事もある。
本作のような作品は、世界を変えないだろう。しかし、そういう問題があるのだということに気づかせてくれるという意味で価値がある。
https://www.youtube.com/watch?v=UX-6gOwWuko&t=4s