「椿姫」(1848年)
デュマ・フィスの小説。
高級娼婦のマルグリットと、青年アルマンの恋物語。
本作のおもしろさは、物語のプロットよりも、語り口の構造にあると思う。いわゆるメタ・フィクションの一種なのかもしれない。
まず、作者デュマ・フィス(自身が登場して、ヒロインのマルグリットの死を告げる。その次に、デュマはアルマンという青年に出会う。アルマンはマルグリットとの恋を語る。このパートはアルマンの一人称になる。
そのあとで、マルグリットが書いた日記文になる。さらには日記の最後はマルグリットの友人であるジュリー・デュプラが日記を引きつぐという構成になっている。
多層的というのだろうか。こういうさまざまな語り口を、うまく組み合わせてひとつの物語を構築するという手腕が見事だ。
小説そのものについても、ただの恋愛小説ではないところがいい。途中、ラノベのような甘ったるい展開になるのだが、そのあとの展開はラノベや、昨今のハーレムマンガとは全然違う。これは、時代を経ても生き残る古典文学と、今だけ売れるライトな作品の違いなのだろう。
解説を読むと、作者のデュマ・フィス自身、複雑な生い立ちの人物らしく。本作が彼の人生に深くつながっていることがわかって興味深かった。
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