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コンラッド「闇の奥」(1899年)

映画「地獄の黙示録」の原作として有名な作品。あの映画が好きな人はこの本も好きになると思う。

本書は「私」が「マーロウ」から話を聞くというスタイルをとっている。
マーロウはコンゴの川を船で移動してクルツという人物に会いにいったときのことを語る。
wikiを見ると、コンラッド自身「1890年にベルギーの象牙採取会社の船の船長となって、コンゴ川就航船に乗り[5]、さらに陸路でレオポルドヴィル(キンシャサ)まで行き、船を乗り換えてキサンガニに到達、その後病に倒れ、1891年にブリュッセル経由でロンドンに戻った。」とある。
「私」が「マーロウ」に話を聞いているが、実際には「マーロウ」がコンラッドなのだ。

本書が書かれた19世紀後半のイギリスはヴィクトリア朝と呼ばれる、植民地支配も拡大し、経済的にも潤っていた時代だ。
マーロウがコンゴの川を旅する間も象牙の話は大量に出てくる。1833年に大英帝国全体で奴隷制が廃止されたが、ここでは明らかに奴隷扱いされている先住民族が出てくる。
こういったものごととともに語られるのが、クルツがいかにすごい人物かということだ。
マーロウは徐々にクルツに会うことを切望するようになる。

ヴィクトリア朝は、イギリスが光り輝いていた時代だ。そして光がまばゆければそれだけ闇も深くなる。その闇の部分を描いたのが本書だ。
白人がコンゴの先住民を攻撃して支配する。その支配者の頂点がクルツだ。しかしそのクルツも、ジャングルの闇に浸食されていく。
侵略するものも、また侵略されるという物語で、よくできている。

ヴィクトリア朝の文学というと、ディケンズ、コナン・ドイルやオスカー・ワイルドといった錚々たる面々が並ぶ。コンラッドは知る人ぞ知るといった印象だ。扱っている題材同様、本書も闇の中に位置し、だからこそ人々を魅了するのかもしれない。

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