クリーミーベイクドチーズケーキラテ
世界には2種類の人間がいる。
売れ残りの見切り品に安易に手を出す人間と、間違っても手を出さない人間だ。
うちの母は前者、私は後者。
買い物から帰ってきた母が、誇らしげな顔つきで「¥98だった」と言いながら何かを取り出した。
クリーミーベイクドチーズケーキ味のラテベース
私は母に呆れた表情を向け、「またか……」とため息をついた。当の本人は何が悪いのかまったく理解できない様子でぽかんとしている。
「なんで安いかわかる?まずいからでしょ!そんなの絶対まずいでしょ!だから売れてないの!お金がもったいない」
しかし、今回ばかりは私が間違っていた。
うまかった。
というのも、懸念していた変な酸味や強烈な甘みはなく、チーズケーキの要素は微塵も感じられなかった。ただのまろやかなラテだ。母に「ごめん、普通においしかったわ」というと「ねっ!おいしいよね!」と言いながら動き出そうとした。私はすぐにぴんと来て、その動きを封じるように言った。
「でも何本も買う必要はないからね?」
今にも買い足しに行こうとしていたのである。一体、その力はどこから湧いてくるのか……。
とまあこういうわけで、我が家では今、この“クリーミーベイクドチーズケーキ”ラテに、業務用スーパーで売っている珈琲ゼリーを砕いて沈めて、太いストローで飲むことが流行している。
ポストタピオカとも言えるおいしさ。
いつも見切り品には手出ししない人も、今回ばかりは騙されたと思って、ぜひ試してもらいたい。