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生き返る/蘇る【日常エッセイ】

「麦茶おいし~生き返るわ~!!」
隣から聞こえた言葉は、焼けるような暑さを吹き飛ばす。ここ最近気温30度越えが当たり前となっていて、外出後の麦茶1杯が習慣と化していた。ちょうど年の離れた友人と出かけた後だったため、今日の習慣には友人がいた。

「今何となく『生き返る』って言っちゃったけどさ、生き返ると蘇るの違いってなんだろうね?」
独特な感性の友人から出た素朴な疑問。こういった何気ない日常を、不思議そうに見つめるところが彼女のよいところだと思う。買ってきた菓子パンをほおばりながら、その疑問を解消すべく考える。

おそらく、彼女のことだからただ辞書を引いても納得しないだろう。辞書を引いて教えるより、私の解釈を聞きたがっているのだろうか。ちらりと目を向けると、期待を乗せた視線と目が合った。沈黙がしばらく続き、菓子パンを喉に流し込んでから、カタチのない解釈を紡ぎ始める。

「多分、時間軸が違うんだと思う。生き返ると蘇るは、使われる時間の単位が違うんじゃないかな。」
不思議そうな顔をする彼女に、言葉を重ねる。
「生き返るも蘇るも、復活するというのは同じ。違うのは、生き返るは死んで間もない日数とか、死にかけた状態から戻る。蘇るっていうのは、死んで1年経ったとか、かつて忘れ去られたものとかみたいな、遠い過去から戻ること…だと思う」
私の解釈を言い切ったあと、改めて考えてみる。生き返ると蘇る。生き返るというのは気軽に使われているけれど、蘇るというのはあまり使われていない気がする。言葉の重みが違うのだろうか。


次の日、結局気になって家にあった国語辞典で引いてみる。

いきかえる【生き返る】
一度死んだものや死にかけていたものが、よみがえる。

よみがえる【蘇る・甦る】
①一旦死んで、生き返る。
②弱りきったものが元気をとりもどす。
③元どおりにあらわれる。

三省堂国語辞典第八版

どちらも同じような意味として定義されているのだろう。生き返るの意味には『蘇る』が、蘇るの意味には『生き返る』の文字が記されている。

蘇るには複数の意味があることから、生き返ると蘇るを使い分け当事者の感覚的な世界を伝えている…と考えるのが彼女の疑問の解答にふさわしいのかもしれない。

猛暑が嫌で全く外出できていなかったが、こういった何気ない会話があるなら夏の外出も悪くない。こうしてヘトヘトになるまで外を歩かなければ、今の会話に意味もなかったかもしれないのだから。
夏の到来とともに萎えていた心が彼女との会話で蘇るのを感じながら、ぬるくなった麦茶を一気に飲み干した。










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