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【記録】愛媛旅行 20241204(2日目)

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アラームで目を覚ます。愛媛滞在2日目、朝4時。支度をする。ホテルの朝食バイキングを楽しんだらすぐ出発しなければいけない。この日の予定は離島×2。

山手線のように行けばすぐ電車が来る、みたいな世界ではない。というか、そんな世界のほうがはるかに少ない。離島に向かう船ともなればさらに時間的制約が強まる。ちゃんと時刻表パズルを組み上げて旅程を作らないと、下手したら帰れなくなる。

朝6時オープンの朝食バイキングにオンタイムで到着。プレートを取ってまずは何があるのか物色。1周目はクロワッサンを中心に洋食を、2周目は少しのごはんと味噌汁を中心に軽く和食を。うまい。楽しみつつもパパッと食べてごちそうさま。乗り換え失敗が怖いので予定より早く出ることにした。部屋のドアに「清掃不要です」のサインを貼り、ホテルを出る。

今度は間違えずに乗るべき路面電車に乗り、大手町駅で伊予鉄の郊外電車に乗り換える。東京にも大手町があるが、愛媛にもあるんだね。郊外電車はふつうの電車で、Suicaは使えないので現金できっぷを買う。伊予鉄、路面電車もふつうの電車も路線バスもぜんぶオレンジでかわいい。

例によって居眠りしながら高浜駅へ。高浜駅の目の前に高浜港がある。瀬戸内海に浮かぶ離島群・忽那(くつな)諸島への玄関口のひとつだ。とりあえず港周辺をうろうろする。海が青い。待合所の窓口で睦月島(むづきしま)へ向かう高速船のきっぷを買う。

忽那諸島を結ぶ航路には、高速船とフェリーの2種類ある。フェリーの方が安い。高速船の方がその名の通り速い。乗り慣れているっぽい人の後ろをついていって、桟橋に並ぶ。まだ早朝だ、桟橋に着いた高速船から降りてくるのは島で生活している人たちなのだろう。入れ替わりで乗り込む。船はさらっと出発し、20分弱でさらっと到着する。

睦月島に降り立つ。聞こえるのは波音と風音、ときどきエンジン音。ざっくりしていてあんまりよくわからない島内地図。こういう場所は、Googleマップにも情報なんてないものだ。己の勘を研ぎ澄ませ。歩き出す。集落と海の境目を歩いていたら、小さな浜辺に出られる場所を見つけた。波打ち際、海が綺麗すぎる。こんなに透き通った海はなかなかない。

満足して戻り、島の真ん中を登っていく道を歩いてみる。みかんの木、みかんの木、みかんの木。たくさんのみかんの木。エルマーがここに来たら大喜びかもしれない。まさかエルマーの物語に出てくるみかん島はここがモデルなのではないか?知らんけど。それはそうと、上り坂がキツイ。

ひいひい言いながら歩くと分かれ道にぶち当たる。どうしようか。とりあえず左。この選択が運の尽き。そのときは気づいていないのだが、私が選んだのは全長9kmのハイキングコースだった。進めば進むほどみかんの木はなくなり、やがて島の真反対に到達する。そこからぐるっと島の外周半分を歩かなければならないコースだ。やばい、この道まずかったのでは、と気づいたときにはもう遅い。引き返すという選択を放棄して進む。旅は歩いてなんぼの冒険だ。自分に言い聞かせる。

頭上で突然カラスの大集会が始まってビビり散らす。進めば進むほど人や車が通った痕跡がなくなっていく。対動物用の罠を見かけて慄く。罠の中には大量のみかん。ガードレールすらまともにない道、眼下には鬱蒼と茂る森、小さな島々が点々と置かれた海。遠くの島に日向と日陰の境目が見える。とにかく歩く。

この島には独自にミニお遍路みたいなものがあって、道中に番号が振られた仏像が置かれている。進めば進むほどそのナンバリングがカウントダウンしていると気づいた。そのカウントダウンだけが頼みだった。持ってきたキットカットを胃にぶち込み、ひいひい言いながら歩き続ける。

途中で台座から落下し倒れた仏像を見つける。これはさすがに、と思い、重かったががんばって直した。そしてまた歩く。ナンバリングがひと桁になったとき、眼下に最初降り立った桟橋と集落が見えた。あの瞬間の安堵は凄まじいものがあった。第1番の仏像を確認し、ハイキングコースは終了。

桟橋の近くにひとつだけ置かれたベンチに座り、昨日買ったおにぎりセットを食べる。またセルフレジで割り箸を取るのを忘れた。からあげを手づかみ。こんなにもコンビニのおにぎりをうまいと感じたことはない。

ひと休みして、廃校になった島の小学校跡を訪ねる。そこには猫がいると聞いていた。校門にさっそく一匹香箱座りしている。おぉ、と思って近づいたら、奥からわらわらと猫たちが現れた。みんな人慣れしている。ありがたくもふもふさせていただく。

忽那諸島に住んでいたたくさんの猫たちは、離島の住民たちの高齢化に合わせ本島へと移送されているらしい。責任の取り方のひとつなのだろう。

島から人が消えたとき、この島自体はどうなるのか。行くことのできない無人島になる可能性もあるのだろうか。行きたい場所が常に行ける場所でありつづけるとは限らない。猫が私の足元でごろんと寝転がる。ほかの猫よりふた周りくらいでかいなこの子。ボスか?

予定通りの高速船に乗って高浜に戻る。待合所で少し眠る。次は興居島(ごごしま)。車もそのまま乗れるフェリーに乗る。興居島航路は船内でお金を払う。往路も復路も、なぜか私には乗船券と思しきものを渡してくれなかった。特にそれでトラブルになるようなこともなかったので別にいいっちゃいいけど。10分ほどの船旅。デッキに出て海風を感じる。良い。

興居島には小富士と呼ばれる山がある。それに登ろうと思っていた。めちゃくちゃ急な坂道を例のごとくひいひい言いながら登り、登山口の看板を発見したはいいものの、その登山口がどこなのかわからなかった。いや、登山口と思われる場所があるにはあったが、あまりにも自然に侵食されていた。全然人来てないのか。遭難する気配を察知したのでさすがにやめる。

登山口からでも十分見応えのある景色。みかんの木、みかんの木、みかんの木。ときどき足元に見つけた花を撮りながら戻る。

港の近くにあった公園でブランコに座る。独りでブランコを漕ぐ不審な成人女性になりながらフェリーを待った。帰途についているところらしい小学生の集団にまぎれながらフェリーに乗る。

お金を払ったら今度は2階のデッキへ。船が砕いた波が白く泡立ち、そこに船体の影が落ちる。寒いが良い。

高浜港の待合所でトイレを借りる。小学生たちがばいばーいと手を振りあっている。数人の小学生が待合所のベンチに座った。どこかしらの島に家があって、別の島に小学校があるってことだろうか。船が生活に組み込まれている、その感覚は海なし県で生まれ育った私には持ち得ぬものだろう。

待合所を出る。高浜駅には入らず、歩いて隣の梅津寺(ばいしんじ)駅を目指す。まだ歩くんかい。旅は限界を超えてでも歩けと思っているし、写真は歩いてこそ撮れるものだと思っている。足で稼げ、それこそAIにはできぬことだ。

梅津寺駅も海が見える駅。海と駅の近さで言ったら下灘をも凌ぐだろう。代わりに梅津寺はホームに設置された柵と海がどうしても重なる。下灘は柵がそもそもない。

雲が多くなってきちゃったな、と思いながら歩いていると、雲の隙間から光芒が差して海面を照らしているのが見えた。慌てて開けた場所を目指す。開けた場所とはつまり梅津寺駅目の前の海岸だ。自然が見せる美しい光景は人の都合など考えてはくれない。何とか間に合って写真に収める。快晴では決して見られない、むしろ雲が多いからこその光景。

満足して、すぐそばのみきゃんパークというお土産屋に入る。愛媛のゆるキャラ・みきゃんとその仲間たちのグッズやみかんを使った商品がたくさん並んでいる。みきゃんのお手玉ぬいぐるみを買う。かわいい。

歩きすぎて疲れたので、予定よりも早く帰りの電車に乗って松山へ。そういえば、と思い立ち、だんだん通りに立ち寄る。気になっていたパフェを食べることにした。モンブランパフェ。うまい。モンブランパフェだが最下層はみかんジェラートだった。愛媛の自我つよ。

ホテルに戻って荷物を下ろしたら、財布とスマホだけ持って外で晩ごはん。松山で有名らしいラーメン屋「麺屋なかむら」へ。予約がないと入れないこともあるらしいのでInstagramから予約をしておいた。

店に入ると客は私だけだった。予約である旨を伝えるとすぐ席に通される。即座に塩ラーメンを注文する。この店のスタンダードは塩ラーメン。店内には芸能人やスポーツ選手のサインがたくさん飾られている。5分ほどで提供されてスープから飲む。うまっ。

何のだしかとかは全然わからないマンだけど、今まで食べたことない感じだ。チャーシューもうまい。もやしもシャキシャキ。塩ラーメンはあんまり好きじゃなかったりしたんだけれど、これはうますぎる。この文章を打ち込みながらよだれが出てきた。また食べたいなぁ。

あっという間に食べ終わって会計してホテルに戻る。いやぁうまかった。うまかったなぁ。うまかった〜と思いながらお風呂に入り、ちょっとだけFNS歌謡祭を見て就寝。あ〜うまかった。


つづく



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千鶴
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