職場の居酒屋が閉店して無職になった
「お世話になりました」
手を振り、背を向けて自転車を漕ぎ出した瞬間、涙が出た。
リュックも自転車のかごも、荷物でパンパンだ。さっきまで一緒に働いていた子がくれたプレゼント、もう着ることはないかもしれない仕事服、自由に持っていっていいと言われたのでもらってきた食料や備品の数々。重さで体は軋み、自転車はふらつく。
五月最終日、働いていた居酒屋が閉店した。
今はもう、新しい会社が新しい居酒屋を始めようとしている。
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約六年前の夏、私はこの店のオープニングスタッフとして働き