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大切な人
20代後半、少しでも綺麗に歩けるようになりたくて、必死になってリハビリをしていた頃、淀屋橋に腕のいいインソール屋さんがあると教えてもらい、そこで初めて斎藤さんに会った。
斉藤さんの仕事ぶりや、ファンキーな出立ちや、肩の力がぬけた感じや、独特の語り口に魅了された私は、気がつけば斉藤さんのファンになっていた。
インソールを一通り作ってもらった後も、気がつけば用もないのにお店に立ち寄り、しょっちゅうお仕事の邪魔をしていた。
私が顔を出すと、斉藤さんは全然構わないという顔をして、仕事の手を止め、美味しいコーヒーを淹れてくださった。
斉藤さんとのおしゃべりの時間や、レトロなお店に流れる空気感が、とても心地よかった。
ところが、その頃だんだんと心の不調がではじめ、徐々に人と会うことが、恐くなっていった。
当時の記憶はあまり鮮明ではないけれど、1日の中で、心に安心を感じられる時間が、どんどん減っていき、その代わりに不安や焦りを感じる時間が、どんどん増えていった。
でも、そんな心が不安定な時期でも、不思議と斉藤さんのところには、勝手に足が向かっていた。
私が行くと、斉藤さんはいつもの調子で、あたたかく私を迎え入れてくださった。
私がボソボソと心のうちを打ち明けると、斉藤さんは何か特別なアドバイスをくれるというよりは、「そうかそうか」とただ聴いてくださった。
そのようにいてくださることが、当時の私には何にも変え難いくらい、ありがたかった。
その後、私は引越しをして、直接会いに行くことはなかったけれど、それからも私の中ではずっと大切な人だった。
そんな斉藤さんが、30数年続けられた淀屋橋のスポーツ3110を閉めて、堺に移られると聞き、10年以上ぶりに再会することができた。
変わらない風貌、変わらない肩の抜け具合、変わらない独特の口調や間。
お別れパーティだったこの日。店内には溢れるほどの斉藤さんファンの方々が。
斉藤さんと話をしながら、ふと当時の感覚が甦り、胸がきゅっとなった。そのことに気づき、しばらくそのまま身体の感覚を感じていた。身体はやがて今はもう、安心してここにいることを思い出し、胸は次第に穏やかさを取り戻していった。そして当時も感じていた、あたたかさや安心感が身体全身に広がっていった。
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あれから15年以上の月日が流れた今、心がどうしようもなく辛かった時期を思いかえすと、そこには必ず斉藤さんのように、当時の私をあたたかく見守り続けてくださっていた方々の存在があったことに、気づく。
それらの方々は、言い換えると本人さえ気づいていない、天性のヒーラーのような方々で、言葉や態度というよりも、その存在で「今は無理に変わろうとしなくても、大丈夫。あなたはあなたのままでいいんだよ。」
ということを、私に感じさせてくださり、疲弊した心に癒しを与えてくださっていたように思う。
私は、決して天性のヒーラーではないが、過去の私のような人が、助けを求めてくださった時は、いつも斉藤さんのような存在でありたいと思う。
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改めて、斉藤さんありがとうございました。これからも、ずっと斉藤さんのファンです。
スポーツ3110
https://sports3110.com/index.html