二/レージフリーク

「終わりのない蜜の迷路おぼれてしまうけど。一つ消えていく、偽りの道……」
 麗次はホテルのバスタブに立ち、頭からシャワーを浴びていた。
「いや、一つ癒えていく、偽りの道……」
 両目を閉じ、脳裏にひらめく言葉を端から口にしていく。
 すると突然、インターホンが鳴った。
「やば」
 慌ててシャワーを止め、バスローブを無造作に羽織った。風呂場を飛び出し、ドアスコープを覗いた先にはリュウが立っていた。
 ツアー中の絡みの打ち合わせは麗次の部屋でするのが常だった。食事や風呂を済ませ、眠りにつく前のリラックスした時間が、一番大胆な発想が生まれる。どんなことにも、麗次は妥協を許さなかった。
 びしょ濡れになった姿に、リュウは目を見開いた。カーペットの上には雫が絶え間なく落ちている。

ここから先は

2,336字
オリジナルBL小説です。全30章。完結済み。 18禁につき、ちょっと過激な描写もあります。

天才ボーカリスト高階麗次の愁いに魅かれたモデルの響。 しかし、初対面でいきなり敵意を向けられてしまう。 彼は繊細な外見とは裏腹に予想外の「…

サポートをしていただけると嬉しいです。サポートしていただいた資金は資料集めや執筆活動資金にさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。