三/レージフリーク
「今日はこれをかけてくれ」
響は一枚のコンパクトディスクを取り出すと、アシスタントに渡した。
「お、珍しい。響からリクエストか」
機材を弄りながら、カメラマンが顔を上げた。慣れた撮影現場に、慣れたスタッフ。スタジオが伸びやかな空気に包まれるのは、主役である響の存在が大きい。
彼はいつもその場の空気を大切にした。世界に上りつめるには、それなりの理由がある。貪欲なまでのプロ意識はもちろんのこと、余裕を忘れない精神。そんな彼を支える為に、スタッフ一人一人が、持てる力を最大限に発揮していた。
「え、V系聴くの?」
ファインダーを覗きながら苦笑するカメラマン。その前に立った響は照れ笑いをこぼした。
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