【映画感想】「武士の家計簿」
堺雅人さん主演の「武士の家計簿」は、私の最も好きな映画の一つ
この画像見ただけで、大河ドラマ「新撰組!」の山南敬助が家庭を持った姿のようで、個人的にうるうるしてしまう…
猪山直之は、今なら経理課とか、役所の出納係にあたるようなサラリーマンだから、もし後世に映画の主人公になるなんて知ったら驚くだろうけど、本当に偉大な人だと思う。
そして、直之に大きな影響を与えた一人は、「おばば様」(草笛光子さん)に違いないと思う。
「金がないなら、借りればいい」
ほとんどの人間がそうやって先送りの考えをする中、このままではいけないと、直之は腹を決める。
直之が、家の借金を解決するために、家財道具を売却するなどの決断をした時、慌てふためいて猛反対する親たちなどの中でただ一人、静かな声で「御明算よのう」と、悲痛な顔をしながら直之の考えを理解したおばば様。
この一言の存在は大きいと思った。
趣味で読んでらしたのかな、という数学の書物らしきものを、目を閉じてから売却の場所に出していたおばば様。頭の良い女性だったんだろうな…
生活レベルが上がると、その時は嬉しくても、人間、それが普通になって慣れて感じなくなるもの。
でも、上がった生活レベルを下げるのは難しい。
それも、ある程度すれば慣れることは結構あるだろうけど、こじらすことも多いと思う。
御家の恥、死んだほうがましとばかりに取り乱していた直之の母親たちも、やってみれば案外なんとかなるもんだと落ち着いていく姿は嬉しくなった。
惨めで不幸ではなく、工夫を凝らす生活を楽しみに変え、直之も仕事の実直ぶりが評価される。
先代からのかさんだ借金を、遂に返済し終えて、直之の母親が泣いて売却を嫌がった着物を買い戻せた時は、涙が溢れた。
借金がない…どんなに清々しい、胸が張れることか
直之は、幼い息子を夜更けに一人で暗い河原に行かせて、これで死ぬようならそれまでの運だとか、「そ、それは。。」ということもあったけど、そういう時代だったろうけど、ひどいことをしてしまったとずっと気にかけていて、奥さんや、成長した息子に背負われながら謝るシーンはほんと泣いてしまう…
猪山直之は、歴史の教科書に出てくるような人物ではない、そういう意味では地味な人だけど、ベストセラーのFACT FULLNESSにあるように、世界を変えていくのは、直之やおばば様のような存在なんだろうと思う。