見出し画像

その⑤エディのおかげで苦しみの荷物が下ろせそう『世界で一番幸せな男 101歳、アウシュビッツ生存者が語る美しい人生の見つけ方』を読んで

人はときに、自分より、自分の大切な人の痛みを辛く感じるものだ。

この電話もそういう類の内容で、小さい頃から何度、私の大事な人たちを傷つける人を憎んだかわからない。今も、話を聞けばやり場のない怒りがわくし、人間てこんなに醜いものだろうかと思う。

ひどいことをする人たちのところへ行って、散々罵りたくなるし、地獄に落ちろと願ってしまう。

他人からの悪意がきっかけで、身近な人とまでも何度喧嘩になったかしれないし、そのことばかりを考えて、どれだけ暗い心になったかわからない。 

電話を切った後、

「もしかしたら、今、このときに私は、

荷物を下ろすという選択をするべきなの?」

ふと思った。

許さなくてもいい。

でも、私が何を言おうと変わらないことなら、憎むのはやめてそのエネルギーを違うことに使うことが、エディが願っていることなんじゃないか。

〜わたしたちが住むこの世界に、ささやかかもしれないが、あなたの一部が貢献している。これを忘れてはいけない。今日のあなたの努力は、あなたが出会うことのない人たちにも影響与えている。良い影響を与えるか、悪い影響与えるかは、あなた次第だ。毎日、いや1分ごとのあなたの行動の選択が、知らない人を元気付けたり、がっかりさせたりする。選ぶのは簡単だ。そして、選ぶのはあなただ。〜本文より

エディは、ユダヤ人が苦しみ、死んだのは一人の狂人のせいで、理由などないと書いている。たしかに、多くの人が残虐な目にあう理由などなかった。

一方で、ナチスの生き残りの囚人を面会した時に、なぜあんなことをしたのかという問いの理由を「憎しみ」以外に見つからないとしていることは書いた。

どこかで、誰かが人を憎めば、悲惨なことは繰り返される。

でも、許せなくても、憎むことをやめれば、憎むエネルギーを自分を幸せにするために使ったり、周りの人を幸せにするために使うことができる。

何度も読み、自分でも文章に書いているのに、自分の人生で生かすことを考えられていなかった。

エディがこの本で教えてくれたことを実践するのは今だ。

この先どれだけこの気持ちが持続するかわからないけど、この状況で、「諦める」「自分の気持ちをごまかす」「悶々とした気持ちが消えるのを待つ」以外の選択肢があると初めて気づいた。

もうこの荷物は下ろすと決めよう。

他にも、いままでムカッとしたり不安になってきたささいなことも、そういう目で眺めてみれば、もしかしたら下ろしていい荷物なのかもしれない。

これまでも、自分より辛い状況にある人のことを見聞きすることはあった。若い頃は目を覆いたくなるような戦記や差別の本を読んだりもした。

それでもここまでの気づきや決意に繋がったものはなかった。

幸せな世の中にするために、エディ自身が身をもって幸せになるという選択をして生き、悲惨さや憎しみを伝えるためではなく、一人一人が憎しみを下ろして生きるために語り、本を書き、私たちを友と呼んで、心から他の人の幸せを祈ってくれていると感じたからこそ、こんな気持ちになったのだと思う。

「エディが言ってくれてるんだもん。あんな経験をしたエディが憎んでないんだもん」そう思った。

この本を読んで、新しい友のエディからもらった最大のものは、荷物をおろし、幸せを選ぶという生き方だと思う。

もちろん、人が何を辛いと思うかは他人にはわからない。まわりからは些細に見えることでも、本人は深い傷を受けていることがある。

「あなたの苦しみはあの人の辛さに比べたら、たいしたことないんだからがんばりなさい」

なんて他人が言うべきじゃない。

でも、私は自分で、エディが下ろした荷物と自分の荷物の重さが全く違うことを感じている。

エディは友として、この先の人生を左右するようなとても大きな気づきをくれた。

あと二つ、私がこの本からもらった気づきがある。

その⑥に続く



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?