麻雀シンギュラリティ
今から約40年も前に将棋の大山十五世名人が、「コンピューターに将棋をおしえたらろくなことにならない。」と人がコンピューターに勝てなくなる未来を予測していた。
今から15年ほど前にそれは実現され、
将棋だけでなく、オセロ、チェスや囲碁といった完全情報ゲームのみならず、ポーカーといった不完全情報ゲームにおいても、AIの加速度的な進歩により、コンピューターは人知を凌駕するようになってきた。
麻雀においても、NAGAやmortal、Suphx等といったソフトが公開され、ネット麻雀上で一定の成果を出して評価されるようになきている。
では、麻雀においてシンギュラリティは既に到達の域に達しているのか?
ネット麻雀シンギュラリティ
おそらくではあるが、いくつかの理由により、ネット麻雀においてはシンギュラリティはかなり近づいている感がある。
大本の理由は、ネット麻雀の卓というのがソフト上で生成されたもので、洗牌にしろ、牌の取出し、ドラ、配牌、自摸牌、山牌すべてアルゴリズムのなせる技であるり、対戦するAIとしてもソフトで生成された卓と相性が良いのではないかと思えるからである。
自分はソフト屋さんでもないし、ソフトに詳しいわけでもなく、どちらかといえばアナログ的な人間である。なのでいくつかの理由は、単なる思いつくままの理屈でその点はご容赦を(笑)。
コンピューターが求める解は、すべからず数式からである。その数式から麻雀ソフトは、聴牌効率や鳴き、リーチ、押し引き等の最適解を導き出すわけだ。
それはまぁ当然として、
特筆すべきこととして、ネット麻雀アプリのアルゴリズムが公開されているなら、AI雀士らは、それを解読し、来るべき近未来に対しての最適解の打牌選択ができてもおかしくはない。
つまり、自分の手牌、河などの開示されている情報部分から相手の手牌、山牌を類推する能力が異常に高くなるような気がする。
膨大な計算量が必要かもしれないが、
今日加速度的に実現性が高まってきている量子コンピューターを用いれば、麻雀アプリの公開アルゴリズムの解読からの打牌最適解なんてされたら、そりゃもう手積み時代に雀鬼さんと対戦するようなもんではないかな(笑)。
つまり、非公開情報部分もガラスってことだ。
今は、NAGA、mortal、Suphxが有名どころみたいで、Suphxは天鳳十段に到達している。今後の活躍に注目したい。
リアル麻雀シンギュラリティ
リアマではどうであろうか。ネット麻雀との違いはその環境だ。
リアル麻雀の場合は、実際の対戦相手の表情、所作が見える、打牌の音や声が聞こえる、匂いは‥‥、たまにする(笑)、といった属人的な情報に周囲環境に関しての情報が存在する。
そして、起家決め、洗牌、取出し、ドラ、配牌、自摸山、山牌は、完全に自動卓に任されるわけではないが、機械的に決められる。
つまり、ネット麻雀と比べてリアマは、その情報の質・量が異なり、ゲームをプレイする卓の仕組みが人為+機械的であるということだ。
情報処理の違い
総論的であるが、AIは卓上の牌景色に点棒状況からの情報処理となるが、人はそうではない。
勝又健志氏は、「麻雀の読みの8割は人読み」と言っていた記憶があるが、とっても含蓄がある言葉であり、人は卓上の景色以外からの情報も読み取るわけである。
自分の場合だと、点棒状況を起点に考える。その時の点棒から、自分そして他家は、「何点ほしいのか」、そのためにどういう手作りが必要なのかということである。
そこから、手出し自摸切りや鳴き等の選択を追っていき、小考のあるなし、顔の表情、手牌の位置とかをチェックする。
場合によっては、知っている対戦相手なら、その人の打ち筋や癖も情報に入れたりする(普段鳴かない人が鳴いたり、リーチしない人が早々にリーチしたとか)。
それ以外にも自分の手牌については、今日は染めたい気分とか、トップ取りメインでいくとか、ラス回避で大人しくいこうとか、気分的な部分もある。
もっというのであれば、「こいつだけには勝たせたくない」という打牌選択をする場合もある。
つまり、気分次第なところもあるわけだ(笑)。
勝負事なので、勝つためにゲームをすることが前提とはいえ、そのプロセスにおいて、人は気分的な要因が包まれる場合がある。第三者から見れば、「そんな打牌はないだろう」というのも、何かよくわからんが、たまたま結果オーライてこともあるし、またその逆もある。
さらに人には「直観」てのもある。どこからその直観が導き出されるかわからないが、的を得ている場合も少なくない。
例えば直観による鳴き、回避能力等、言語にしにくい部分である。
現代のコンピューターサイドからすれば、人の直感力も数式の範疇に入るようであるが、その処理スピードはまだまだ人の方が上であるようである。そこで、コンピューター自身に直観力を養わさせるプログラムもあるようで、人工知能は人を踏み台にしてどこまで行くんだって感がでてくる(笑)。
いずれにしても、人が行う打牌選択の要因は様々で、時に情緒的で、それが人のマイナス面であったりもするが、麻雀というゲームは4人が行うゲームであり、それぞれの意向が絡み合う複雑さがあり、また引いて来る牌を完全に予測できないので、感情に左右される打牌がマイナスとかプラスとか一概にはいえない側面がある。
そこが麻雀の面白みでもあるのだが。
勝敗の見極め
さて、席決め、洗牌とアナログ的な儀式から配牌、山積みされる麻雀卓で、顔が見える情緒的な人に対して対してAIボット様はどういう情報処理を行い闘いを望むのであろうか。
ネット麻雀と変わりなく点棒、卓上の景色からの情報で演算するのであれば、ある程度の成績は残せても、人知を超えるような特異点には届かないような気がする。
ある程度というのは、例えば一定期間通じての順位は上位で安定した成績を残すって意味である。しかし、それはシンギュラリティってほどではない(それだけでも相当すごいとは思うが・・)。
その期間で圧倒的な勝利数を重ね優勝し、「勝てねーや」と人に言わしめるならその限りではない。その時は全麻雀人類がAIに敗北する日となるのだが、そうはならないと考える。
なぜなら、それが麻雀というゲームであり、麻雀打ちはどうしようもなく自分が一番強いと根拠なき自信を持っている生き物だからである。
つまり、勝ったり負けたりするのも麻雀の本質であり、麻雀打ちが「強い、上手い」と相手に言うことはあっても、本気で「勝てない」って言うことはないだろうってことである。
なので、ガチでリアル麻雀での人対AIを行い優劣を競うのであれば、勝敗条件を明確にしておくことが必要だと思われる。
一般的に勝敗条件は二つある。
一つは対戦相手が「参りました」と負けを認めることである。囲碁、将棋、格闘技等でも、この条件が一番わかりやすいが、前述のとおり麻雀打ちにそれはない(笑)。(もっとも麻雀も半荘一回で順位が出るので勝敗が明確になるが、それはここでのテーマとは異なる。)
もう一つは、数値的優劣である。
有り金なくなったら負けとか、持ち点なくなったら負けとか、何勝したら勝ちとか、勝点を争うなどの方法である。
そして、勝敗に関しての方法論として一定期間の成績を争うリーグ戦にするのか、大会形式のトーナメント方式にするのかということも決めておくべきであろう。
トーナメント方式の方がより条件戦になりやすいといった違いがみられる。
相対的要因
AIと対戦する人選はどうするべきか。団体所属プロ雀士の上位陣に限定するのが妥当なのか。
巷の雀ゴロにも強い人はゴロゴロいるといった理屈もあるのだが、麻雀は4人で行うゲームで相対的要因で勝敗が左右される場面が多々あり、熟練者が常に勝つというゲームでもない。
上級者三名に初心者一名で卓を組むと三名間は牽制しあい、初心者が漁夫の利のような勝ちをモノにすることがある。
そうは言っても「長期的でみれば初心者は負けてるだろう。」という理屈はあるが、初心者が勝つというのも麻雀である。
また自分におきかえても、上級者というか上手いといわれてる人と対戦する方がやりやすい感がある。それは読み筋の範疇に入りやすいからであり、初心者はよく外してくれる(笑)。
前述の勝俣氏の発言においても、念頭においてるのは所属団体のタイトル戦やMリーグといった実力者間での話であって、オーラスで順位の変わらないあがりを平気でやってしまう初心者と打つ場合は考えてないだろう。
実際に初心者の方々に「麻雀のどこが好きなの?」と尋ねると、「初心者の私でも○○先生に勝ったりすることあるじゃないですか!初心者でも勝てるところが好きです」といった堂々たる回答が一回や二回どころでないのも事実であり、均一的な実力者間だけでAI様を対戦させるのは、麻雀ゲームとして不十分なような気がするのである。
さらに言うのであれば、AIボット様一名の場合、二名の場合、三名の場合の牌譜はどうなるのかってのも興味深いのである。
未来への期待
個人的には将来、未来への期待として、AIボット雀士の登場を願っている。
技術的には、既に可能だろうと思っている。
牌操作を担う駆動部分、センサー、全体を見渡すカメラ、スキャニング技術、人間的なボイス、それらを制御する高性能コンピューターに人工知能。
金と時間があればできるはずである。
そうなれば、プレイ判断に必要な情報に対戦相手の挙動も含めてほしい。他家の体温、心拍数、脳波をスキャンできるセンサーも装備し、ブラフ仕掛けも見抜いたりする。つまり人の意識レベルまで解析するのである。
ここまで実現できれば、リアマでも麻雀シンギュラリティは近くなるだろう。
問題は重ね重ねになるが、そこまで時間と金をかけてやる価値があるかどうかである。
自分はあると思うのである。
なぜなら、麻雀AIには、人の意識レべレまでの解析が必要だからであり、ここでのデータの蓄積は、さらにノーベル賞級の開発にも繋がるからである(ドヤ( ̄ー ̄)ニヤリ)。
金の問題もなんとかしよう。
AIに名前をほどこし、AI(「あい」と呼ぶ。)16号、17号、18号とし、各団体に入ってもらう。(16号からというのは、まぁドラゴンボールみたいなもので、トライアンドエラーで試作機は15体ほどになってしまうという理由で。)
筆記試験は満点間違いなし、実施試験も問題ないだろう。
そして、Mリーグの藤田会長にお願いしてAI雀士(「あいじゃんし」と呼ぶ)のチームの参戦を許可してもらうのである。私が監督になってもよい(笑)。チーム名はずばり「麻雀シンギュラリティ愛雀士」とかにする。16号、17号、18号は流行りのアニメ顔にするもよしである。
といった企画案を出して熱く語りスポンサーを集め、ついでに補助金もゲットすれば何とかなるだろう(笑)。
で、誰がそれを開発するのかってことだが、誰かすでにやってませんでしょうか(太陽グループさんあたり…笑)。
麻雀における人間対人工知能の闘い、是非メイドの土産として見たいものである。
麻雀って面白いね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?