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季語「星月夜」

俳句ポスト365、令和6年10月19日〆切の兼題は「星月夜」です。三秋の季語とされています。

角川大歳時記には、「月のない夜空が、星明りで月夜のように明るいこと」で、「明るさは主に天の川」からきているといいます。季語の解説者は「それにしても美しい言葉」と仰っており、それには私も同感します。
新歳時記では、「よく晴れた秋の夜は星空が明るくて、まるで月夜のように思えるのをいう」とあります。さらに、「仲秋以後は天の川が天頂にかかり」特に明るいとのこと。また、本意として「明るくとも、秋のさびしさのにじむ美しさ」があるとしています。

「星月夜」は、月のない晴れた夜の明るさであり、そんな夜そのものを指すとは理解できました。月のない夜というと、新月の夜を思い起こしますが、月の出と月の入りの時刻を調べていけば、月のない晴れた夜には出会えそうです。実際、私はこの兼題を示され、国立天文台(NAOJ)のwebサイトから、「各地のこよみ(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/)」というページを頼って句を作りもしました。

片田舎~田舎に生活圏があるので、そこは有利に働いたかと思います。満天とまではいかないけれども、そこそこ星が沢山見える夜には出会えたつもりです。

けれども、角川大歳時記にあるような、「月のない夜空が、星明りで月夜のように明るい」状況、これを経験したことのある方は案外と少ないのかもしれないと実感を込めて思い至ります。この歳時記には、さらにこうあります。「現代社会ではめったに経験できることではない」と。

改めて、「星月夜」は三秋の季語であることと、特に仲秋の後に美しくなるということを考え、晴れた月のない夜空を見上げてみました。月夜のような明るさは確かに感じられません。なんなら、秋よりも湿度が低く、明るい星が多い冬の夜空を思い出してみます。空ではシリウスが吠え、プロキオンが鳴き、ベテルギウスが大犬と小犬をあやしているのですが、月夜のような明るさは感じられないはずです。

視線を夜空より明るい方向に目を向けました。街の方向です。そちらを見ると、白んだ光が地上から発せられています。蛍光灯の光を遠く眺める感じに。

そういえば、「光害」と書いて「ひかりがい」、私の世代ならば「こうがい」とも読める言葉があったのを思い出しました。
人間の生んだ、夜を明るくする光。
これらにより、本来なら昼間に活動する虫が夜も活動するようになったとか、稲などの光と闇をなんらかの形で知覚している植物は発育不良になるなど、いろんな生物に影響を与えているようです。これらが積もれば生態系への影響を及ぼし、害となってしまう。
また、地上の光が明るいせいで、空からの光が見えにくくなり、天体観測に支障を起こしたりします。

現代において俳句を詠む者にとり、「星月夜」という季語は、実感し、本意を捉えることが難しい季語なのかもしれません。イメージとして綺麗な季語で使ってみたくはなりますけれども。

そんな中、どんな句が入選していくのか。楽しみでもあります。

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