着付け時に気付き感じたこと…私なりの考え。
卒入学シーズンを終え、あっという間に4月も終わりに近づいています。3.4月は個人のお客様からのご依頼が前年よりも多かったように感じます。着物は、現代では人生の大切なセレモニーの時に着ることが多いです。やはりコロナ中はイベントが皆無でしたので、多くの着付けをさせていただくことができるようになり、本当に有り難いと思います🙏
今回は、貸衣装店には様々あるということを書かせていただきます。
(ちなみに私と直接ご縁がある貸衣装店のことではありません)
着物を着ようと考えた時、手持ちの着物がない場合は貸衣装店で借りることが多いと思います。
貸衣装店は、店舗を構えているところだけでなく、最近ではネットで注文して借りることもできます。借りる側にとって選択肢が多いのは嬉しいことです。その貸衣装店で借りられた衣装について、着付けの現場で 時として戸惑うことがあるのです。
実際、何度か経験していることをいくつかあげてみようと思います。
①結婚式に出席するお母様の留袖に 振袖用の派手な花柄の帯が組み合わせてあった。
②同じ貸衣装店から借りた両家のお母様の留袖の柄がほぼ同じだった。
③卒業式に臨む学校の先生(ベテランの先生)の袴に、若い学生が着る派手な小振袖がコーディネートされていた。
④着物、長襦袢の裄丈(肩幅、袖幅)が全く合わない。
⑤花嫁衣装の白い掛下着物(打掛の下に着る袖丈の長い着物)に普通の着物に使うピンクの長襦袢が合わせてあった。
etc…
貸衣装なだけに、お客様の身体に身丈・裄丈などが多少合わないことがあっても ご自身の寸法のオーダーではないので、それはいたしかたないと思います。④と⑤については、ある程度わからないように着付師が細工をすることが可能ですが、①〜③の違和感あるコーディネートでは もはや誤魔化しようがありません。着物のことを知る人がこの着姿を見ると違和感を持つだろうと思います。
着物を借りる時、お客様は「貸衣装店の選んだものなら大丈夫」と、当然のように思っているはずです。しかし店員さんの知識不足や配慮の欠如が原因となり お客様に恥をかかせてしまうようなコーディネートが起こりうるということです。お客様は何も知らずそれを着てセレモニーで過ごす…想像してみてください😱もし後でそれをご本人が知ることになったら?…そのお客様は恥をかかされたと感じ、当然 貸したお店の信用はなくなります。
着付師の立場にしてみると、 まさに着付けの現場で貸衣装のコーディネートの違和感に気付いても それを初対面のお客様に伝えづらいのではないかと思います。(これはちょっと違います、と 全て伝える着付師さんもいるかとは思いますが…それぞれの考え方で対応は変わりますが…)
私自身、お客様と貸衣装店との関係性がどのような繋がりなのか全くわからない場合、「コーディネートの違和感」を やみくもに伝えることはできないと思っています。それを伝えることでお客様と貸衣装店との信頼関係を壊してしまう可能性があるかもしれないからです。「どうしたら良いのか?」を考えると、とても悩ましいところです😅
以前このようなことがありました。
知人が借りた留袖の帯が 準備の段階でどう見ても振袖用で、私は「このコーディネートは留袖に相応しくないのでご自分の帯を持ってきて欲しい」と、その知人にお話しました。彼女は驚いて、「忙しいために貸衣装店に任せきりでコーディネートしてもらったから、事前にきちんと見て選ぶべきだった」と仰っていました。この方と私の間には信頼関係が出来上がっていたため、素直に伝えることができました。お店を信頼して任せたというのにこの顛末です。この貸衣装店については他の場所でもお客様が借りた留袖に派手な振袖の帯が組み合わせてありました。お客様が着物を着る場面において そのコーディネートが 相応しいかどうかを判断できていないまま 当たり前に貸しているということなのでしょう。表現が良くないかと思いますが、これはお客様のことを無視した ただの金儲けです。仮に私が「貸衣装店を紹介して欲しい」と、着付けのお客様から依頼をお受けしたら、このようなお店を紹介することはできません🤷 貸す側の立場の人は、ご自分の思い込みや好みでコーディネートしてはいけない立場にあるのです。お客様の立場や、着物をどのような場面で着るのかをよく考えて、きちんとコーディネートしていただきたいものです。
長年の着付け経験から言えることは、着物を購入、または借りる人は 多少なりとも着物の知識を持っているほうが良いということです。知らぬ間に(様々な意味で)被害に遭っているかもしれません。お店選びはとても大事です。全てお店側に丸投げという形で起きたのが、何年か前の「ハレノヒ事件」です。借りていた振袖が、店側の業務停止により成人式当日に着ることができなかったという衝撃的な出来事です。借りるだけでなく記念撮影まで全てをお任せする丸投げ形式が多い中では 最悪のケースとしてこのような事が起こり得る危うさを含んでいるということをふまえつつ、信頼と実績、尚且つ心あるお店を選んで欲しいと思います。
着物について知らないということは恥ずかしいことではありません。私自身、着物の世界に身を置いている立場でも未だ知らないことは山ほどあります。(知れば知るほど自分は知らないことだらけだと感じています。)これからも学びを深めつつ、着物を着て楽しみたい方のために 私なりのお手伝いができたらと思っています✨