[ショートショート] まるでシャボン玉のように地球がぐんにゃり曲っている
地球がぐんにゃり曲がっている。
まるでシャボン玉の表面で模様が動いて見えるように、ぐんにゃり曲がって見えるのだった。
私は宇宙空間に一人で浮かんでいる。事故だった。
後ろを向けば真っ黒な何もない空間。そちらを向くのは怖かった。ひと時も地球から目を離したくない。
私はここで死ぬのだろう。
朦朧とする意識の中で私はうっとりと地球ながめた。
地球がぐんにゃり曲がっている。
ああ、なんと美しい光景だろう。これを見ながら死ねるのならば、私の人生も幸せだったと言えるのではないか。
酸素ももう底をついた。私はこのままゆっくりと死んでゆく。
その時だった。微かに耳元のスピーカーにノイズが走った。
「キコ・ルカ・・?」
人の声だった。誰かの通信。
「あ…」
それだけ言うのが精一杯だった。
それでもあなたは見つけてくれた。
何もない空間に漂う私を抱き上げでたっぷりの酸素を吹き込んでくれた。
視界がはっきりすると、変わらず地球がそこにはあった。
それでも地球は曲がっていた。ぐんにゃりとシャボン玉のように。
そしてあなたのヘルメットもぐにゃっと曲がって見えるのだった。
たらはかに(田原にか)さんの『毎週ショートショートnote』に参加します。
お題は『それでも地球は曲がってる』
今回のお題はアニメが始まって話題の『チ。』にインスパイアされてとのことです。
私も見ています。少々グロいですが、3話でもう胸が激アツになる物語です。
ちょっと余談になりますが、『チ。』を見てて私が思い出した映画があります。
『ローグ・ワン』です。
スター・ウォーズを見てないと何のこっちゃですが、命をかけて繋がる想い…なのです。
それから、今回お題を見たときに、地球を宇宙空間から見てるところを思い浮かべて物語ができたのですが、書きながらこの映画を思い出していました。
『ゼロ・グラビティ』
究極の極限状態。
地球が曲って見えるのって、こういう精神状態かもしれないと思ったのでした。
今回もすばらしいお題をありがとうございました。