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[ショートショート] 沈む寺 - 宇宙の構造について

 宇宙の底が発見されてから宇宙物理学界隈は大騒ぎであった。

 これまで宇宙の形状は球体だとかドーナツ型だとかいろいろ言われてきたが、じょうご型であることがわかり、膨張しているように見えて実は下に向かってすぼまっていることが観測されたのだ。

 その先っぽ…つまり宇宙の底には何があるのか。

 知りたがりの人類は、黙々と宇宙の底を観測し続けた。

 宇宙の底の底、果てしなく深いその場所をどこまでまでも拡大していける超高解像度のレンズを開発し宇宙の底を追い求めた。

 そしてついに、人類は初めて宇宙の底を目撃することとなった。

 写し出された映像に人々は度肝を抜かれた。

 そこには何と一軒の寺が建っていたのだ。
 どこにでもあるような仏教寺院に酷似した建造物がそこにはあった。

 どう見てもそれはVRにおけるマップ生成のバグ状態であった。

 宇宙はそこに向かって沈み続けている。

 宇宙の底で発見された寺は、今も67.36km/s/Mpcの速度で沈み続けている。

 そんなこんなで人類は、いくら観測し考察したところで、宇宙の真理はわからん…という結論に到達した。

(467文字)


たらはかに(田原にか)さんの『毎週ショートショートnote』に参加します。


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