2024年9月の記事一覧
[ショートショート] シェーン、カムバック:バンドを組む残像&インドを編む山荘
破壊された街を歩く。思い出の街だ。
襲撃を受けてから68時間。まだ生存者はいるはずだ。
それからアレの生き残りも。
街の中心部に差し掛かると崩壊を免れた壁に巨大な絵が描かれていた。
ギターを持ち歌っている男の肖像が。
“シェーンは俺たちの中で生きてる”
そう言葉が添えられていた。
シェーン…。俺が最も愛した男。“THE LODGE EDITS INDIA” のボーカルだ。
[ショートショート] 懺悔と変化:ある植物のこと
花屋の店先に、小さな植物がひとつ売れ残っていた。
私はそれにサンと名をつけ家に連れて帰った。
サンは肉食だった。小さな虫を好んで食べた。
サンはどんどん大きくなった。
大きくなると、バッタなど大きな昆虫を食べた。
それでも足りなくなると、サンは魚や鶏肉を食べた。
私はサンが欲しがるものを何でも買ってきて与えた。
サンはみるみる大きくなった。
サンは犬や猫を欲しがった。
[ショートショート] モンブラン失言:根性がないんですよ根性が
はいどうもモンブランです。
最近の若者はね、根性がないんですよ根性が。何かといえばすぐ暑いだの水分補給だのって。
昔はクーラーなんかなかったんですよ。人間はどんどんひ弱になってきていますね。
ひ弱と言えばすぐ仕事を辞める人も増えていますね。すぐ諦めちゃうんですよね。
根性がないんですよ根性が。昔は就職したら定年まで会社一筋で働くのが当たり前だったんですからね。
男は一家を支えていか
[ショートショート] 誘惑銀杏:乳首が…
男をたぶらかして金を盗み取る悪質な事件が多発していた。
女は巧みに男を誘い出してホテルに連れ込むと、事を始める前に睡眠薬だか何だかを飲ませて意思不明とさせた挙句に金銭を全て奪って逃げるという手口だ。
巷では、“誘惑銀杏” とその女は呼ばれていた。何でも乳首が銀杏のように黄色くて艶々だと言うのだ。
そんな乳首あるか? と思いつつも俺は興味深々だった。正体が分かっていれば騙されることはな